研究課題/領域番号 |
23K10874
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
神谷 哲朗 岐阜薬科大学, 薬学部, 准教授 (60453057)
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研究分担者 |
原 宏和 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (30305495)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | アミノ酸代謝 / 銅 / SLC7A11 / Atox-1 / mGluR1 / Nrf2 |
研究開始時の研究の概要 |
がん組織では必須微量元素である銅の蓄積が認められている。しかし、具体的に銅がどのような細胞応答を引き起こすことでがん細胞の増殖を促すのかは明らかにされていない。本研究では、『銅』とがんの進行との関連性について、『シスチン/グルタミン酸トランスポーターSLC7A11を介したアミノ酸代謝の活性化』の観点から解析することで明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究では、ヒトトリプルネガティブ乳がん細胞株 (MDA-MB-231細胞) をモデルとして用いて、銅応答性のアミノ酸代謝リプログラミングががん進行の基盤となることを明らかにすることを最終目標とする。令和5年度では、1. 銅によるSLC7A11発現増大とアミノ酸代謝との相関性、2. SLC7A11発現と細胞内銅濃度との関連性、3. 銅シャペロンAtox-1の関与、を検証した。 1. 銅によるSLC7A11発現増大とアミノ酸代謝との相関性 銅の濃度および処理時間依存的にSLC7A11発現が増大すること、それに伴い細胞外へのグルタミン酸の排泄量増大することを見出した。一方で、細胞内のグルタチオン量の著しい増大は認められなかった。これは、銅とグルタチオンが直接反応することで、測定系に影響を及ぼしたことに由来すると考えられた。また、銅応答性のSLC7A11発現増大はがん関連マクロファージにおいても認められた。 2. SLC7A11発現と細胞内銅濃度との関連性 銅の濃度依存的に細胞内銅濃度が増加することを確認した。SLC7A11の発現増大に至る銅濃度の閾値は不明であるものの、細胞内銅キレーター (TTM) の存在下ではSLC7A11の発現増大が抑制されたことから、一定以上の銅の存在がSLC7A11の発現に関わると考えられた。 3. 銅シャペロンAtox-1の関与 銅処理によりAtox-1が核内へと移行すること、Atox-1のノックダウンによりSLC7A11の発現増大が抑制されることを見出した。また、転写因子Nrf2のノックダウンによってもSLC7A11発現増大は抑制された。また、銅の処理によSLC7A11レポーター活性の増大傾向が認められ、推定されるAtox-1結合配列の欠損によりその活性は低下傾向を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度では予定していた研究計画を効率よく行うことができた。特に、本研究の特色であるSLC7A11発現へのAtox-1の関与を確認できたことは非常に大きいと考える。Atox-1がSLC7A11の転写因子として機能しているのかは今後の課題ではあるが、その実験基盤 (レポーター遺伝子の作成、ノックダウンの検証) を確立できた。Nrf2のノックダウンによってもSLC7A11発現が抑制されたことから、Atox-1とNrf2が協力して機能している可能性が示唆された。また、原子吸光法を用いた細胞内銅濃度の測定に関しても、概ね一定の実験系を確立することができている。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度では、前年度に引き続いて銅応答性のSLC7A11発現の制御メカニズムについて、Atox-1およびNrf2の関与の観点から検証する。 ターゲット遺伝子のノックダウン細胞を樹立するとともに、レポーター活性の測定、ChIP法によるプロモーター領域へのターゲットタンパクの結合を指標に解析する。また、Atox-1は転写因子以外に細胞内銅シャペロンとしても機能するため、Atox-1による銅輸送を介した細胞内シグナル伝達経路についても解析を進める。本項目では、MEK/ERK経路およびPI3K/AKT経路を中心に解析する。 前年度までに銅により細胞外へのグルタミン酸排泄が増大することは見出したが、他のアミノ酸代謝が変化しているかは不明である。現在、大塚助教 (令和5年度着任) とともに網羅的に細胞内および培養上清におけるアミノ酸量を測定する実験系を立ち上げている。キット製品と比較し緩徐ではあるがいくつかのアミノ酸の定量に成功しているため、令和6年度以降も継続して本実験系の確立に取り組む。本成果は、銅とアミノ酸代謝リプログラミングを理解する上で重要になると考える。
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