研究課題/領域番号 |
23K10978
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60010:情報学基礎論関連
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
竹田 晃人 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 准教授 (70397040)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2027年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 神経活動データ解析 / ベイズ統計学 / 大規模データ解析 |
研究開始時の研究の概要 |
神経細胞の活動情報から脳機能の解明を試みる研究は従来から盛んに行われているが、近年実験的に取得可能な神経細胞の活動情報が大規模になりつつあり、それを処理する方法の重要性が高まっている。本研究課題の申請者はベイズ統計学の観点から近年この分野の研究に取り組んできたが、研究の過程でデータ解析手法の数理基盤のさらなる整備が必要なことが判明した。 そこで情報数理の基礎的観点から神経活動データ解析手法の数理的性質を包括的に調べることで解析手法を深化させ、その成果を神経科学・脳科学および情報科学に還元することが本研究課題の目的である。
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研究実績の概要 |
本年度の主な成果は以下のとおりである。 (1) 連続値を持つ時系列信号に対する神経集団推定法:先行研究で提案されたマルコフ連鎖モンテカルロ法とディリクレ過程を融合させた神経集団推定法は、2値化された時系列信号に対するものだった。そこで研究代表者らは、カルシウムイメージングデータ等の連続値データに適用可能なように一般化した手法をこれまでの研究で提案していたが、本提案手法に関する研究成果が学術誌に掲載された。加えて本成果を国際会議でも公表し関連分野の研究者に周知した。 (2) 確率的クラスタリングの手法の収束性と収束解の性質の解明:(1)の連続値データに対するクラスタリング手法の解探索空間は先行研究の手法よりも広く、収束解の性質には未解明な点が多かった。そこでアルゴリズムを拡散過程で記述し収束解の性質を理論的に予測する手法を考案した。本成果は研究代表者が指導していた学生が博士論文として公表したが、今後学会等での公表も計画している。 (3) 機能的磁気共鳴画像法(fMRI)のデータからの特徴量抽出に関するスパース行列分解の有効性:fMRIデータから特徴量を抽出する際にスパース性を含む行列分解アルゴリズムが有効であることをこれまでの研究で指摘していたが、本研究成果をまとめた論文が学術誌に掲載された。 (4) スパース性を含む独立成分分析の新規アルゴリズムの開発:(3)に関連し、スパース性を含む独立成分分析の新たなアルゴリズムを構成し、かつ提案したアルゴリズムがfMRIデータからの特徴量抽出に有効であることを示した。本成果は学術誌に論文を投稿しており、かつ国際会議および国内学会でも公表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績概要で述べた通り、本研究課題に取り組むにあたり先行実施していた複数の研究成果が学術誌上に掲載されている。加えて、研究成果については多数の国際会議や国内学会等で公表しており、関連分野の研究者にも広く周知している。 本研究課題開始後の新たな研究成果に関しても、fMRIデータ解析手法の開発を中心に得られており、研究対象の新規開拓の観点からも大きな問題はない。 なお現在の研究実施体制として、研究代表者および学外の研究者(研究代表者の主宰研究室に以前所属していた研究者が中心)とで進めている状況である。今のところ実施体制に問題はないが、必要に応じて関連分野の他の学外研究者、および研究代表者が主宰する研究室の学生にも協力を依頼するつもりである。 以上より、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の課題に重点的に取り組む予定である。 (1) 実データに対する神経集団推定法の構築:これまでの研究で、カルシウムイメージングデータ等の連続値データに適用可能な一般化された神経集団推定法を開発しているが、実データに対する有用性がまだ確立されていない。なお実データ解析のためには、神経集団推定に用いられるベイズ推定モデルの改良が必要なことがこれまでの研究で判明している。そこで、どのような推定モデルが実データの解析に適しているか、開発手法の実データへの適用により知見を蓄えることで、最適な推定モデルの構成を試みる。 (2) 独立成分分析を始めとする行列分解アルゴリズムの性能評価法の開発:これまでの研究でスパース性を含む独立成分分析の新たなアルゴリズムを提案しているが、その性能に関する理論的評価は十分に行われていない。そこで統計力学の自由エネルギー形式を利用し、独立成分分析を始めとする行列分解アルゴリズムの性能を解析する手法の開発を試みる。 (3) 多数のハイパーパラメータに対するベイズ最適化問題の効率的な解探索法の構築:本研究課題に先行する研究として、研究代表者らはカルシウムイメージング画像中の神経細胞の位置および活動強度を推定する手法の開発に取り組んできた。この手法はカルシウムイメージング動画像から神経細胞の活動信号を高精度で抽出する際に重要となるが、多数のハイパーパラメータの推定を効率よく行う必要がある。これまでの研究ではStein変分最急降下法を用いて高速推定を行う方法を模索していたが、この方法に限らずより効率的にハイパーパラメータ推定を行う方法を探ることで、高速推定手法の開発を目指す。
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