研究課題/領域番号 |
23K10988
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60010:情報学基礎論関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
深作 亮也 九州大学, 数理学研究院, 助教 (40778924)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | グレブナー基底 / 包括的グレブナー基底系 / 因子分析モデル / 計算代数 / 数式処理 / 記号計算 / 数理最適化 / 数理統計 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、計算代数・数理最適化・数値解析における計算手法の融合を目指しており、効率的なハイブリッド厳密計算手法を設計したいと考えている。厳密な解を効率的に計算できれば、計算数学の様々な応用の場面において、正確な数理モデルの描写が常に現実的な計算規模で可能になる。しかしながら、厳密な解の計算は、近似的な解の計算に比べて、多くの計算資源 (計算時間やメモリなど) を要求しやすい傾向があり、常に正確な描写が現実的な計算規模で可能であると言うのは難しい。このような課題をハイブリッド厳密計算手法によって乗り越えるような計算数学のブレイクスルーを、本研究では目指している。
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研究実績の概要 |
初年度である2023年度は次のような研究に取り組んだ: a. 計算代数手法の因子分析モデルへの応用 b. 包括的グレブナー基底系の表現の簡素化 項目 a について:因子分析モデルは共通因子・独自因子と呼ばれる潜在変数を含むモデルであり、因子分析はデータの背後にある原因を解析するために用いられる。特に、心理学・マーケティング・生命科学・パターン認識などに応用されており、非常に重要な数理統計モデルである。しかしながら、零以下の独自分散が最尤法で推定されてしまうという、不適解問題と呼ばれる計算課題がある。本研究では、零以下の独自分散も許した上で、尤度方程式から導かれる代数方程式を、グレブナー基底や多変数多項式環における性質を用いることによって厳密に解くことで、最尤解の候補を全て計算している。そして、極大点・極小点・鞍点を取るか確認した上で、最尤解を求めている。2023年度は、本研究の成果を学会などで発表し、さらに論文を投稿することができた。 項目 b について:包括的グレブナー基底系とは、ざっくりと言えば、パラメータ付き多変数多項式イデアルに対するグレブナー基底である。また、グレブナー基底とは、ざっくりと言えば、多変数多項式イデアルにとって「性質の良い」基底である。代数方程式の解空間を多変数多項式イデアルを介して計算することができるので、グレブナー基底や包括的グレブナー基底系は非常に強力な代数計算手法である。2023年はこのように強力な代数計算手法である包括的グレブナー基底系の表現を簡略化することができ、さらに国際会議の場で発表することができた。2024年度は実パラメータ空間での性質を用いた簡略化を達成させたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では計算代数手法の効率化と応用を目指しているが、基礎研究・応用研究で成果をあげることができ、着実に研究が進んでいるものと考えている。特に、包括的グレブナー基底系の表現の簡素化は、理論面での進歩であるとともに、計算代数手法の応用面での進展も加速させるような成果であると考えている。なぜなら、包括的グレブナー基底系を計算できても、表現が簡略でないと、計算結果の解釈が難しくなるが、簡略な包括的グレブナー基底系は解釈しやすくしてくれるためである。また、応用研究についても、論文を投稿することができているので、来年度以降も代数計算の活用の場を更に広げ・深めていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
簡略化と効率化は密接に関係している。なぜなら、計算代数手法は厳密な手続きを行うのでメモリや計算時間といった計算資源を消費しやすいが、そういった計算資源を簡略な入力であれば節約できるからである。そこで、来年度以降も包括的グレブナー基底系の表現の簡素化を進めていきたい。特に、実パラメータ空間を仮定した上での簡素化を目指している。また、応用研究については現在進めている研究を着実に行っていきたいと考えている。
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