研究課題/領域番号 |
23K10614
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59020:スポーツ科学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
山中 航 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (40551479)
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研究分担者 |
金 芝美 順天堂大学, 大学院スポーツ健康科学研究科, 助教 (00868177)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 運動意欲 / 社会的運動ケージ / 腸内細菌叢 / バーチャルリアリティ / ラット / 腸内細菌 / ドーパミン関連遺伝子 |
研究開始時の研究の概要 |
運動が心身の健康増進や疾病予防に効果的であることはよく知られているが、毎日欠かさず運動する人もいれば全く運動しない人もいる。本研究課題ではこのような運動意欲の個人差が生じるメカニズムを解明するため、「運動意欲の個体差は脳(中脳ドーパミン系)と腸(腸内細菌叢)の連関によって生じる」という仮説の検証を目的とする。脳のドーパミン関連遺伝子および腸内細菌叢分析を行い、運動意欲との関係性を調べる。同定した遺伝子の機能阻害によって脳腸連関の機能的因果性の検証を行う。運動意欲と脳腸連関の関係を明らかにすることによって運動意欲の個体差を考慮した新しい運動処方の開発につなげることを目指す。
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研究実績の概要 |
運動が心身の健康増進や疾病予防に効果的であることは自明であるが、運動意欲には大きな個人差が見られる。本研究課題は、このような運動意欲の個人差が脳(中脳ドーパミン系)と腸(腸内細菌叢)の連関によって生じるという仮説の検証を目的としている。2023年度においては、当初の計画に則って、(1)バーチャルリアリティ(VR)社会的運動ケージへの改良、(2)回転ホイールケージでの運動量と相関する腸内細菌叢の探索、を行った。 (1)VR社会的運動ケージへの改良について、研究代表者はこれまで二匹の動物間の仕切り板を変更して社会的接触度を変更できる社会的運動ケージを開発し、内発的に生じる運動意欲と他者によって惹起される外発的な運動意欲を区別して運動意欲を定量化してきた。この社会的運動ケージにおける問題点として、ペアとなる動物の運動量が統制できない(運動意欲が高い動物もいれば低い動物もいる)という点が挙げられたため、VR社会的運動ケージへの改良を試みた。その結果、VR環境では運動量が大きく減少し、運動タイミングの同期も生じないことが観察された。この結果は運動意欲の伝搬には単に同種の動物が運動している視覚情報の提示だけでは不十分であることが示唆された。 (2)回転ホイールケージでの運動量と相関する腸内細菌叢の探索について、運動量と相関する腸内細菌叢について探索的に解析を行った。回転ホイール付きケージでラットを飼育し、4週間の飼育後に糞便を採取した。採取した糞便サンプルについて、16S rRNA解析によって腸内細菌叢分析を行った。その結果、いくつかの細菌が運動量と相関を示したことから、次年度以降はこれらの細菌をターゲットとして脳との関連についてさらにアプローチを進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の実施状況について、当初の計画通り、(1)VR社会的運動ケージへの改良を試み、また(2)腸内細菌叢データの解析を進めた。(1)については、VR社会的運動ケージによって動物に対する刺激としての運動量の統制が可能になることを期待していたが、運動意欲の伝搬メカニズムがそう単純ではなく、視覚以外の要因によって運動意欲伝搬が生じる可能性を示唆するものであった。しかしながらこのような結果が得られることも想定内であり、計画全体に大きな支障をもたらすものではないと考えている。また(2)について、候補となる腸内細菌が同定できたため、予定通り次年度以降に社会的運動ホイールケージでの飼育後に糞便サンプルを採取し、データを取得する予定である。このような状況から、現在までの進捗状況について、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
VR社会的運動ケージへの転換は困難であり、実際の動物間での身体的接触を含むインタラクションが運動意欲伝搬に重要であることが明らかとなった。今後の推進方策として、まずは外発的な運動意欲伝搬を引き起こすメカニズムを明らかにするため、社会的運動ホイールケージを用いて社会的接触度の高い金網条件でのペア飼育または社会的接触度の低い黒アクリル板条件での単独飼育を4週間実施し、糞便サンプルならびに脳組織サンプルを採取する。c-Fos等の神経活性マーカーを用いて関連する脳領域を全脳的に探索し、中脳ドーパミン―線条体をはじめとする報酬や社会性に関する脳領域に差が生じるか、また2023年度に同定した運動意欲と関連する菌種の分布との相関について検討する。
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