研究課題/領域番号 |
23K10863
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
西園 祥子 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (40336970)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | ニガウリ / 脂質代謝改善 / 筋肉への脂質輸送 / モモルジコシド / α-エレオステアリン酸 / 血中からの脂質クリアランス / 油脂負荷試験 / 脂質代謝 / 筋肉への中性脂肪の取込促進 |
研究開始時の研究の概要 |
先のヒト試験において、ニガウリ果汁末および脂肪含有食品の摂取と低・中強度の運動負荷を組み合わせることにより、ニガウリ果汁末を含まないプラセボ群と比べて、脂質酸化量が増加し、一方、グリコーゲンを節約することにより、運動効率を高めるとともに抗肥満効果が発揮される可能性を見出した。さらに、ニガウリ果汁末を酢酸エチル、水の順に抽出し、ラット油脂負荷試験を行ったところ、酢酸エチル画分でニガウリ果汁末の効果が再現された。本研究では、酢酸エチル画分の主要成分である共役リノール酸のα-エレオステアリンおよびククルビタン型のトリテルペン配糖体のモモルジコシド類が運動時の脂質代謝に及ぼす影響を明らかにする。
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研究実績の概要 |
我々は、先の研究においてニガウリ(Momordica charantia)が摂取した食事脂肪の血中からのクリアランスを亢進することを見出した。ニガウリには、共役リノール酸の一種であるα-エレオステアリン酸やククルビタン構造を基本骨格として有するチャランチンやモモルジコシド類が含まれることが特徴として挙げられる。本研究では、ニガウリに含まれる有効成分を調べるために、ニガウリ果汁末(BM)を酢酸エチル抽出し、その後、残渣をさらに水抽出することにより、酢酸エチル抽出画分(EE)および水抽出画分(WE)を調製した。EEおよびWEの回収率は、それぞれ4.5%および97.7%であった。さらに、各画分のトリグリセリド含量を測定したところ、BM 19.0 mg/g、EE 487.6 mg/g、WE 1.93 mg/gであった。40 mg/ml BMおよびWE、20 mg/ml EEとなるように20% DMSOに溶解し、0.75 g/kg体重のBMまたはWE、0.375 g/kg体重のEEを12時間絶食した300 g前後のSDラットに胃内投与し、30分後に15 ml/kg体重のイントラリポス(10%大豆油)をさらに胃内投与した。イントラリポス投与0、1.5ならびに2.5時間後に尾採血を行い、屠殺した。ラットの肝臓および筋肉の脂質濃度を測定した。2.5時間後の血清トリグリセリド濃度は、コントロール群と比較して、BM、EEおよびWE群で有意に低かった。筋肉トリグリセリド濃度は、コントロール群と比較してBMおよびEE群が高かったが、WE群とは差が認められなかった。また、肝臓トリグリセリド濃度は全ての群間で差が認められなかった。以上の結果から、BMに含まれる脂質代謝改善作用を発揮する有効成分は、EE画分に含まれる可能性が示唆された。現在、肝臓および筋肉の脂肪酸組成を解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BMを酢酸エチルで抽出し、その残渣を水で抽出することにより、2つの画分に分画した。各画分のα-エレオステアリン酸量を測定したところ、BMは44.15%、EEは51.66%含むことが確認された。その後、各画分を用いた油脂負荷試験を計画通りに実施した。血清、肝臓および筋肉の脂質濃度を測定し、EE画分がBMと同様の効果を発揮したことから、BMの有効成分は、α-エレオステアリン酸を含むEE画分であると推定した。また、油脂負荷試験後の肝臓および筋肉の脂肪酸組成を分析したところ、微量ではあるが、肝臓においてα-エレオステアリン酸と推定されるピークが検出された。筋肉についてはまだ分析していないことから、肝臓と筋肉の脂肪酸組成の再解析を行い、α-エレオステアリン酸が肝臓または筋肉のいずれか、または両方に輸送されているかを明らかにする。 さらに、筋肉におけるリポプロテインリパーゼ、CD36およびカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(CPT)1B mRNA量を測定したところ、CO群と比較してWE群でのみ有意に増加した。筋肉のLDLレセプターmRNA量は、CO群と比較してBM群でのみ有意に増加した。一方、CPT1Aおよびβ-アクチンmRNA量には群間で差が認められなかった。さらに、肝臓におけるこれらの遺伝子発現量には群間で差が認められなかった。このことから、BMは主に筋肉の脂質代謝関連遺伝子の発現に影響する可能性が推察された。また、BMに含まれる成分により、その作用メカニズムは異なる可能性が考えられた。 培養細胞を用いた評価系については、現在、検討中である。令和6年度中には評価系を確立し、ニガウリに含まれる成分の評価を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
酢酸エチル抽出画分については、さらに分画を行い、再度、油脂負荷試験を行う。血清、筋肉および肝臓の脂質濃度を測定し、摂取した脂肪の輸送について調べる。さらに、筋肉および肝臓での脂質代謝関連遺伝子の発現についても解析する。 培養細胞を用いた評価系については、マウス線維芽細胞3T3-L1を脂肪細胞に分化させる前後で細胞内への脂質の輸送に及ぼす各画分の影響について評価を行う。さらに、筋細胞に分化するC2C12を用いた評価も検討する。また、培養細胞からRNAを抽出し、油脂負荷試験において遺伝子発現レベルで効果が認められたリポプロテインリパーゼ、CD36、CPT 1BおよびLDLレセプターmRNA量について解析し、脂質代謝調節機構の詳細を解析する。 有効成分については、培養細胞での評価系を用いたスクリーニングを行い、推定したのち、エタノールを用いた有効成分の抽出方法を検討する。また、ニガウリに含まれるモモルジコシド類としては、モモルジコシドA、K、Lなどが報告されていることから、これらの成分についてHPLCでの分析を行い、モモルジコシド類の含有量を明らかにする。
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