研究課題/領域番号 |
23K10771
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59030:体育および身体教育学関連
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研究機関 | 相模女子大学 |
研究代表者 |
山本 絵里子 相模女子大学, 人間社会学部, 講師 (50572202)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ダンス / ことば / リズム / 乳児 / 認知発達 / 身体教育 / 乳幼児 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目標は、乳児のための教育学的リズムダンスを創作することである。ヒトの乳児は、生後12カ月ごろになると原初的なダンスを表出する。では、なぜ、乳児はおどるのか?「ことば」の発達に関する研究の知見から、原初的ダンスの出現の背景には、「ことば」の発達と共通する動きのリズムの学習が想定される。つまり、原初的ダンスの表出は、動きのリズム学習を促し、そして、「ことば」の発達に大きな役割をもつと考えられる。そこで、本研究では、乳児期の原初的ダンスと「ことば」の発達的関係性を検討する。そして、その研究成果から、乳児のためのことばの発達を促すダンスを創作し、そのダンスの教育学的効果を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究では、乳児期の原初的ダンスと「ことば」の発達的関係性を検討し、その成果から動きのリズム育成ダンスを構築することを目指す。具体的には、下記の3つの目標を達成する。【目標1】として、乳児期の動きのリズムと「ことば」の発達の関係性を検討する。【目標2】では、目標1の発達認知科学的成果に基づき「動きのリズム育成ダンス」を創作する。【目標3】では「動きのリズム育成ダンス」の教育学的効果を行動と脳活動のレベルから検討する。これらの目標を達成するために、本研究計画では2つの研究項目を実施する。【研究1】は乳児期の動きのリズム表出と「ことば」の発達の関係性に関する縦断的研究である。【研究2】は「動きのリズム育成ダンス」の教育学的効果に関する発達認知神経科学的研究である。 2023年度は、【研究1】に関する2つの研究を行った。研究1-1では、動きのリズムを分析するための手法としての動きのリズム譜の有用性を検討した。この研究では、四単位方式により創作された舞踊作品を対象として、動きのリズム譜を作成した。その結果、動きのリズム譜が創作舞踊作品のリズム構造を記述するために有用であることが示唆された。研究1-2では、乳幼児の自由遊び場面におけるダンス行動の収集を開始し、動きのリズム譜を用いて分析した。その結果、乳児のダンスの構造を分析する一つの方法として、この「動きのリズム譜」が有用であることを確認した。 【研究2】に関しては1つの研究を行った。研究2-1では、テレビを代表とする映像メディアによるダンスの提示が子どものダンスの発達にどのような影響を与えるのかを検討した。本研究では、テレビ視聴中の乳児の行動を縦断的に計測し、ダンスの獲得におけるテレビ視聴が果たす役割について検討した。本研究の結果、映像メディアによるダンスの長期的な視聴が乳幼児のリズム運動を引き起こすことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、乳児期の原初的ダンスと「ことば」の発達的関係性を検討し、その成果から動きのリズム育成ダンスを構築することを目指している。2023年度は、当初予定していた研究計画を遂行するために研究環境と分析環境を整えた。また、研究を開始し、3つの主要な結果を得た。 まず、研究1-1では、乳幼児の動きのリズムを分析するための「動きのリズム譜」の有用性を明らかにした。また、研究1-2では、乳児のダンスの構造を分析する一つの方法として、この「動きのリズム譜」が有用であることを示した。さらに、研究2-1では、映像メディアによるダンスの長期的な視聴が乳幼児のリズム運動を引き起こすことを明らかにした。2023年度の研究の成果は、動きのリズム育成ダンスを創作するためのダンスの発達モデルを提供する上で大変重要であると考える。また、ダンスの教育学的効果を検討するための実験手続きを確認することができた。 当初の予定では、研究計画の研究1で、生後8から10カ月の時点と生後18カ月の時点で、乳児の遊び場面における①身体の動きと②音声を計測する予定であった。乳児の身体の動きのデータは想定どおり収集することができたが、姿勢推定解析ソフトで解析するためには撮影環境(画角や解像度)を調整する必要があることが明らかになった。また、乳幼児の音声の表出は非常に少なく、収集するのが困難であった。今後、自由遊びの測定環境の改善を行う予定である。 以上の成果と改善点を得たことから、本年度はおおむね順調に進展していると報告した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度では、生後8から10カ月の時点と生後18カ月の時点で、乳児の①身体の動きと②音声のデータ量を増やす予定である。その際、撮影環境(画角や解像度)や自由遊びの環境を改善する必要がある。つまり、次年度は、乳幼児の自発的な身体の動きと音声のデータの収集に向けて実験環境の改善に取り組む。また、乳幼児の養育者に対するアンケート調査を加えることで、身体の動きや音声に関する質的なデータを扱うことを検討している。さらに、今年度の研究2-1では、映像メディアによるダンスの長期的な視聴が乳幼児のリズム運動を引き起こすことを明らかにした。そのため、こうした実験手続きを用いて、「動きのリズム育成ダンス」の教育学的効果を脳活動と行動レベルから検討する予定である。
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