研究課題/領域番号 |
23K10556
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
堀 紀代美 金沢大学, 医学系, 助教 (40595443)
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研究分担者 |
尾崎 紀之 金沢大学, 医学系, 教授 (40244371)
奥田 洋明 金沢大学, 医学系, 准教授 (40453162)
石川 達也 金沢大学, 医学系, 助教 (00750209)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2026年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 末梢動脈性疾患 / PAD / 虚血性疼痛 / 筋痛 / 痛覚過敏 / DRGマクロファージ / Iba1 / マクロファージ / 末梢感作 |
研究開始時の研究の概要 |
我々が開発した末梢動脈疾患(PAD)モデル動物を用いて、行動評価によって確認された筋の疼痛行動にDRGマクロファージの増殖、活性化が関与するかを免疫組織学的および行動薬理学的に解析する。さらに、PADモデル動物のDRGマクロファージから放出されるBDNFやIL1-βなどの液性因子をタンパクの発現解析により同定する。そして、これらの液性因子がPADモデルの虚血性疼痛に関与するか行動薬理学的に検索することにより、知覚ニューロン興奮への影響について調べる。
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研究実績の概要 |
【目的】末梢動脈疾患(PAD)で見られる虚血性疼痛のメカニズムを明らかにするため、PADラットのDRGマクロファージの増殖、活性化、DRGマクロファージから放出されるBDNFやIL1-βなどの液性因子の同定、それら液性因子の筋の知覚ニューロン興奮への影響について解析する。本年度は末梢神経のグリアに相当する脊髄神経節(DRG)内の知覚ニューロンに浸潤するマクロファージがPADモデルラットで見られる虚血性筋痛に関与するかを調べる。 【方法】全身麻酔下でラットの総腸骨動脈および腸腰動脈を結紮することにより下肢の血流を阻害したPADモデルラットを作成し、ランダルセリット装置を用いて筋の機械的痛覚過敏を、トレッドミルを用いて間歇性跛行の有無を調べた。逆行性トレーサーのFluoro-gold (FG)を腓腹筋に投与して腓腹筋の知覚神経を標識したラットを用いてPADモデルを作成し、筋の痛覚が亢進しているのを確認後、結紮後14日目にL5後根神経節を採取し、Iba1の免疫染色を行った。 【結果】PADモデルラットでは結紮後3週間にわたり筋の圧痛閾値が低下し、また間歇性跛行が3ヶ月以上持続することを確認した。PADモデルラットの腓腹筋の知覚神経の細胞体の周囲ではIba1陽性のマクロファージの発現が認められ、PADモデルではこのDRGマクロファージの増殖が見られた。 【考察】本年度の成果により、PADモデルラットは下肢の血流阻害による筋の痛覚過敏の解析に適していると示唆された。DRGマクロファージの発現増加がPADモデルラットで見られる虚血性筋痛に関与すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
我々が開発した慢性的な筋の痛覚過敏および間歇性跛行を呈するPADモデルラットを用いて、虚血性疼痛におけるDRGマクロファージの発現について検討し、新たな知見を得ることができた。 本年度はIba1以外のマーカー、例えばCD68などでもDRGマクロファージの評価を行うで組織採取・切片の作成は終えているが最後の免疫染色に至っていない。次年度は免疫染色の実験が中心となるので並行して行いやすく実施する。 また本年度は同時に虚血性の筋痛にマクロファージが関与するか検証するため、虚血によって痛覚が亢進したPADラットにマクロファージを貪食する薬剤(クロドロン酸)を投与してマクロファージを除去し、疼痛行動が変化するか行動薬理学的に調べる実験を開始したが、クロドロン酸は全身のマクロファージに作用して除去するため、投与後、ラットの全身状態の悪化が見られることがあった。これまでの報告を参考にして行ったものの、疼痛評価のために行動実験に正しく応答できる状態を保持できる投与量へと調整することを余儀なくされた。そのため、本年度中にこのクロドロン酸投与実験の結果を示すことは出来なかったが、投与量の調整は終了し、今後実験を進めるので、次年度(令和6)の研究計画に影響を及ぼすことはないと考える。 また、令和6年度に重点的に行うことを計画していたPADモデルのDRGマクロファージの表現型に関する免疫組織学的評価についても着手を始めており、引き続き進める。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は令和5年度からのクロドロン酸によるマクロファージ除去実験の継続とともにPAD モデルラットの痛覚の変化に増加したマクロファージがどのように関与するのかその分子メカニズムを明らかにする。そのために、PADモデルのDRGマクロファージの表現型、およびP2X4の発現量変化に関する免疫組織学的評価を行う。筋の知覚ニューロンに集積したDRGマクロファージは神経障害性疼痛のミクログリアで報告されるようにP2X4を過剰発現し、活性化してM1型の表現型を示すか検証するために、PADモデルのP2X4の発現の変化およびDRGマクロファージの表現型(M1型もしくはM2型)について免疫組織学的に調べる。筋の痛覚におけるP2X4の発現変化やマクロファージの表現型について調べるため、腓腹筋に逆行性トレーサーFluoro-gold (FG)を投与し、DRG内の筋の知覚神経を標識し、筋の知覚ニューロンに集積するマクロファージついて検討する。 さらに可能であれば、PADモデル動物のDRGマクロファージより放出される液性因子の解析についても着手する。PADラットの活性化したDRGマクロファージからTNF-α、IL1-β、およびBDNF、さらにNGFやVEGFタンパクが放出されるかどうかを検証することを計画しているが、まず初めに先行研究で報告されたTNF-αやIL1-βから開始する予定である。TNF-αやIL1-βのタンパク発現評価はウエスタンブロット法を用いる。
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