研究課題/領域番号 |
23K11122
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60090:高性能計算関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
多田野 寛人 筑波大学, 計算科学研究センター, 助教 (50507845)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 鞍点型連立一次方程式 / 階層並列型数値解法 / ブロッククリロフ部分空間反復法 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では、2行2列のブロック係数行列をもつ鞍点型と呼ばれる連立一次方程式に対する、階層並列型数値解法の高速化、及び同方程式の解ベクトルの高精度化を行う。本数値解法の主要計算部は、複数右辺ベクトルをもつ連立一次方程式の求解である。大規模並列環境において、複数右辺連立一次方程式の求解高速化を数理面・高性能計算面の両面から追及することで、鞍点型連立一次方程式の求解速度向上を目指す。また、誤差の発生を抑制する手法を用いることにより、得られる解ベクトルの高精度化も行う。これらを実施することで、速度・精度の両面で実用に耐えうる手法を構築する。
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研究実績の概要 |
2行2列のブロック構造を有する係数行列をもつ連立一次方程式は鞍点型連立一次方程式と呼ばれ,様々な応用分野において現れる.同方程式はクリロフ部分空間反復法による求解は困難であることが知られており,我々は同方程式の反復法による求解難度を下げるため,同方程式のブロック構造を利用した数値解法を提案した.提案法の計算主要部は複数本の右辺ベクトルをもつ連立一次方程式の求解部分である.これらの右辺ベクトルは互いに独立であるため,列方向に分割することで少数の右辺ベクトルをもつ複数本の連立一次方程式に分割でき,これらの方程式も並列求解可能であることから,提案法は階層型の並列性を有する解法である.この複数右辺連立一次方程式は,鞍点型連立一次方程式よりも反復法での求解が比較的容易であるが,その求解時間と解の精度は階層並列型解法の性能に大きな影響を及ぼすため,高速・高精度に求解する必要がある. 複数右辺連立一次方程式に対する反復法として,ブロッククリロフ部分空間反復法がある.同法は右辺ベクトル数の増加に伴い反復回数が減少する傾向がある一方で,得られる解の精度が悪化する特性をもつ.ブロッククリロフ部分空間反復法の1つであるBlock GPBiCGrQ法は優れた収束性を示す一方で,高精度の解を得ることは難しい解法である.我々はGroup-wise更新と呼ばれる手法を用いることにより,同法の高精度化を図ったBlock GWGPBiCGrQ法を開発した.2023年度は特に,鞍点型連立一次方程式の階層並列型解法に対してBlock GWGPBiCGrQ法を組み込むとともにGPU実装を行い,筑波大学計算科学研究センターのスーパーコンピュータ「Cygnus」においてその性能を評価した.その結果,Block GPBiCGrQ法を適用した場合と同等の計算時間で,高精度の鞍点型連立一次方程式の解が生成可能であることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は鞍点型連立一次方程式の階層並列型解法の数理面の研究として,解法内部で現れる複数右辺連立一次方程式に対して,高精度ブロッククリロフ部分空間反復法であるBlock GWGPBiCGrQ法を組み込み,性能評価を行った.研究実績の概要でも述べた通り,同法の適用により高精度の鞍点型連立一次方程式の解が生成できることが確認されており,研究が予定通り進んでいることから「おおむね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は鞍点型連立一次方程式の階層並列型解法の更なる高精度化を図るため,高精度行列積の適用による解の精度向上に取り組む.また,並列化を行う際にMPIプロセス数が高精度行列積,及び階層並列型解法の精度に及ぼす影響についても調査・検討を行う.
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