研究課題/領域番号 |
23K10560
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
今井 絵美子 神戸大学, 保健学研究科, 保健学研究員 (20827589)
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研究分担者 |
片桐 祥雅 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 上席研究員 (60462876)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 身体化認知 / 抽象語理解 / 拡散思考 / 心象 / エミュレーション / 背側前部帯状回 / 深部脳活動 / 認知症 / 言語理解 / 深部脳機能 / 脳波 |
研究開始時の研究の概要 |
災害時に認知症罹患者をスムーズに避難誘導することは医療・介護および地域社会の課題である。身体感覚がことばの理解を促進するとされている「身体化された認知」の活用が、課題解決の方法の一つとして考えられる。本研究では、身体化された認知による抽象語理解の神経科学基盤の解明を目的とし、背側前部帯状回(dACC)を中心とする身体化認知の深部脳機能ネットワーク仮説を新たに立て、脳波および筋電を用いた生理計測法を基盤に、脳活動のダイナミクス解析から身体化認知を評価する方法論を確立するとともに、「すべての抽象語は身体化される」という主張の科学的根拠を得る。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、身体化された認知が抽象語を含む言語の理解の基盤であることを神経科学的に検証することである。 本年度は、背側前部帯状回(dACC)を中心とする深部脳機能ネットワークが身体化認知を推進するという仮説の検証を進めた。後頭部脳波アルファ強度から算出される事象関連深部脳活動度(ER-DBA)の減少(事象関連脱同期、ERD)と増大(事象関連同期、ERS)はdACCのダイナミクスを反映し、それぞれdACCによる拡散思考と収束思考の推進を表す。抽象的概念の理解とは、記憶に基づき形成した心象を運動ネットワークを使ったエミュレーションにより知覚することである。心象の形成とエミュレーションはそれぞれ拡散思考と収束思考が基盤であることから、ER-DBA波形のパターンから抽象的理解が促進されたことを確認できるはずである。そこで、健常若年者を対象に、状況絵を提示した後に抽象的概念を表すオノマトペを提示し、提示が状況を合理的に説明できるかを判断する課題を実施し、課題遂行中の脳波からERD-DBA波形を抽出した。鮮明なERD・ERSを形成しているときには正しく判定できる一方、ERDの形成が曖昧な場合には誤判定となることを見出し、仮説に整合する結果が得られた。 次に、刺激絵提示中の拡散思考の内容を明らかにするため状況絵を説明する語を列挙する課題を実施し、列挙された語は絵に描かれた物に限定されず、動作や情動を表す語に派生したことを見出した。エピソード回顧には動作や情動の知覚を伴うことから、拡散思考ではエピソードを回顧する心象エミュレーションが推進されたと推察された。以上実験から得られた知見を統合すると、dACCを基盤とする心象エミュレーションが抽象的概念の理解を促進する可能性があり、当初立てた仮説の正当性が支持された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は抽象語理解には、言語や状況を理解するのと共通の機能である心象エミュレーションが関与することを示唆することができた。これにより、実験課題の条件を抽象語に設定する段階へ進めることが可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
背側前部帯状回の活動を反映する事象関連深部脳活動および事象関連電位を解析手法として、抽象語理解の神経科学的基盤を明らかにするため、心象エミュレーションを起動する語および状況の理解課題を作成し、脳波計測実験を実施する。課題条件に抽象語も採用し、解析に筋電や音声の音響解析を加え、身体化認知の証跡を得ることで方法論の有効性を確認する。
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