研究課題/領域番号 |
23K10475
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
李 範爽 群馬大学, 大学院保健学研究科, 教授 (50455953)
|
研究分担者 |
小田垣 雅人 前橋工科大学, 工学部, 准教授 (40453211)
伊部 洋子 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (70431723)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
|
キーワード | 身体周辺空間拡張 / 自動車運転 / Mixed Reality / 高齢者 / 後退駐車 / 身体空間拡張 |
研究開始時の研究の概要 |
後退駐車は、高齢者において操作不適による重大事故が多発する代表的な場面である。そのため、高齢者の運転能力を的確に評価、支援するためには、後退運転という特殊な状況において、運転者がどのように外界情報を取り入れ、知覚・認知し、運転操作を行うのかを心身機能レベルで解明する必要がある。 本研究では、空間認知の基盤となる身体周辺空間拡張能力に着目し、その能力を評価する指標を確立、Mixed Reality技術を用いた空間拡張トレーニングが後退駐車操作能力に及ぼす影響を明らかにする。
|
研究実績の概要 |
2023年度における研究成果は、後退駐車に重要な感覚である身体周辺空間拡張能力を評価する指標を確立したことである。自動車運転は特に視覚への依存度が高く、身体周辺空間を処理する認知プロセスが何らかの形で視覚情報処理プロセスに反映されていると言われてきた。しかしながら、具体的にどのような視覚活動が身体周辺空間拡張能力として現れているのかについては殆ど知られていなかった。 申請者は長年視覚探索と上肢機能の評価に取り組み、「感情と運動機能の相互作用を反映する高齢者運転能力評価システムの開発(基盤研究C:20K11279)」において既存の視覚認知モデルでは説明困難な身体周辺空間拡張能力を示唆する視覚探索行動を発見した。本研究においてその視覚探索行動のメカニズムを更に分析し、以下の2つの指標を学術的に確立することができた。具体的には、①水平スキャン(Horizontal scanning)、②駐車空間の縁石(Vertex of the parking space)であった。この成果は科研費の助成を受けたことを明示した上で、国際学術誌に掲載された。 本年度におけるもう一つの研究成果は、仮想空間技術の一つであるMixed Reality技術を用いて、上記視覚探索活動が行われている外部空間と自己身体を結ぶ仮想コネクション装置を開発したことである。既存の研究手法では身体周辺空間を拡張するためのツールとして棒やレジャーポインターを用いていたが、いずれも拡張できる範囲が狭く、没入感が乏しいという限界があった。今回開発した仮想コネクション装置は、仮想空間上で操作できるため投射できる空間に原則制限がなく、高い没入感を生成することもできた。この研究成果は前橋工科大学との共同研究により実現したものであり、今後さらにシステムを改良しながら今後の研究に取り組んでいきたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の研究目標は、視覚探索行動の後退駐車評価指標としての有用性を検討し、Mixed Reality(MR)手法を用いた身体周辺空間拡張能力への介入研究を行うために必要なMRシステムを構築することであった。具体的な行動目標として以下の3つを計画していた。①視覚探索行動のメカニズムを更に分析し、身体周辺空間拡張能力を反映する指標を学術的に確立すること、②高齢者講習のための自動車教習所に来所した高齢運転者を対象に、コース走行中の視覚探索行動を分析する実験を行うこと、③ MR技術を用いて上記視覚探索活動が行われている外部空間と自己身体を結ぶ仮想コネクション装置を開発することであった。①と③が当初の予定通りに進んだのに対し、②は当初の予定通りの実施には至らなかった。 上記①の進捗状況について報告する。2023年度の研究では、車を駐車空間に近づける、後退駐車を始める、駐車を完成するという各駐車プロセスにおいて、指標の出現頻度が異なることが明らかになった。そのため、今後自動車運転における視覚探索行動の研究では、プロセスごとに分析することが重要であることが明かになった。上記②の進捗状況について報告する。高齢者の社会活動の全般的な低下、自動車教習所との調整難航が影響し、実車運転実験を行うまでに至らなかった。上記③の進捗状況について報告する。年度初めは指尖から外部空間へ向かって拡大していく空間拡張をイメージし、技術開発に取り組んだ。しかしながら、MRセンシング部が手部の微細な動きに反応しやすく、指尖からの空間拡張が可能になるまで一部の健常者において相当の時間を要し、高齢者向けに実用化するのは困難であると思われた。そこで身体座標点として知られている両眼の間の中央点から外部の座標に向かって光線を発射する仮想コネクション装置を開発した。それに伴い高い没入感を生成することもできた。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度行動目標①である「視覚探索行動のメカニズムを更に分析し、身体周辺空間拡張能力を反映する指標を学術的に確立すること」は達成できたと考える。今後はこの成果を更に研究者や社会に向け発信していきたい。その一環として、2024年11月に予定されている日本交通心理士会第21回ぐんま大会で本研究の成果を基調講演にて発表することが予定されている。 行動目標②である「高齢者講習のための自動車教習所に来所した高齢運転者を対象に、コース走行中の視覚探索行動を分析する」は推進方略を修正し、取り組んでいきたい。本行動目標が達成できなかった主要因は、コース走行中に生じうる事故リスクに関する課題であった。事故リスクを抑えるためにはかなりの人的・物的準備が必要になり、その調整が難航していた。そこで、2024年度研究では、実車運転の自己リスクを回避できるDriving Simulator(DS)にて実験を行い、当初の研究目標に取り組みたい。現在、群馬大学医学部附属病院リハビリテーション部の設置されているDriving Simulatorシステムを用いながら準備を進めている。 行動目標③である「MR技術を用いた外部空間と自己身体を結ぶ仮想コネクション装置の開発」は第一段階が達成できたため、次の段階に進みたい。現在DSシステムと連動する仮想コネクション装置の開発に取り組んでおり、いくつかの技術的問題を解決する必要はあるが概ね順調に進んでいると考える。
|