研究課題/領域番号 |
23K10613
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59020:スポーツ科学関連
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研究機関 | 実践女子大学 |
研究代表者 |
新宮 巴菜 実践女子大学, 研究推進機構, 研究員 (70972751)
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研究分担者 |
麻見 直美 筑波大学, 体育系, 教授 (10300005)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
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キーワード | Female Athlete Triadモデル / 利用可能エネルギー / 性周期 / 低骨強度 / 成長期 / 食餌制限 / 自発走運動 / FATモデル / 女性アスリート / 骨 |
研究開始時の研究の概要 |
若年女性アスリートで問題視されているFemale Athlete Triad(FAT)が頻発する競技の多くは、Weight-Sensitive Sportsと総称される。FATの根本的な原因は利用可能エネルギーの低値であり、エネルギー摂取量の増加が最も有効な予防・改善策である。しかし競技特性上、エネルギー摂取量の増加は有効な手段とは言い難く、エネルギー補充を伴わない予防・改善策が求められる。これまでのFATモデルラット作成では成熟期ラットを用いられたが、FATは若年期で頻繁に発症する。そこで本研究では成長期ラットを用いて幅広いFATの予防・改善策の検討に基盤となるFATモデルラットを確立する。
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研究実績の概要 |
競技成績向上のために食餌制限を強いられる若年女性アスリートでは、Female Athlete Triad(FAT)が頻発することが知られている。FATの予防・改善策として最も有効な方法は利用可能エネルギー低値状態を解消することであるが、Weight-Sensitive Sportsのアスリートにとって利用可能エネルギーを増加させることは非現実的な方法である。このことから、今後、若年女性アスリートに対するFATの予防・改善策を検討していくための基盤となり得る成長期ラットを用いたFATモデルラットの開発を目指している。2023年度は、成長期雌ラットを用いて-40%の食餌制限および自発走運動を6週間継続するという条件でFATモデルの作製を試みた。その結果、FATを模した群の終体重が顕著に低く、利用可能エネルギー低値を確認した。また、子宮重量の有意な低値および自発走運動の走行リズム解析により性周期が消失していることを確認した。さらに、二重エネルギーX線吸収法により腰椎、脛骨の骨密度が有意に低いことが明らかになった。以上の結果から、FATの3症状である利用可能エネルギー低値、性周期異常、低骨強度を確認できたことから、FATモデルの作製条件として適切である可能性が示唆された。しかし、一般に食餌制限を課すことで過活動がみられるものの、本研究の食餌制限群では明確な過活動状態を確認することはできなかった。FATモデルとしての妥当性は利用可能エネルギー、性周期異常、低骨強度の3点で判定しており、過活動状態の有無はFATモデルとしての妥当性には必ずしも影響しない。しかしこの結果から、食餌制限の影響が顕著に表れていない可能性が考えられ、我々は完全なFATモデルを作製できたとは言えないと推察している。2023年度の実験結果を踏まえ、次の実験に向けて実験計画を再考し進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、成長期雌ラットを用いて-40%の食餌制限および自発走運動によりFATモデルラットの作製およびモデルとしての妥当性検討を行い、おおむね当初の予定通りに進めることができている。 本研究の研究計画は次の(1)、(2)のように計画していた。2023~2024年度前半には(1)成長期雌ラットを用いた30日間の-40%食餌制限と自発走運動によるFATモデルラットの作成、2024年度後半~2025年度には(2)成長期雄ラットを用いた30日間の-40%食餌制限と自発走運動によるFATモデルラットの作成を予定していた。しかし2023年度~2024年度前半は、我々の先行研究に残された課題を解消することを第一の目的として実施することとし、実験期間を30日から6週間に変更して実施した。先行研究で-50%の食餌制限により食餌制限の影響が過剰に表れたという課題を解消するために本研究を実施することとなったが、-40%食餌制限でFATモデルラットを作製できる可能性を検討するため、まずは30日間ではなく6週間で実施することとした。以上のことから、2023年度は成長期雌ラットを用いて-40%の食餌制限および自発走運動を6週間継続させることでFATモデルの作製を試みた。その結果、FATを模した群でFATの3症状である利用可能エネルギー低値、性周期異常、低骨強度を確認できたことから、FATモデルの作製条件として適切である可能性が示唆された。前述の通り、研究計画(1)を完遂するため、残りの半期では性周期異常の判別に関わるパワースペクトル割合の算出や、低骨強度の判別に関わる骨破断試験などの検討項目を追加することで、より精度の高いモデルを作製することを目指していく。
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今後の研究の推進方策 |
今後は2023年度の研究結果を踏まえ、当初の計画を一部変更して継続していく。2023年度に実施した実験結果は、本実験のFATモデルの作製条件は適切であったと考えられる一方で、完全なFATモデルラットを作製できたとは言い難い結果となった。 一般的に、食餌制限を行うことにより顕著な過活動状態がみられるものの、本実験では明確な過活動状態を確認することができなかった。当初の研究計画では、2023~2024年度前半に「(1)成長期雌ラットを用いた30日間の-40%食餌制限と自発走運動によるFATモデルラットの作成」を行い、2024年度後半~2025年度には 「(2)成長期雄ラットを用いた30日間の-40%食餌制限と自発走運動によるFATモデルラットの作成」を予定していた。本研究の食餌制限割合が緩かった可能性を鑑み、2024年度の後半からは、用いる動物は成長期雌ラットのまま、食餌制限割合を5%高めた-45%の食餌制限によりFATモデルラットを作製することを目指す。-45%食餌制限で実施することにより、FATの3症状が明確に現れるだけでなく、モデルの完成に至るまでに適切な段階を踏んだモデル作製ができるのではないかと考える。 前述の研究計画の通り、2024年度前半までは(1)の解析等を進めていく予定である。性周期異常の判別を行うため、走行距離のデータを用いたパワースペクトル割合の算出や、低骨強度の判別に関わる骨破断試験を行う。FATの3症状だけでなく、今後、FATモデルラットを確立していくためにモデル動物として抜かりの無いモデルを作製するために複数の測定項目によりモデルとしての妥当性を高められるよう進めていく。
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