研究課題/領域番号 |
23K10603
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59020:スポーツ科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
土持 裕胤 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (60379948)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | cardiac elasticity / hypertrophy / exogenous nitric oxide / fetal gene program / venous return / daily exercise / aging |
研究開始時の研究の概要 |
初年度に高齢心室拡張障害モデル動物を作り、その詳細な心機能評価を臓器および細胞レベルで解析後、遺伝子・タンパク質発現解析を行う。 次年度以降、そのモデル動物に対して日常的な自発運動や食事介入を行い、心室拡張機能に対する短期および長期的な影響を、個体、臓器、そして細胞レベルでの機能解析、さらに遺伝子・タンパク質発現解析を実施し、対照群と比べてどのような変化が生じるのかを解析する。我々の先行研究から、運動単独よりも栄養状態の介入と運動を組み合わせる方が遺伝子発現への相乗効果が認められているため、そのメカニズム解明も目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,日常的な運動が心臓の柔軟性に及ぼす影響である,これは,加齢に伴う左室心筋の肥大に伴う硬化,拡張機能障害の発症を念頭に置いている.そこで今年度は,ラットの心室拡張障害モデル動物を作り、心機能評価および心不全関連遺伝子発現を調べた.心室拡張障害モデル動物として,大動脈弓部絞扼術(TAC法)による圧負荷誘発性左室肥大が良く用いられているが,ラットでは重度の心不全モデルを作成するのが難しい.そこでまずTAC術を改良するために,弓部ではなく上行大動脈の絞扼術(AAC),または大動脈弓部+右腕頭動脈の両絞扼術(TAC+BCAC法)を行った.結果,どちらにおいても重度の心肥大を生じさせた.従来法はTAC時に右BCA経由で圧(血流)が逃げるのに対し,AAC法およびTAC+BCAC法は左心室と絞扼部位の間に圧(血流)の逃げ道がなく,絞扼の程度により左心室への圧負荷を調節できる,と想定した.これら新規の大動脈絞扼術により3週間後には心室拡張機能の指標であるdP/dt minimumの低下と左室肥大が生じ,心不全のマーカーとして知られる胎児遺伝子プログラムの再活性化が見られた.この心肥大ラットに対し,絞扼を解除するとともに低濃度の一酸化窒素(Nitric oxide: NO)を2週間吸入させる群を設定し,Room air吸入群と比較した.両群とも,左心室機能の回復は同様であった.胎児遺伝子発現に関しては,Room air群と比べてNO群のほうがより早く正常化した.また,肥大心臓の逆リモデリング(肥大からの回復)もNO群の方が早かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず,ラットの心室拡張障害モデル動物の確立に時間を要した.従来法である横行大動脈絞扼法(TAC)では,ラットの場合,大動脈弓部の絞扼の程度を強くし過ぎると死亡し,ぎりぎり生存できる程度だと著しい心機能低下が生じない.従来法はTAC時に右BCA経由で圧(血流)が逃げるのに対し,AAC法およびTAC+BCAC法は左心室と絞扼部位の間に圧(血流)の逃げ道がなく,絞扼の程度により左心室への圧負荷を調節できるのではないか,と考えた.そこで,弓部ではなく上行大動脈の絞扼術(AAC),または大動脈弓部+右腕頭動脈の両絞扼術(TAC+BCAC法)の2通りの大動脈絞扼法を試み,モデル作成に時間を要した.現時点では,どちらの方法においても重度の心肥大を生じさせた. 本研究では心機能計測のためにテレメトリー式圧送信機(Kaha社製)およびトランジットタイム血流計(ニプロ・トランソニック社)を使用予定だが,トランジットタイム血流計のプローブが近いうちに販売終了となり,その前に定価が2-3倍に上昇するとのことで,計画を前倒しで値上がり前に血流計プローブを購入した.テレメトリー圧送信機もすでに2倍以上の値上げが行われており,購入できる金額ではなくなってしまった.これら,研究機器や試薬類の急激な価格高騰により,予算が圧迫されているため,可能な限り当初の計画内容を遂行するため,代替法の利用や装置の自作,実験動物の再利用を含め計画の見直しを行っている.
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今後の研究の推進方策 |
研究目的は,① 圧負荷による心室拡張障害に対する運動および食事介入の効果をin vivoから遺伝子レベルに渡って解明すること, ② 加齢とともに生活習慣病を発症し、拡張障害を呈するモデルを開発し,このモデルにより徐々に進行する拡張障害の発症を心臓機能,心筋細胞機能,遺伝子・タンパク質発現変化の網羅的解析を駆使して早期に捉え,日常運動の効果を明らかにする,の2点である. 現在,①のモデル作成および研究対象の候補となる遺伝子群の目途が立ったため,今年度は①に対して食餌や運動介入の影響を調べる.また,初年度はモデル動物としてラットのみを使用したが,今年度はマウスも用いる.②は加齢研究用の高齢マウスに高脂肪・高糖餌を給餌することによる拡張障害誘発モデルを用いる.ラットにおいても,低用量STZ投与+高スクロース投与によにマウスと同様の拡張障害発症モデルを作成する. 運動は,ランニングホイール付きケージを用いた自発運動と,トレッドミル装置を用いた強制運動の両方を用いる.ランニングホイールによる自発運動は,運動時間と走行距離が多くなるという利点があるが,負荷が低い.一方,トレッドミル装置による強制運動は,運動時間や走行距離はあまり上げられないが,運動負荷を上げることが可能である.また,強制運動は精神的ストレスの影響も生じる.これらの特徴を使い分ける.研究機関には限りがあるので,可能であれば高齢動物を購入する.
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