研究課題/領域番号 |
23K10753
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59030:体育および身体教育学関連
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研究機関 | びわこ成蹊スポーツ大学 |
研究代表者 |
林 弘典 びわこ成蹊スポーツ大学, スポーツ学部, 教授 (30352941)
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研究分担者 |
穴田 賢二 石川工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (30756531)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | 柔道 / 頭部外傷 / 後ろ受け身 / 防止策 / 頸部筋収縮の反応時間 |
研究開始時の研究の概要 |
柔道の頭部外傷に関する研究では、発生要因を解明して具体的な安全対策が提言されるようになったが、未だに解明されていない多くの要因が存在する。その中でも投げられる者(頭部外傷を負う者)の頸部筋を収縮させる反応時間(頭部を固定させるために頸に力を入れ始める時間)が遅いことが深く関係しており、最大の要因であると考えられている。そこで本研究の目的は、投げられた場合と同様の状況において、後ろ受け身をさせた際の頸部筋を収縮させる反応時間が遅いことが頭部外傷の発生要因であることを明らかにすることとした。また、この反応時間を高める効果的な後ろ受け身の指導法を確立することとした。
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研究実績の概要 |
本研究の申請書における2023年度(1年目)の研究の目的、研究実施計画は次の通りである。押し出し装置で初心者(後ろ受け身の技能が低い者)と熟練者(後ろ受け身の技能が高い者)を押して後ろ受け身を行わせる。その際、両者の頸部筋を収縮させる反応時間を筋電計で測定し、初心者の頸部筋を収縮させる反応時間は熟練者よりも遅いことを検証する。この違いは後ろ受け身の技能の差によって生じているために、頸部筋を収縮させる反応時間が遅いことが頭部外傷の発生要因(≒後ろ受け身技能の未熟さの要素)であることを明らかにする。なお、頸部筋力が頭部外傷の要因と考えられていることから、両者の頸部筋力の差が実験結果に影響しないことも明らかにする。 それに対して実際に行った研究内容は次の通りである。2024年3月12日~15日、大阪体育大学において、大学柔道熟練者男性10名、大学柔道初心者男性10名を押出装置(一定の力で研究対象者を押す機械)で押して、不意な状態(研究対象者に暗算させている状態)と不意でない状態(押出装置で押すタイミングを知される状態)で後ろ受け身の実験を実施した。その際、頭部角加速度(≒頭部が畳に接近するスピード:速いほど頭部外傷の危険が高い)、頭部伸展角度(頭部と畳とのなす角度:小さいほど頭部と畳の距離が近くなって頭部外傷の危険が高い)、頚部筋活動、頚部筋力、身長、体重など分析に重要なデータを取得した。現在、データ分析中であり、2024年9月20日・21日、九州産業大学で開催される日本武道学会第57回大会において口頭発表を行う予定である。 以上のことから、当初の研究目的や研究実施計画に基づいて研究が実施されている。また、意義、重要性等は、頭部外傷の研究において、初めて頸部筋を収縮させる反応時間が遅いこと(≒後ろ受け身技能の未熟さの要素)が頭部外傷の発生要因であることを解明できることである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年7月までに予算の減額に対応するために、次年度から予算を補填して必要な機材(筋電計)を購入することができた。また、それによって不足した謝金や旅費を共同研究者から捻出してもらい、本実験を実施できる見通しが立った。 2023年9月6日~2023年9月8日、共同研究者の所属する大阪体育大学において、大学柔道熟練者男性10名を投げる実験において、筋電計の使用方法や精度を確認することができた。その後、2023年12月7日~2023年12月9日、研究分担者の所属する石川工業専門高等学校において、2024年3月の本実験の計画を行った。また、本実験が大阪体育大学で実施できない場合、金沢学院大学で実施できるように手配を行った。 予定通り2024年3月12日~2024年3月15日の4日間において、研究対象者20名(大学柔道熟練者男性10名、大学柔道初心者男性10名)に対して、押出装置(一定の力で研究対象者を押す機械)を使って、不意な状態(研究対象者に暗算させている状態)と不意でない状態(押出装置で押すタイミングを知される状態)で後ろ受け身の実験を行うことができた。また、その際に、頭部角加速度、頭部伸展角度、頚部筋活動、頚部筋力、身長、体重など分析に重要なデータを取得することができた。 現在、研究分担者がデータを分析中しており、2024年6月中旬に一部の分析結果が明らかになる。その後、2024年9月20日・21日、九州産業大学で開催される日本武道学会第57回大会において、前述のデータの一部を口頭発表する予定である。 以上のことから、本研究は、おおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年4月18日に研究代表者は研究分担者と電話で打ち合わせを行った。その結果、研究分担者が多忙であり、実験を実施していた大阪体育大学までの移動時間や機材運搬が大変であることから、2024年度は研究分担者のいる石川工業専門高等学校において、実験2回と打合せ1回の日程を調整し、次の通りとなった。 ①本実験(2024年8月19日~27日)では、柔道初心者男性10名を対象に実験を実施する。実験内容は、1週間、研究対象者に一般的に行われている後ろ受け身の練習(1日50回)を行わせて、その技能が向上するどうかを検証する。具体的な流れは、実験初日に研究対象者の頭部角加速度、頭部伸展角度、頚部筋活動、頚部筋力などを測定する。研究対象者は後ろ受け身の練習を行う。実験最終日に初日の測定した項目を測定する。予想される結果は、普通の後ろ受け身の練習では、正しい形は修得できるが、頚部の筋収縮スピードの向上は見られないことが推測される。 ②打合せ(2024年12月5日~7日)では、①本実験の分析データを検討する。また、③本実験の計画の確認を行う。 ③本実験(2025年3月5日~12日)では、柔道初心者男性10名を対象に実験を実施する。実験内容は、1週間、研究対象者に押出装置を使って、不意な状態における後ろ受け身の練習(1日50回)を行わせて、後ろ受け身の技能(頚部の筋収縮スピード)が向上するどうかを検証する。具体的な流れは、実験初日に頭部角加速度、頭部伸展角度、頚部筋活動、頚部筋力などを測定する。押出装置を使った不意な状態における後ろ受け身の練習を継続して実施する。実験最終日に初日の測定した項目を測定する。予想される結果は、押出装置を使った不意な状態では、頚部の筋収縮スピードの向上は見られることが予想される。
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