研究課題/領域番号 |
23K10506
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
深堀 良二 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (40457784)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | パーキンソン病 / 皮質線条体路 / 認知機能 / 神経 / 認知機能障害 / ラット / 大脳皮質 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究ではパーキンソン病モデル動物を用いて認知機能障害の神経回路基盤を解明する。初めに線条体のドーパミン神経終末除去によって引き起こされる認知機能障害の線条体内の責任部位の同定を目指す。この結果をもとに逆行性輸送ベクターを用いて同定部位に投射している皮質領域を明らかにする。これらの結果をもとに申請者が開発した化学遺伝学的手法を用いて経路を活性化し、認知機能障害の改善を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究ではパーキンソン病の認知機能障害に関わる神経回路基盤を解明するため、黒質にあるドーパミン神経細胞の神経変性を薬剤で誘導し、線条体にあるドーパミン神経終末を除去した。特定の大脳皮質からの投射は特定の線条体領域に終末を形成する。前頭葉からの投射は線条体吻側に、後頭葉からの投射は線条体尾側に終末を形成するため、それぞれの領域に投射する中脳ドーパミン神経細胞に限定して破壊を行った。また、線条体吻側、線条体尾側に投射する大脳皮質の神経細胞を明らかにするために、蛍光タンパク質遺伝子を含む逆行性輸送レンチベクターをそれぞれの領域に注入し、網羅的に投射元の領域を調べた。さらにこれらの結果から、線条体の各領域に投射する神経細胞の破壊を試みた。 背外側線条体の吻側部への投射は運動野や感覚野などから、腹外側線条体の尾側部では感覚野や当皮質などからの入力があることが分かった。本研究では背外側線条体の吻側部に投射する第一次運動野、第二次運動野の神経細胞をイムノトキシン細胞標的法で破壊し、選択的な投射経路除去を行った。また、腹外側線条体の尾側部に投射する吻側の島皮質、尾側の島皮質を同様の方法で破壊を行った。これらの皮質線条体路を破壊した動物を用いて弁別課題学習実験を行った。 薬剤を投与して背外側線条体吻側、腹外側線条体尾側へのドーパミン神経線維の投射を除去した動物を用いて弁別課題学習実験を行った。両部位においてドーパミン神経伝達の障害がおこると学習成績の低下することが明らかになった。 線条体の各領域へ投射する皮質神経細胞の破壊、また、線条体の各領域でのドーパミン神経伝達を障害させてその認知的な機能に関する研究を進めた。今後、これらの研究を進め、皮質線条体路の役割とドーパミン神経伝達のかかわりを明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度では線条体の各領域に逆行性輸送ベクターを用いてイムノトキシン細胞標的法を行うためのヒト・インターロイキン2受容体と蛍光タンパク質の融合遺伝子の導入を試みた。吻側部に注入したベクターによって大脳皮質では第1次運動野、第2次運動野の神経細胞に導入遺伝子の発現を確認した。また、前帯状皮質、第2次感覚野、聴覚野でも発現が確認できた。皮質以外では視床側傍核、脚内核、淡蒼球、黒質緻密部に発現があった。尾側部にベクターを注入した実験では第1次運動野、第1次感覚野、第2次感覚野、島皮質、聴覚野の皮質で発現があった。また、視床側傍核、扁桃体基底外側核、内側膝状体、黒質緻密部でも発現を確認した。これらの領域にイムノトキシンを注入して標的細胞の破壊を試みた。背外側線条体の吻側部に投射する第1次運動野、第2次運動野、尾側部に投射する島皮質にイムノトキシンを注入したところ、これらの部位で細胞が優位に減少したことを確認した。 6ヒドロキシドーパミンを背外側線条体吻側部及び尾側部に注入し、そこに投射する中脳ドーパミンニューロンを選択的に破壊した。破壊は線条体及び黒質でチロシン水酸化酵素の組織化学免疫染色法で確認した。 背外側線条体吻側部に投射する領域2か所、尾側部に投射する領域2か所、吻側及び尾側のドーパミン神経伝達が障害された動物を用いて認知機能の評価を行った。これまで行ってきた研究で用いてきた音弁別課題を用いて、学習機能や柔軟性を評価した。現時点ではサンプル数が少ないが、興味深い傾向が確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度では前述の実験の継続を行い、サンプル数の増加を目指す。令和5年度までの実験を遂行中に、皮質神経細胞の電気記録も必要と考え、令和6年度ではこれまでの実験計画に加え、記録実験の準備を行う。 また、当初の目的であった化学遺伝学的な手法とともに、光遺伝学的な手法も検討する。これは化学遺伝学的手法で長期的な影響を検討するとともに、光遺伝学的な手法で課題遂行中に短期的に介入し、認知機能に関する評価を目指すためである。 これらの二つの目標の達成を目指し、成果を積み重ねていく。
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