研究課題/領域番号 |
23K11000
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60020:数理情報学関連
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
兼清 泰明 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (90217068)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | アセットマネジメント / 確率制御 / 最適制御 / 高速モンテカルロ法 / 確率測度変換 / 数理モデル / リスク |
研究開始時の研究の概要 |
アセットマネジメントを様々な実物資産に応用するための理論的枠組みを再整備し,最適マネジメントを与える解を数値的に導出するための汎用スキームの構築を行う.特に,(i)対象資産の将来に渡る不確実ダイナミクスを,その確率分布の裾野部分まで正確に記述し得るモデルの構成法と理論整備,および,(ii)現代リスク理論が提唱するリスク指標を取り入れた目標汎関数の設定と,それに基づく最適化マネジメントの導出,の2点を基軸とし,多種多様な問題に対応が可能な解法スキームを目指す.特に,確率測度変換に基づく高速シミュレーション技法の導入により,アセットマネジメント関する研究を,次世代レベルに進めることを目的とする.
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研究実績の概要 |
研究初年度であることを踏まえ,これまでの研究成果の整理と問題点の抽出を行い,リスクダイナミクスの数理モデルの具体的構成,都市機能健全度の複数災害下でのダイナミクス,都市インフラの劣化に関連して,金属材料の疲労損傷に起因する強度劣化の不規則性を記述するダイナミクスと鋼部材に対する繊維強化複合材の接着補修のダイナミクス,を行い,その拡張性についても併せて考察を行った.これらの成果から,様々な対象資産の不規則劣化特性に,本研究で想定している数理モデルが有効に活用し得ることを明らかとした.またこれらの成果については,査読付き論文3報と口頭発表3件による公表を行った. 次に,本研究での導入を目指している新しいリスク評価指標に対する高速シミュレーションによる数値推定について,基礎的な手法の構成と計算環境の整備を行った.導入したリスク評価指標はバリューアットリスク(VaR)であり,逐次近似による推定アルゴリズムに確率測度変換による高速シミュレーションスキームを搭載する手法の基本的な枠組みの構築を行った.構築したシミュレーション推定スキームの精度を確認するために,金融ポートフォリオの最適化問題への適用実験を行い,VaRにおける危険率が非常に小さくなる場合でも,提案スキームにより高速推定が可能となることを確認することができた.金融ポートフォリオの最適化に関する考察は本研究の基軸となるアセットマネジメントに立脚したリスク解析に直接応用できるものであるため,次年度には対象をさらに複雑にした動的システムに拡張し,同様のアプローチの適用可能性について検討を進めていく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究全体の前半部分にあたる令和5年度・令和6年度で予定していた研究内容のうち,シミュレーション解析を前提としたリスクダイナミクスの数理モデルの再整備,計算機上でのサンプル発生スキームの整備,アセットマネジメントを対象としたときの数値解析スキームの基本整備,特に最適化の目的指標を近年広く用いられているリスク指標に設定した場合に対応し得るような数値解析スキームに関する基礎的な考察,このような数値解析スキームに対する確率測度変換を基軸とした高速モンテカルロ法に依るシミュレーションスキームの融合,については概ね想定していた成果を得ることができた. 高速シミュレーションスキームを融合する部分の計算機への実装とそれに伴う基礎研究上の補助業務については,この用務を遂行しようと検討していた時期に研究補助を依頼する予定の大学院生が就職活動等で用務のための時間を取ることが困難であったため,研究2年目である令和6年度前半に先送りし,プログラミング作業を含めて研究補助を遂行することとしてある.このことで,前半2年部分の進捗が遅延することはなく,全体としては概ね順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
研究初年度の令和5年度で予定していた研究が概ね順調に進んだことを受けて,今後(研究2年目~最終の4年目)は,当初の予定に沿って研究を進める方針である.具体的に,2年目である令和6年度では,新たなリスク指標を目標値と設定したアセットマネジメント問題を数学的に定式化して,解法の基本方程式となるHamilton-Jacobi-Bellman方程式(HJB方程式)の導出をまず行う.次に,HJB方程式の数値解法スキームを,令和5年度の研究成果を踏まえて構築し,そこに高速モンテカルロ法によるシミュレーションスキームの組み込みを行う.高速モンテカルロ法によるシミュレーションスキームは基本的に確率測度変換に基づいて構成する重点サンプリング法を基本とし,対象アセットの将来にわたる時間変動(特に都市インフラの長期に渡る劣化現象)に対する確率モデルに対応し得るようにする.この際,将来にわたる不確実な挙動を駆動する雑音の種類としては,いわゆるレビイ過程に拡張することを想定し,確率測度変換はレビイ過程が駆動するシステムに対応し得るような変換とする.なおここでは申請者の過去の研究成果をフルに活用する予定である. 特に構成するスキームの計算機への実装作業にマンパワーが必要なため,大学院生を対象とした謝金業務を有効に活用し,令和6年度中におよそスキームの目途が立つようにすることを目標とする.
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