研究課題/領域番号 |
23K10575
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
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研究機関 | 川崎医療福祉大学 |
研究代表者 |
細川 貴之 川崎医療福祉大学, リハビリテーション学部, 准教授 (30415533)
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研究分担者 |
伊藤 智崇 川崎医療福祉大学, リハビリテーション学部, 准教授 (90587297)
吉村 学 川崎医療福祉大学, リハビリテーション学部, 講師 (10880114)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | 高齢者 / 歩行 / 注意 / 前頭葉 / 視線 / VR / fNIRS |
研究開始時の研究の概要 |
注意機能の低下により高齢者が室内で転倒する事故が大きな問題となっている。本研究では、注意力が低下した高齢者特有の注意(視線)の志向性や脳活動を調べることで、高齢者の注意力改善のためのプログラムを開発することを目的とする。仮想現実空間(VR)で日常生活場面を再現し、そこを歩行移動しているときの視線を解析することで高齢者の日常生活における注意の特徴を調べるとともに、そのときの脳活動を機能的近赤外分光法(fNIRS)によって測定する。さらに注意機能改善のための訓練プログラムを開発する。これらの研究を通して、注意機能が低下した高齢者のために移動時の危険を防止する方策を提言する。
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研究実績の概要 |
高齢社会の進展に伴い、室内での転倒や交通事故といった移動時の事故が社会問題となっている。これらの事故は、高齢者の生活の質(QOL)を著しく低下させ、結果として社会全体に多大な負担をもたらしている。特に、これらの事故の背後には、高齢者に見られる注意機能の低下が大きく関与していると考えられており、この問題の予防策を開発することは重要な課題となっている。 本研究では、高齢者特有の注意力の低下に焦点を当て、その原因を解明し、効果的な対策を開発することを目的としている。研究方法として、仮想現実空間を用いて、日常生活場面をリアルに再現し、参加者がこの空間を歩行する際の視線の動きを詳細に解析する。このアプローチにより、高齢者の注意がどのように分散しやすいかを明らかにすることができる。また、機能的近赤外分光法(fNIRS)を用いて、注意機能を検査する課題を遂行中の脳活動を記録することで、注意力の低下と関連する脳領域を特定する。 令和5年度(初年度)は以下の作業を完了した。まず、室内の階段や段差など、日常生活において転倒事故のリスクが高い場所を360度カメラで撮影し、そのデータを収集した。また収集した360度カメラの映像を用いて、VRのヘッドマウントディスプレイ(HMD)内で、撮影した空間内にいるかのような体験を再現するプログラムを開発した。そしてVR HMDを使用して視線の計測が可能になるようシステムを構築し、参加者の視線の動きをリアルタイムで捉えることができるようにした。さらに標準的な注意検査法であるCAT(Cognitive Assessment Test)に含まれる「視覚性抹消課題」をデジタル化し、この課題をコンピューター上で実施できるようにプログラムを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、実験参加者がVR環境内で実際に歩行しているような体験をすることができるための基盤となる技術開発を行った。素材となる360度映像の撮影をしたり、その映像をVR環境で再生しその時の被験者の視線を同時に記録するプログラムを作成した。また「視覚性抹消課題」をコンピューター上で実施できるようにプログラムを作成したことで、高齢者の注意機能と脳活動を同時に測定することが可能となった。当初の研究計画通り、実験のセットアップを完了させることができた。進捗が早ければ実際にデータ収集を始めることも考えていたものの、そこまでは至らなかったが、おおむね順調に進んでいる。今後は、実際に高齢者を被験者として、データを収集していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究を効率的かつ倫理的に推進するために、以下の方策を実施する予定である。 まず、研究活動の倫理的側面を保証するため、所属する大学の倫理委員会に対し、研究の倫理申請を提出する。 次に、被験者の募集に関しては、高齢者施設を通じて高齢者被験者を募集する。これにより、実際に注意力の低下が懸念される高齢者を対象に研究を進める。また、比較を行うために、健常者からも同様に被験者を募集し、対照群を設定する。これにより、高齢者特有の注意力の低下の特徴を明らかにし、それに基づいた改善策を検討することが可能になる。 実験では、まず標準的な注意検査法であるCAT(Cognitive Assessment Test)による注意機能の検査を各群に対して実施する。この検査により、被験者の注意力を評価する。さらに、VR技術を利用して、仮想現実空間内での歩行時における視線の測定を行う。この測定により、実際の生活環境における注意の志向性や危険への反応性を評価する。 以上のプロセスを通じて、高齢者の注意力改善に必要な科学的根拠を収集し、実際に効果のあるトレーニングプログラムの開発へと繋げる。最終的な目標は、高齢者が日常生活において直面する様々な危険から自らを守ることができるようにすることであり、これにより彼らの生活の質の向上と社会全体の福祉の向上を図る。
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