研究課題/領域番号 |
23K10852
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
佐々木 章 岩手医科大学, 医学部, 教授 (40275540)
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研究分担者 |
梅邑 晃 岩手医科大学, 医学部, 准教授 (10749675)
石垣 泰 岩手医科大学, 医学部, 教授 (50375002)
二階 春香 岩手医科大学, 医学部, 助教 (90750860)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 非アルコール性脂肪性肝炎 / MASH / 肥満症 / 減量・代謝改善手術 |
研究開始時の研究の概要 |
高度肥満症患者に対するLSGにおいて、減量経過とともに経時的な肝線維化診断、改善機序と肝組織のリピドミクス解析を行った報告はなく、本研究は画期的である。研究では、NASHと診断されたLSG患者にフォローアップ肝生検で経時的に施行することで、肝脂肪化や線維化の改善が脂質代謝の改善により起こっていることを科学的に解明できると考えている。またLC-MS解析では、サンプル中に含まれる既知の脂質以外にも未知な脂質の構造推定が可能で、高精度な定量値算出による比較も行う。LSGを受けた患者における肝組織のLC-MS解析により、高度肥満症患者の脂質代謝の変化を解明できる可能性がある。
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研究実績の概要 |
高度肥満症に対する外科治療は、単に摂取エネルギーの減少だけでなく、種々の消化管ホルモンが変化し、減量効果と代謝改善効果とが望める減量・代謝改善手術と認識されている。申請者らは、減量・代謝改善手術の一術式である腹腔鏡下スリーブ状胃切除術(laparoscopic sleeve gastrectomy, LSG)において、2型糖尿病(type 2 diabetes, T2D)の改善が高率であること、非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis, NASH)の線維化が改善することなどを報告してきた。 本研究では、NASHと診断されたLSG患者を対象にして、経時的な肝組織学的評価とクロマトグラフィー質量分析(liquid chromatography-mass spectrometry, LC-MS)を使用した血液・肝組織検体のリピドミクス・プロテオーム解析を行い、減量による肝線維化の改善機序の解明と新規バイオマーカーを検索する。内科治療より効果的かつ持続的な体重減少が期待できるLSGについて、臓器代謝ネットワークの視点から術後肝線維化の改善機序が解明できれば、肥満NASHの診断や治療法に新たな知見をもたらすことが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI-IMS)により、肝組織から53種のリン脂質が検出された。LC-MS解析で検出された126種の血清リン脂質のうち,87種のリン脂質は脂質クラス、炭素鎖、不飽和結合の数がMALDI-IMSの分析結果と一致した。87種のリン脂質について濃度変化を検討すると、術後に3種のリン脂質の有意な増加が認められ、NASH群と非NASH群の比較では、PC(18:1e_20:4)がNASH群の術後に有意に増加していた。PC(18:1e_20:4)はオレイン酸とアラキドン酸が結合した脂肪酸である。NASHの陽性診断とのROC曲線において、AUCは0.707,カットオフ値は20711.3 μg/mL、NASHの陽性診断率は81.6%と高値であった。 高度肥満症に患者対するLSGは、アラキドン酸カスケードの進行を抑制する可能性があり、LSGの代謝改善効果により全身の炎症反応を抑制することで、NASHの改善に影響を与えた可能性が示唆された。またPC(18:1e_20:4)は、NASH群でのみ術後に有意に増加したことから、NASHの診断や治療効果判定のためのサロゲートマーカーとして使用できる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
LC-MSによる高深度プロテオーム解析を行い、LSG前後で変動がみられたタンパクを同定・抽出する。さらに採取した血清検体を用いてELISAによる変動タンパクの動態解析、術中肝生検で得られた凍結標本を用いて免疫組織化学による肝細胞中での発現解析を行う。NASHの診断・治療効果の判定は、術中、術後6か月の肝生検標本を用いた病理組織学的評価で行う。血清タンパクとNAFLD関連項目との相関を評価するために、Spearmanの相関係数で検討、肝線維化を予測する因子については、線形回帰モデルを用いた単変量、多変量解析により検討を行う予定である。 今後の研究成果の発信については、2024年度から積極的に国内外学会で研究成果の発表を行う。2025年度に英文論文作成を行い、所属機関発行のwebサイトへ解説を加えて掲載し、研究者以外の一般社会への成果公表も行う。
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