研究課題/領域番号 |
23K10895
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
中川 勉 北海道医療大学, 薬学部, 准教授 (50722063)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | ChREBP |
研究開始時の研究の概要 |
GLP-1/GIP共受容体作動薬チルゼパチドによるインスリン抵抗性の改善効果がGLP-1受容体作動薬セマグルチドに比べて大きい原因として、GIP受容体のみが発現する脂肪組織における作用の重要性が示唆されている。脂肪組織に発現し、糖尿病患者において活性の増加が報告されているChREBPは、GIP受容体刺激により活性化されるプロテインキナーゼAにより活性が抑制されることから、チルゼパチドの標的タンパク質の1つであると考えられる。そこで本研究では、チルゼパチドの薬効発現におけるChREBPの関与とその分子メカニズムを明らかにする。
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研究実績の概要 |
グルカゴン様ペプチド(GLP-1)とグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド (GIP) の両方の受容体を刺激する糖尿病治療薬チルゼパチドは、現在広く用いられているGLP-1受容体作動薬に比べてインスリン抵抗性の改善効果が大きいことが示されているが、そのメカニズムは明らかになっていない。 Carbohydrate response element-binding protein (ChREBP) は解糖系の亢進と脂肪酸の合成に関与する酵素群を誘導する転写因子であり、ChREBPの活性を阻害することによりインスリン抵抗性の改善がみられること、GLP-1/GIP受容体刺激により活性化されるプロテインキナーゼA(PKA)によりChREBPの核移行とDNA結合が阻害されることが明らかとなっていることから、ChREBPはチルゼパチドの標的タンパク質になり得ると考えられる。 チルゼパチドによりChREBPの活性が阻害されるのか明らかにするために、ヒト肝癌由来細胞(HepG2)を用いて、ChREBPの活性化により誘導される脂肪酸合成酵素のプロモーター活性におけるチルゼパチドの影響を調べた結果、チルゼパチドはChREBPの活性を阻害することが明らかとなった。また、PKAによるリン酸化を受けないChREBPの変異体を用いて阻害のメカニズムを調べた結果、チルゼパチドは核移行に関与するリン酸化部位をアラニンに置換した変異体(Ser196Ala)の活性は野生型と同程度まで減少させたのに対して、DNA結合に関与するリン酸化部位をアラニンに置換した変異体(Thr666Ala)の活性は阻害しないことが明らかとなった。これらの結果から、チルゼパチドは、PKAの活性化を介してChREBPのThr666をリン酸化してDNA結合を阻害することにより活性を阻害することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、チルゼパチドによりChREBPの活性が阻害されること、その阻害のメカニズムとして、PKAの活性化を介してChREBPのDNA結合を阻害することを示唆できた。一方、チルゼパチドの薬効発現におけるChREBPの関与の程度に関しては明らかにすることができなかった。しかしながら、ChREBP活性の有無でチルゼパチドの影響を比較することによりChREBPの関与の程度を明らかにすることを計画しているが、ChREBP活性がない状態にするためのドミナントネガティブ体(Ser196Asp/Thr666Asp)はすでに作成しており、すぐに検討を開始することができることから、実験計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
実験計画は、おおむね順調に進展していることから、今後も実験計画にしたがって、まずはチルゼパチドの薬効発現におけるChREBPの関与の程度を明らかにする。次にGIP受容体刺激がChREBPの活性に及ぼす影響とGIP受容体刺激によるChREBP活性阻害の分子メカニズムを明らかにする。さらに、ChREBPによる分岐鎖アミノ酸(BCAA)代謝の制御がチルゼパチドの薬効発現におよぼす影響について調べるとともに、ChREBPの活性阻害による脂肪の分解において、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ I (CPT1)の活性化による脂肪酸β酸化の亢進ばかりでなく、BCAA代謝の亢進が関与しているかを明らかにする。
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