研究課題/領域番号 |
23K11241
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61030:知能情報学関連
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
猪口 明博 関西学院大学, 工学部, 教授 (70452456)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 機械学習 / 深層学習 / グラフニューラルネットワーク / 人工知能 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の準備段階において,我々はGraph Convolutional Network(GCN)における以下のような性質を発見した.まず,各ノードがもつ特徴ベクトルは正規分布に従うと仮定し,GCN内の活性化関数は恒等関数であるとする.このとき,GCNにおいて畳み込まれた後の表現が従う分布は正規分布になる.これを,確率分布の再生性を用いて,数理的に証明した.畳み込み後の表現が従う分布に関する情報が得られたので,その性質を活用することで,多層に畳み込まれた表現を制御でき,Over-smoothingを防止できる可能性がある.本研究では,その制御法に関する手法を考案していく予定である.
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研究実績の概要 |
本研究テーマでは,深層学習法の一分野であるグラフニューラルネットワーク(GNN)を対象としている.GNNでは,入力としてグラフの構造とその各ノードの特徴ベクトルが与えられる.その出力は各ノードの表現ベクトルであり,その表現ベクトルが,下流のタスクであるノード分類,リンク予測,グラフ分類などに用いられる. 従来のGNNでは,Over-smoothingの問題があった.Over-smoothingとはGNNの層数を増加させると表現の質が低下する現象であり,その結果として下流のタスクの性能が低下する.この現象を軽減すべく,我々は確率分布の再生性という性質に着目している.本年度は,これに基づく2つの手法を開発し,学会発表等で公開した. 1つ目は,Summarize-GNNと呼ぶ手法である.あるノードvのl層目の表現ベクトルをh(v,l)と書く.h(v,l)は従来のGNNでも計算可能なものである.Summarize-GNNでは,ノードvの表現h(v)をh(v,l)の重み付き線形和,つまh(v)=w(v,1)h(v,1)+w(v,2)h(v,2)+...+w(v,l)h(v,l)とし,w(v,l)をデータから学習する手法である. 2つ目は,DeepGATと呼ぶ手法である.Graph Attention Network (GAT)はGNNの1手法であり,DeepGATはそれを拡張した手法である.各層において,ノードがどのクラスに属するかを予測する.その予測に基づいて各ノードvに対して,隣接ノードのうち,どのノードの表現を畳み込むのかを決定する. いずれの2手法も,確率分布の再生性に基づくと,層数を増やしたとき,各クラスに属するノードの表現の分散が小さくなることが,数理的に保障される.このため,分類性能の向上が望める手法であると言える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Summarize-GNN,およびDeepGATともに,研究目標としていた,深層化されたグラフニューラルネットワークにおいてOver-smoothingを軽減できていることを,幾つかのベンチマークデータで実証できた.また,その性質を確率分布の再生性とともに数理的に示すことができた.このため,本研究は,概ね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
グラフの構造的性質をベクトル形式で表現する方法として,グラフスペクトルがある.グラフスペクトルの低周波成分は,グラフ内の2頂点間の,それらの周辺頂点を含めた,結びつきの強さとして解釈可能である.このグラフスペクトルの情報をグラフニューラルネットワークに組み入れた手法の開発は現時点において,それほどない.本年度は,グラフスペクトルとグラフニューラルネットワークの関連性に着目し,Over-smoothing現象を軽減する手法の開発を目指す.
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