研究課題/領域番号 |
23K10994
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60020:数理情報学関連
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
河西 憲一 群馬大学, 情報学部, 准教授 (50334131)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 性能評価 / 準出生死滅過程 / 確率順序 / 上界評価 / 仮想化システム / 待ち行列理論 / 数理工学 / 仮想化技術 / システム工学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究ではAWS(Amazon Web Services)に代表されるクラウドサービスや、5Gネットワークなど、仮想化技術を基盤とした大規模システムに資する性能評価法を探求する。このようなシステムの性能を評価する数理的な手法として準出生死滅過程によるモデル化と行列解析法による解析が考えられるが、非常に多数のサーバを抱える大規模なシステムの場合、同手法では極めて大きなサイズの逆行列の計算が障壁となり現実的には定量化が難しくなる。本研究では大規模なシステムでも計算コストを抑えて平均待ち時間などの性能指標を評価可能とする手法を探求する。
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研究実績の概要 |
本研究課題の目的は,クラウドサービスや5Gネットワークなど,仮想化技術を基盤とした大規模システムに資する性能評価法を探求することである.そのようなシステムの設計および性能評価の方法論として,準出生死滅過程とよばれるマルコフ連鎖の特殊な場合である確率過程を使う手法が挙げられる.同手法では,いわゆる行列解析法という数値計算アルゴリズムを使い,数値的にせよ理論的には厳密となる性能評価指標を算出する.しかしながら,本研究課題で想定するシステムのように,多数の仮想マシンを必要とする大規模なシステムの場合,準出生死滅過程によるモデル化ではその状態空間を構成するシステムの状態数が非常に多くなることがあり,結果として行列解析法では性能指標を得ることが実質的に困難になる.そこで本研究課題では,厳密な性能評価指標を算出するのではなく,性能評価指標の上界を与える方法を探求する. 本研究課題の開始1年目の検討により,確率順序の意味で上界となり,かつ数値計算コストを大幅に削減して評価可能となる定常分布を与える準出生死滅過程を理論的に導出することができた.さらに同成果を報告者等による先行研究を含む他の方法と比較するため,定常分布と性能評価指標を数値的に算出する数値計算プログラムを実装した.数値計算プログラムを用いて様々な条件で数値実験を実行し,今回得られた手法が優位になる条件を明らかにするべく検証を進めた.その結果,先行研究での手法に比べて概ねより緊密な性能評価指標を算出し得ることが判明した.しかしながら,一部の性能評価指標については真のモデルに比べて大幅な上界を与えることも判明し,新たに取り組むべき課題を見出すこともできた.以上のような研究成果を国際会議で1件,国内研究会で1件発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の1年目の課題は,報告者等の先行研究での手法を改良し,より緊密な上界を与える準出生死滅過程を設計することである.当初計画のとおり,性能評価指標の上界を評価する準出生死滅過程を理論的に設計することができた.さらに,理論的な結果に基づいて,性能評価指標を算出する数値計算プログラムを実装した.数値計算プログラムを使い,モデルを規定する様々なパラメータでの数値実験を実行し,先行研究の手法と比較して改良手法が優位になるパラメータの適用範囲を把握するべく改良手法を検証した.その結果,先行研究での手法に比べて概ねより緊密な性能評価指標を算出し得ることが判明した.しかしながら,一部の性能評価指標については真のモデルに比べて大幅な上界を与えることも判明し,新たに取り組むべき課題を見出すこともできた.以上のような研究成果を国際会議と国内研究会で発表するにまで到達したため,概ね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の2年目の課題は,性能評価指標の上界ではなく下界を与える準出生死滅過程を理論的に設計することである.1年目の研究成果を踏まえれば,上界を与えることが可能であると判断できるので,その考え方を応用して下界を与えられるように理論的な研究を推進する.具体的には状態空間に導入する半順序関係の定義を見直し,下界評価に資するように設計する.同時に,行列解析法のような計算コストを要する手法ではなく,計算コストが抑制される準出生死滅過程を設計できるように配慮する.1年目の研究過程で明らかになった新たな課題についても解決策を検討する.
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