研究課題/領域番号 |
23K11258
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61040:ソフトコンピューティング関連
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
杉坂 純一郎 北見工業大学, 工学部, 准教授 (00599227)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 光情報処理 / 回折光学素子 / 光計測 / 人工知能 / 機械学習 / 非線形最適化 / 光コンピューティング / 多クラス分類 / パターン認識 |
研究開始時の研究の概要 |
人工知能の高性能化に伴い、電力消費量が急速に増大しており、性能を維持しつつ、電力効率を改善する技術革新が求められている。電子計算機の代わりに光を利用したAIシステムは、大量のデータを極めて低消費電力かつ高速に処理できる可能性がある。本研究では、新規デバイス「光LDAフィルタ」を用いた新アーキテクチャを確立する。本システムは複数物体を同時に認識処理可能で、物体の位置関係は結果に保持され、物体の数が増えても演算時間・消費電力は変わらない特長がある。低消費電力化により、自動車や自律行動ロボットなどへの搭載の容易になり、AIの利用範囲がさらに広がることが期待できる。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は光を用いたAIシステムの構築である。現在の人工知能は画像等の大容量のデータに対して必要な演算量が非常に多く、電子コンピュータによる演算は速度・消費電力の点から限界がある。この処理を光で行うことで、演算速度・消費電力の問題を根本的に解決するのが狙いである。 初年度は新たな光演算の中心となる光フィルタの設計方法を行った。第一に、フィルタを透過する光ができるだけ減衰しないようにフィルタを設計する方法を決定することである。フィルタを透過する光が微弱になると、演算結果をカメラ等で取得してコンピュータに送信する際にノイズ等の影響を受けて、正しい結果を取り出せなくなる。そこで、通常の(電子コンピュータ用の)人工知能学習アルゴリズムに修正を加え、フィルタを透過する光ができるだけ減衰しないようにフィルタを学習(設計)する手法を考案した。その結果、人工知能としての処理能力は落とさずに、フィルタを透過する光の強度(明るさ)を10倍以上に上昇させることができた。これは特に微弱な光信号を取り扱う場面、例えば数十ナノメートルから数百ナノメートル程度の微小物体を識別する計測・検査技術に利用できる。第二に、光による演算だけでは不足する処理能力を、電子式ニューラルネットワークによる処理で補うアルゴリズムを考案した。ここでも上記の光信号が減衰しないような学習条件も加えている。電子コンピュータの処理が必要となるが、その演算量は従来の1憶分の1以下であり、同じ処理を行う場合でも本システムの方が大幅に高速・低消費電力に処理できる。北海道大学の微細加工装置を利用した試作も開始しており、現時点では必要なサイズ・精度での加工が可能なところまで確認できている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標としていた光フィルタの設計に対し、演算能力を落とさずにフィルタ透過光を増強させるアルゴリズム、ニューラルネットワークと組み合わせて演算能力をさらに上げるアルゴリズムの考案と有効性の確認ができており、目標は達成できている。次年度へ向けて光学系シミュレータの実装や設計のための数値解析の高速化アルゴリズムの開発と実装も進めており、次年度も順調に研究を実施できる見込みである。光フィルタの試作は予定していた回数より少なくなったが、実験では想定外の位置に予期していた以上の観測しやすい像が現れる結果が出ており、この現象の解析結果によっては光学系の構成が計画したものとは変更になる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の試作した光フィルタを用いた実験では、演算結果の像が細かな干渉縞の中に現れる予定で、当初では解像度の高いカメラがなければ演算結果を取得できない予定であったが、予定していた位置とは異なる位置に、大幅に粗い干渉縞の中に演算結果が現れることを発見した。今後はまずこの像の生成原理を解明することから進める。その後、単純な図形の識別といった簡単なパターン判別問題を解くための光フィルタの設計・試作を行う。続いて文字や数字といったより複雑なパターンの判別を試みる。現在の光フィルタの設計パラメータによると、画像の複雑化に伴って光フィルタの構造が複雑になり、いずれかの段階で加工に時間がかかりすぎるようになる可能性がある。この課題に対しては、スパースモデリングを設計プロセスに導入し、光フィルタの構造を単純化する予定である。本研究の最終目標である位置によらないパターン識別のためには、レンズを用いた光学系が必要となる。初年度に実装した独自の光線追跡シミュレータを用いて、光学系の設計を行い、試作したフィルタを組み込んで実証実験を行う予定である。
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