研究課題/領域番号 |
23K10781
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59030:体育および身体教育学関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
橋口 知 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 教授 (90315440)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | スポーツ精神医学 / 精神疾患 / 学校精神保健 / 保健体育 / 学校教員 / 学校保健 / スポーツ精神 |
研究開始時の研究の概要 |
令和4年度から高等学校保健体育の授業で「精神疾患の予防と回復」を全ての生徒が学んでいるが、円滑な授業の実施のためには、保健体育教員自身が精神疾患を身近なものと捉えることが重要である。そこで、精神疾患に係る教科書や資材の内容を検討後、学校教員を対象に学校精神保健とスポーツが関与する精神的問題に関する調査を行い、その分析結果の情報提供やモデル的授業の実施分析を通して、学校保健教育におけるスポーツ精神医学的知見の活用による学校教員や生徒の精神疾患の理解と対処力の向上を図り、保健分野だけではなく、保健体育教育における「体育と保健の効果的な融合的学習」を目指す。
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研究実績の概要 |
精神疾患は思春期青年期を好発年齢とするものが多いことから、中学校や高等学校の学校教育において、精神疾患や精神科医療に関する適切な情報を得ることは、予防教育や早期治療の導入や治療継続の面からも、さらには精神疾患の捉え方が極端に偏らないようにするためにも重要である。令和4年度から高等学校保健体育の授業で「精神疾患の予防と回復」を全ての生徒が学んでいるが、円滑な授業の実施のためには、保健体育教員自身が精神疾患を身近なものと捉えることが必要と考える。そこで、精神疾患に係る教科書や資材の検討や学校精神保健とスポーツが関与する精神的問題に関する調査を行い、その分析結果の情報提供や授業のモデル的試行等を通して、学校保健教育におけるスポーツ精神医学的知見の活用に向けて、学校現場が必要としている情報やその提供方法を明らかにすることを目指して本研究を実施している。 初年度は、学習指導要領や学習指導要領解説、先行研究や既存の教育資材等の既存資料をもとにした情報の整理を中心に行った。最近の精神疾患に関する記載内容は、過去と比較して増加しており、生徒が探求するための具体的な資料の入手先が提示されていた。スポーツ精神医学的知見と高等学校「保健」の学習内容との関連付けについては、最近の高等学校「保健体育」の教科書の一部にアンチドーピングの記載があるものの、スポーツが関与する精神疾患や精神疾患の対処法としての運動・スポーツの有効性に関する明確な記述は少なかった。これらを踏まえて、精神疾患教育において学校現場が必要としている情報を収集するための調査の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の初年度としては、スポーツ精神医学における3つの観点と高等学校「保健」の学習内容との関連性の整理を行うことにしていた。まず、「既存資料をもとにした情報の整理」として、学習指導要領や学習指導要領解説において、精神疾患がどのように取り上げられているかについて、これまでの歴史的な変遷を含めて整理を行った。その結果、全く記載のない期間を挟んで、それ以前と令和4年度実施分からの記載内容が大きく異なっていることをあらためて確認した。 また、スポーツ精神医学における3つの観点である、①スポーツへの精神医学的知見の活用、②スポーツの精神医療への適用、③スポーツと精神機能の関連からの知見と、高等学校「保健」の学習内容との関連付けについて整理を行った。その結果、アンチドーピングに関しては、最近の高等学校「保健体育」の教科書に一部記載があるものの、スポーツが関与する精神疾患に関する記述は殆ど確認できなかった。一方、健康な生活やストレスへの対処として、小学校高学年「体育」の教科書から継続して、運動・スポーツが取り上げられていたが、精神疾患への対処法としての運動・スポーツの有効性については明確には記載されていなかった。 さらに、精神疾患を有する当事者およびその家族の研修会等に参加する機会があったため、複数名の参加者に、学校教育において児童・生徒が精神疾患について学ぶことについて確認したところ、その立場によって学習内容への期待が異なっていることが判明し、特に精神疾患の経過説明に差異が認められた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、学校保健教育におけるスポーツ精神医学的知見の活用に向けて、学校現場が必要としている情報やその提供方法を明らかにすることを目指しており、初年度の「既存資料をもとにした情報の整理」において、教科書に記載があまり確認できなかった具体的なスポーツ精神医学的知見として、スポーツ選手も含めて誰もが罹患する可能性のある精神疾患の概要、精神疾患を有した方々のスポーツへの取組による個人及び社会への効果、スポーツの抑うつ状態や不安や睡眠等の精神機能への効果について、学校教育での取り上げ方をさらに検討する。「学校教員からの情報収集と検討」として、学校精神保健の主たる担い手は養護教諭であり、精神疾患に関する研修も受けているが、学校教員免許状(保健)を有していても学校における本来の業務は授業担当ではないことから、保健教育の主担当は保健体育教員である。しかし、両者の連携・協働は重要であり、養護教諭の保健教育に関する調査は必須である。そこで、効果的な「保健」の授業を実施するために必要な情報の具体的な内容とその提供方法について、高等学校の保健体育教員と養護教諭の立場の違いからの意見を反映しながら、調査対象ごとに具体的なアンケート調査項目についての検討を進め、調査を実施する。各調査用紙のアンケート項目ごとに、データ整理を行う。得られた分析結果をもとに、質問項目の作成段階において協力を得た複数の高等学校の保健体育教員と養護教諭と、モデル的導入についての検討を行なう。また、国内の関連学会への参加や他機関訪問によって情報収集を行い、本調査結果の検討に反映する計画である。
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