研究課題/領域番号 |
23K11134
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60100:計算科学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
福田 育夫 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 客員教授 (40643185)
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研究分担者 |
森次 圭 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (80599506)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 分子動力学 / 相互作用計算 / 力学系 / 運動方程式 / サンプリング / 数値積分 |
研究開始時の研究の概要 |
分子動力学 (MD) シミュレーションは,生体高分子系や材料系等さまざまなマクロな系の分子レベルでの解析を可能にする.本研究の目的は,MD計算において,環境パラメタを分割した変数として扱うことで大規模系での状態サンプリング法の容易な実行を遂行し,かつ,環境情報入力方法の分析により高精度の相互作用計算法を開発する事である.これらの技術が,物理・化学の基礎科学分野のみならず,材料工学,環境工学,或いは薬学等を対象にする幅広い分野で容易に用いられための研究基盤の確立を目指す.
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研究実績の概要 |
分子動力学シミュレーションにおいて,大規模系での状態サンプリングの容易な実行を遂行するための研究を行っている.我々がこれまでに開発を進めてきた合成系密度力学法では,対象の物理系に環境系がカップルすることで,物理系の状態サンプリングを有利に進める.この手法では,物理系のレプリカや多数のイテレーション作業を不要とするため,これらの利点を保ちつつ,統計誤差の影響を積極的に小さくすることで,大規模系での状態サンプリング法の容易な実行を遂行する.このために,環境パラメタを独立した変数として扱い,統計誤差を極小化するサンプリング動力学の構築を行った. 分子シミュレーションにおける長距離相互作用計算において,カットオフベース(CB)の方法は,周期境界条件を用いた従来法に比べ計算速度が速く,系の全粒子数Nに比例するスケーラビリティを有するという実用的利点と,周期境界条件からくるアーティファクトを避けられるという理論的利点を持つ.もっとも,単純な打ち切り法ではエネルギー等に関する非常に大きいアーティファクトがしばしば生じるが,これはペアポテンシャル関数が十分に滑らかでないことに起因するものである. では,その滑らかさを有したカットオフベースの方法にアーティファクトがあるとすれば,その本質的原因は何かを探り,同時に解決法を構築することが,高精度計算の実現のために必要になる.このため,異なるCB法の計算手法における環境情報入力方法を分析して,手法間の関係を明らかにすることで各々の誤差の解析を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
環境パラメタのサンプリングにおける負担を解消して統計誤差を抑える状態サンプリング手法として,一変数で目的の全ての領域のサンプリングを担当するのではなく,領域を分割し,分割された各領域の中でだけ動けば良い変数を設定する方法を考案した.所望の条件を満たすベクトル場を作り,分子動力学で用いる運動方程式を構築した. CB法の一つとして我々が開発してきた零多重極子法ではカットオフ球内に人工的に生ずる高エネルギー状態を回避するために,相互作用のどれをどう除けば良いかについての指針と実行スキームを与える.この方法と,遠方の情報を間接的に取り込むCB法の関係を探る中で,特定のパラメタ値で発生する等価性が,カットオフ距離でのペア関数の微係数の零性条件から導かれる事が明らかになった.従って,次数等の多項式補助関数の性質により,補助関数が完全に決まってしまう事が分かった.さらに,誘電体論等で用いられるキャビティの概念と電荷中性条件との関係を再考察することで,自己エネルギー項の自然な導出法が明らかになった.
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今後の研究の推進方策 |
状態サンプリング法においては,その運動方程式の摩擦項についての詳細を詰めるとともに,環境パラメタの担当領域の分割と再合成に際する複数の分布の重ね合わせに関する方法を考案して検証する. 複数のCB法が密接に結びつき,特定のパラメタ値での同値性の発生する理由を探る中で,互いの共通点と差異がより明らかになり,高精度性実現に関する指針を得た.今後はこの実現を達成する関数列の候補の構築等を通して,高精度化についての考察を深めて新規手法を開発する.
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