研究課題/領域番号 |
23K11128
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60090:高性能計算関連
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
大谷 寛明 核融合科学研究所, 研究部, 准教授 (90332189)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | VR可視化 / HMD / 統合可視化 / 可視化表現法の多様化 / コードの最適化 / 可視化表現法 / 数理モデル / 微視的・巨視的現象 / プラズマシミュレーションデータ |
研究開始時の研究の概要 |
プラズマシミュレーションデータから科学的知見を創出するため、視覚的分析法や科学的可視化・情報可視化手法をその解析に適用し、粒子のような微視的情報と電磁場や流体量などの巨視的情報との相関を解析する可視化表現法や数理モデルを高度化する。多次元・多変量であるデータを扱うため、視覚・聴覚・触覚を融合したバーチャルリアリティ技術による高度可視化技術を開発する。数理モデル構築にはディープニューラルネットワークも活用する。情報描画とともに、データ分析・対話操作・視覚認知などと組み合わせ、可視化技術を中心に総合的な視覚的情報分析手法を構築する。分野によらない多種多様なデータを視るモデルや表現法へと発展させる。
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研究実績の概要 |
多次元・多変量データの視覚的分析法の研究開発として、CAVE型バーチャルリアリティ(VR)装置用に開発されたVR可視化ソフトウェアVFIVEの機能拡張を行った。VFIVEの機能拡張では、予め決められた点から流線を描けるようにした。例えば、核融合炉内ダイバータ板を出発点として流線を描くことで、ダイバータ板に接続する磁力線やプラズマの流れの起源を探ることができる。また、流線の表現法にリボンやチューブによる表現法を追加した。磁場閉じ込めプラズマでの周辺プラズマにおけるプラズマの流れに影響を与える物理量、例えば、プラズマの流れ、勾配ドリフト、湾曲ドリフトなど、様々な物理量の3次元的に複雑な構造を解析することができるようになった。さらに、Unityでレンダリングした3-DモデルとVFIVEとの融合可視化を実現した。これにはFusionSDKとGLMetaseqを使う2つの方法を用いた。VFIVEとGLMetaseq、CLCLライブラリを組み合わせることでヘッドマウントディスプレイ(HMD)での表示も可能にした。これにより、実験研究者が実際に実験装置内で見ている光景をVR空間に再現しつつ、シミュレーション結果であるプラズマの流れや磁力線の流線表示をVR空間に投影することができるため、現象のより直感的な把握ができるようになった。また、HMDでの融合可視化表示を可能にしたことで、いつでもどこでもVR可視化による解析がHMDで可能となった。 数理モデルの研究開発ではプラズマパラメータや初期条件、境界条件などシミュレーション実行条件の変化に対して、平衡解や粒子輸送がどのように変化するかを機械学習で予測できる仕組みの構築を目指している。そのためには学習データとして大規模な計算結果が必要である。そのため、既存の粒子シミュレーションコードや磁気流体力学シミュレーションコードの最適化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多次元・多変量データの視覚的分析法の研究開発では、多変量の物理量を同時にVR空間で表示してその3次元的な位置関係を解析しやすくするための可視化表現法を実現することに成功した。他方、多感覚型の情報伝達・分析手法を開発するため、視覚と聴覚に加えて、触覚を組み合わせた表現法を研究開発している。本研究課題では、(株)ミライセンスの触覚デバイスを導入予定である。このデバイスは皮膚へ特殊な刺激パターンを与えることで脳内錯覚を発生させ、触った感覚や手応え感をリアルに体感することを可能にする。これは人の触感・感触の基本要素といわれる力覚・圧覚・触覚を組み合わせることで人が感じるほとんどの触感・感触が表現できることに基づいている(ミライセンスのWebページから引用)。このデバイスは市販を意図して開発されたものでないため、デバイスのレンタルに関する条件の交渉に時間がかかってしまった。しかし、年度末に条件の交渉を終えてレンタルの契約を結ぶことができ、2024年度からこの触覚デバイスを使った研究開発を推進する予定である。 数理モデルの研究開発ではコードの最適化が概ね終了した。また、機械学習を用いた数理モデル研究として、京都大学・大阪成蹊大学との共同研究で、プラズマの形状可視化の研究に取り組んでいる。これは、磁場閉じ込めプラズマの平衡状態計算で磁場の格子点上でのデータが得られるが、その磁場データから磁力線を計算して磁力線の3次元分布からプラズマの包絡面を求める研究である。磁力線の3次元分布を確率分布としてディープニューラルネットワークでモデルを作成している。この3次元確率分布の等値面を求めることで、プラズマの包絡面を求めることを目的としている。この包絡面作成の手法をほぼ確立することができた。
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今後の研究の推進方策 |
(株)ミライセンスの触覚デバイスを用いたVR可視化研究を推進する。この研究では、ゲーム開発エンジンUnityで開発しているプラズマデータの可視化ソフトウェアと触覚デバイスを組み合わせ、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)で表示及び操作を行えるようにする予定である。プラズマデータ(例えば、温度分布)をもとに振動データへ変換して、どのような振動をさせるかの信号を触覚デバイスに送信する。この一連のプロセスには研究開発においていくつかのポイントがある。例えば、HMDの操作コントローラで指示した位置とVR空間内の位置との関係の導出法、プラズマデータから力覚・圧覚・触覚の3要素への変換を経て振動データを作成する変更方法、振動の信号を触覚デバイスに送信するための方法などである。特に物理量と力覚・圧覚・触覚の3要素への変換に関しては、どのような振動を与えれば、人間がより知覚しやすくなるかという、人間の知覚や知覚心理学に通ずる研究課題でもある。これらの技術開発には(株)ミライセンスの協力を得て推進する予定である。 数理モデルの研究開発では最適化を終えたシミュレーションコードを実行して、学習用の大量データを作成していく。また、プラズマ包絡面形成の研究で培ったノウハウを活用して、微視的物理と巨視的物理、あるいは異なる物理量感の相関を表す数理モデルの構築に取り組む。この研究では、京都大学・大阪成蹊大学の研究グループとの協力を得て推進していく。
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