研究課題/領域番号 |
23K11109
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60070:情報セキュリティ関連
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
澁谷 智治 上智大学, 理工学部, 教授 (20262280)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | マルチパーティ計算 / 非対話型マルチパーティ計算 / 機械学習 / 秘匿計算 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,データを開示することなくそのデータに対する計算処理を行う「秘匿計算」を,非対話型マルチパーティー計算(NIMPC)により実現する手法について検討する. 多数の参加者が提供した機密性の高いデータに対して機械学習を行うためには,データの秘匿と参加者間の通信量の抑制とを同時に実現しつつ,参加者の追加や削除に柔軟に対応できる秘匿計算プロトコルが必要となる.特に,後者の実装により,プロトコルを初期化することなく秘匿計算を継続でき,一連の処理のコストを大きく削減できる. そこで本研究では,参加者の追加と削除に対応可能なNIMPCを実現するプロトコルの開発と,その機械学習への応用について検討する.
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研究実績の概要 |
本研究では,データを開示することなくそのデータに対する計算処理を行う「秘匿計算」を,非対話型マルチパーティー計算(non-interactive multi-party computation,NIMPC)と呼ばれるセキュリティ技術を用いて実現する手法について検討する. 多数の参加者が提供した機密性の高いデータに対して機械学習を行うためには,データの秘匿と参加者間の通信量の抑制とを同時に実現しつつ,参加者の追加や削除に柔軟に対応できるような秘匿計算プロトコルが必要となる.特に,秘匿計算プロトコルの開始後でも参加者の追加や削除が可能であれば,プロトコルを初期化することなく秘匿計算を継続できるため,秘匿計算に基づく一連の処理のコストを大きく削減できる.そこで本研究では,参加者の追加と削除に対応するNIMPCを実現するプロトコルを開発し,その機械学習への応用について検討する.今年度の主な研究成果は以下の二点である。 (1) 中国の剰余定理に基づくNIMPCの考案 NIMPCを実現する手法の一つとして, 参加者に対して相関のある乱数を配布し,その乱数に基づいて符号化されたデータを計算サーバに送信する手法が知られている. 中国の剰余定理に基づく相関を乱数生成に活用することで, 参加者の増加に対応する相関乱数の生成法と,そのNIMPCへの応用に成功した. (2) 多項式補間に基づく符号化分散計算における符号化の高速化 分散コンピューティングによって秘匿計算を行う手法であるLagrange Coded Computing (LCC)と呼ばれる符号化分散計算法において,符号化にかかる計算量を, Newton補間多項式の高速計算アルゴリズムを用いて削減する手法を開発した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NIMPCを実現する従来手法の一つに,相関乱数として線形従属なベクトルを用いるものが知られている.しかしながら,この相関乱数の生成法を用いた場合には, 参加者の増加に合わせて相関乱数を生成し続けることが出来ない.そこで令和5年度の研究計画では,参加者の増加に対応可能な相関乱数の生成手法について検討することを第1の目標としていた.ここで,中国の剰余定理を応用して相関乱数を生成すると,互いに素な自然数を生成し続けることで,所望の乱数列を生成できることを発見した. また,令和5年度の研究計画では,新たに開発した相関乱数の生成法をNIMPCに適用することを第2の目標としていた.これに対し,中国の剰余定理を応用した相関乱数を適用してNIMPCを実現することに成功した.ただし,安全性に関する証明は現時点では不十分である. また,分散コンピューティングによって秘匿計算を行う従来手法の一つである「多項式補間に基づく符号化分散計算(LCC)」における符号化の高速化に成功した.この成果は研究の当初は想定していなかったものであるが,査読付き論文として採録され公表することが出来た. このように,安全性の証明に関して一部不十分な点は残るものの当初の二つの目標は十分に達成できたこと,また,当初は想定していなかった成果も得られていることから, 「おおむね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,参加者の追加や削除に対応したNIMPCを実現するプロトコルを開発し,その機械学習への応用について検討することを目的としてる.令和5年度には,上述したように,参加者の「追加」に対応可能なNIMPCの構築を行った.これに対し令和6年度は,参加者の「削除」に対応可能なNIMPCの構築について検討する予定である. 多くのスマートフォンが接続するシステムのような,参加者の入れ替わりが頻繁に発生する状況の下でNIMPCを実現するためには,参加者の追加だけでなく削除にも柔軟に適応できなければならない.そこで,途中で退出する参加者に配布した乱数を無効にするような仕組みを検討し,参加者の削除にも対応できるNIMPCを構築することを目標にする. 今年度は,上で説明した,中国の剰余定理に基づく相関乱数からいくつかの乱数を取り除いたとき,その取り除き方と乱数の相関関係の変化の関係がどのように記述できるかについて検討する.さらに,そのようにして得られた新たな相関乱数がNIMPCに応用できるか否かについても検討を進める予定である.
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