研究課題/領域番号 |
23K10679
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59020:スポーツ科学関連
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研究機関 | 天理大学 |
研究代表者 |
寺田 和史 天理大学, 体育学部, 教授 (40454798)
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研究分担者 |
中谷 敏昭 天理大学, 体育学部, 教授 (60248185)
吉武 康栄 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (70318822)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 鍼 / 鍼通電 / 関節位置覚 / 遅発性筋痛 / 脊髄 |
研究開始時の研究の概要 |
遅発性筋痛は、脊髄α運動ニューロンプールの活動の興奮性を変調させ、それにより関節の屈曲/伸展角度を調節・把握する感覚である関節位置覚を低下させることで、様々なスポーツ活動や日常生活動作の円滑化を妨げる。一方、鍼や鍼通電の刺激は脊髄α運動ニューロンプールの活動を様々に変化させることから、それらの刺激が遅発性筋痛によって生じた関節位置覚の低下を抑制するのではないかと考えた。そこで本研究では、遅発性筋痛を生じさせた筋に対して鍼または鍼通電を行い、遅発性筋痛モデルによる関節位置覚の低下に対する抑制効果を明らかにする。
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研究実績の概要 |
関節位置覚は筋感度調節能に起因し、その低下は慢性的には加齢や不活動によって起こるが、急性的には筋疲労や遅発性筋痛(Delayed Onset Muscle Soreness: DOMS)によっても生じる。DOMSが筋感度調節能を低下させる原因として、ゴルジ腱器官や筋紡錘の働きの変化が関与していると考えられている。その証拠にDOMS発生時には運動単位の活動閾値の低下など、脊髄α運動ニューロンプール(Alpha Motor Neuron Pools:αMNP)の活動が変化する(=興奮性の上昇)。この関節位置覚の低下が、細やかな動作調節が必要なスポーツ活動等の円滑な遂行を妨げる。 一方、鍼または鍼通電刺激は筋緊張緩和をもたらし、そのメカニズムには、固有反射の抑制が関係しているとされる。鍼または鍼通電刺激が固有反射の一つである伸張反射を抑制することが報告されており、それは、鍼または鍼通電刺激が伸張反射の発現強度に影響を与える脊髄αMNPの興奮性を低下させることにより引き起こされると考えられている。本研究では、これらのような鍼や鍼通電のαMNPへの変調作用は、DOMS等による関節位置覚の乱れを正常化する、あるいは回復させることに寄与する可能があるのではないかと考え、DOMSにより実験的に筋感覚の乱れを生じさせた際の、関節位置覚に及ぼす鍼または鍼通電刺激の効果を明らかにすることを目的としている。 本年度は近年のCOVID-19流行の影響により、先行して実施していた他の科研費による研究課題(20K11405)の研究期間を1年間延長したことなどもあり、当初、本課題で1年目に行う計画(関節位置覚の評価法の確立)が予定通りには進まなかった。ただし、研究分担者との打ち合わせや研究プロトコル構築のための予備的試行を重ねることで、本年度は主に次年度以降のデータ取得や解析がスムーズに行えるようにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、予定されていた研究計画があまり進められなかった。理由として、近年のCOVID-19流行の影響により、先行して実施していた他の科研費による研究課題(20K11405)の研究期間を1年間延長したことなどがあり、そのため、新たな課題である本研究に着手することがやや遅れてしまった。また別の理由として、所属機関で役職に就いたことも少なからず影響した。 本研究課題に関する研究成果について、学会での発表等を計画していたが、上記のような理由でデータ収集・分析がままならなかったこともあり、予定していた発表の機会を得られなかった。 一方で、研究分担者との打ち合わせ、データ取得のための予備的検討、測定に使用するシステムの構築及び本研究課題に係る資料の収集等については、出来るところから進め、ある程度の成果を得た。特に、関節位置覚を評価する方法の開発については、研究分担者との間で検討を重ねるなどして多くの部分を進めることができた。具体的には、関節位置覚の測定法、関節位置覚調節に係る筋及び神経系のふるまいについての定量法、鍼及び鍼通電の方法について検討し、またそれらを用いた研究プロトコルの確立を目指した議論を重ねることができた。ただし、研究プロトコルについては未だヒトを対象とした予備的な測定、テスト等が十分に行えていないため、次年度当初はまずそれらのことができるようにスケジュールを鑑みながら、速やかに調整をしていく必要がある。 このように、本年度は当初計画通りには進まなかったものの、様々な制約のある中で出来るだけ研究が進められるように最大限の工夫を行った。しかしながら、上記のようにヒトが参加する内容の検討がほぼ出来なかったことから、研究の進捗としてはやや遅れている状況であると言わざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の解決のため、次年度はスケジュールを見直し研究を進めていく。本年度で予備的に検討した研究プロトコルを早期に確立し、十分な準備を行ったうえで、元来、本年度までには着手予定であった内容、及び次年度予定している内容を合わせて進める。次年度は、これまで懸案であった様々な制約が少なくなる公算が高いため、本年度よりも研究が進捗することを期待している。 次年度は、先ず研究プロトコルを確立する。具体的には関節位置覚の評価に用いる関節、関節角度の測定法、DOMSの発生法等の確定を行う。また、これら確定した条件による研究プロトコルを用いて、若年健康成人を対象に本法のデータ再現性を確認する(寺田,吉武,中谷)。データ取得の再現性、測定信頼性が確認された後、本研究課題の解決に必要なデータの収集を開始する。鍼通電刺激が関節位置覚に及ぼす影響を検討するために、日常的に筋力トレーニングを行っておらず、且つ、6か月以内に当該筋の筋痛を経験していない若年健康成人を対象として、想定した関節運動により実験的にDOMSを発生させる。DOMSの発生した同一対象者に対してDOMS発生前、DOMS発生後、DOMS観察期間後、鍼通電刺激直後、鍼通電刺激後(経時)のタイミングで、関節位置覚及びそれに係る筋・神経のふるまいに関するデータの取得を行い、DOMS発生時の関節位置覚に対する鍼通電刺激の影響を観察する(寺田,吉武)。鍼刺激は、片側の当該筋への5Hz・20分の低周波鍼通電(鍼:JSP-No.3,セイリン, 新規購入)を行う予定である。鍼通電刺激は、刺鍼経験が豊富なはり師が行う(寺田)。上記はこれまで通り研究分担者と十分に協力して、計画的に進める。 上記の計画遂行により、研究データの取得および解析が行えた場合、積極的に国内外で成果の発表を行う。また情報収集のため、いくつかの関連学会へ参加することを考えている。
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