研究課題/領域番号 |
23K10661
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59020:スポーツ科学関連
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研究機関 | 鹿屋体育大学 |
研究代表者 |
北村 尚浩 鹿屋体育大学, スポーツ人文・応用社会科学系, 教授 (70274868)
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研究分担者 |
前阪 茂樹 鹿屋体育大学, スポーツ・武道実践科学系, 教授 (10209364)
中村 勇 鹿屋体育大学, スポーツ人文・応用社会科学系, 講師 (70315448)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 伝統文化 / 武道 / 教育効果 / 主観的指導技能 / ナショナル・アイデンティティ / 中学生 |
研究開始時の研究の概要 |
平成18年改正の教育基本法では「伝統と文化の尊重」「我が国と郷土を愛する」態度の涵養が教育の目標として掲げられ,これを受けて平成24年度より中学校での武道が必修化された.必修化の教育効果について一定の評価がみられるものの,教育基本法が目指す「伝統と文化の尊重」「我が国と郷土を愛する」態度の形成については,検討されていない. 本研究は,中学校での武道授業の学習効果としてナショナル・アイデンティティに着目し,地域の武道実践者との比較を通して,中学校での武道教育がナショナル・アイデンティティの形成に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている.
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研究実績の概要 |
2023年度は,体育の授業における武道の実施状況と教育内容,教員の武道熟達度を調査し,武道の授業から得られる教育効果との関連を検証することが主なねらいであった.武道の教育内容・教員の熟達度を類型化し,教育効果との関連を教員の立場から明らかにするため,全国の中学校からランダム・サンプリングによって抽出した1,000校の保健体育担当教諭を対象に,所定の質問紙を用いた郵送法による調査を実施した.調査内容は,学校のプロファイル(生徒数,教員数,保健体育担当教員数など),武道実施状況(単元の教育内容,学年,時間数,担当教員など),教員の武道の熟達度,伝統文化の継承に関する武道の教育効果,次年度以降の調査協力の可否などである.調査への協力依頼を学校長,体育主任教員に宛てて行い各中学校任意の教員1名に回答を求めたところ,回収数は444,そのうち有効回答数(率)は386(38.6%)であった. 武道の実施状況として,扱っている種目は柔道が57.0%,剣道が34.8%,その他の種目が8.2%であった.学年ごとの武道単元の時間数は,1年生が8.20±2.03時間,2年生が8.14±1.90時間,3年生が8.29±2.21時間で,概ね8時間程度であることが明らかになった.79.3%が男女共習で授業を行っており,男女別習で行っているのは13.7%,男女共習と男女別習を併用しているところが7.0%であった.また,外部指導者を任用しているのは38校で1割ほどにとどまった.回答者の69.2%が,武道の授業を通じて日本の伝統文化の教育に効果があったと回答した.武道種目の主観的指導技能との関連では,柔道の主観的技能が高いものほど,伝統文化の教育の効果があったと回答したが,その他の種目の主観的指導技能との有意な関連は認められなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全国の公立中学校から無作為に抽出した1,000校を対象とした郵送法での質問紙調査により,444校(44.4%)の教員から回答を得ることができた.これは,同法による調査としては高い回収率と言える.また,どのような指導がなされておりどのような学習効果が得られているのか,という視点から武道の授業を通して「我が国固有の伝統と文化への理解を深める」ことを留意した指導内容とその他の種目と比較して生徒への学習効果の違いを尋ねた自由記述回答も高い回答率であり,十分なデータを収集することができ,国内外での学会において発表の準備を進めている. さらに2024年度に予定している生徒を対象として行う質問紙調査への協力の可否についても,86校から協力への同意が得られた.調査方法の性質上,サンプルの偏りは否めないものの一定数以上の規模での調査を実施できる可能性がある. 以上に鑑み,「(2)おおむね順調に進展している」と評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は協力の得られた公立中学校の生徒を対象とした質問紙調査を行い,中学生による武道の学習効果としてナショナル・アイデンティティを評価することを主なねらいとしている.テキストマイニングにより生徒のナショナル・アイデンティティを明らかにし,武道授業の取組状況等との関連を検討する.さらに,前年度の教員対象の調査との比較・検討を行うことで,教育内容との関連を明らかにする. 前年の調査対象校のうち,調査協力の内諾が得られた中学校の生徒,1校あたり15人から20人程度を想定し,20校300人から400人程度を対象として所定の質問紙による配票調査を行う.調査内容として,前年度の教員調査の結果を踏まえ,武道授業への取組状況,武道授業の学習効果としてナショナル・アイデンティティを中心に質問項目を構成する.得られたデータは,ナショナル・アイデンティティを従属変数として,武道授業への取組状況による比較を行う.また,教員のデータと紐付けて,学習効果の規定要因を重回帰分析によって明らかにする.さらに,テキストマイニングによって類型化された教育内容による比較を行う.
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