研究課題/領域番号 |
23K11293
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61060:感性情報学関連
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研究機関 | 愛知淑徳大学 |
研究代表者 |
牧 勝弘 愛知淑徳大学, 人間情報学部, 教授 (50447033)
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研究分担者 |
饗庭 絵里子 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (40569761)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | バイオリン / 空間放射特性 / 指向性 / 熟練度 / マイクロホンアレイ / 多面体スピーカ / 演奏技能 / 音の可視化 / 音色評価 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究グループは、バイオリン演奏の熟練度が演奏音の空間放射特性に現れることを発見した。バイオリンを含む楽器の指導者がよく口にする「音を遠くに飛ばしなさい」や「楽器本来の音を鳴らしなさい」といった発言は、この空間放射特性を音色として感じとった表れである可能性が高い。そこで本研究では、演奏音の空間放射特性がその音色評価に寄与することを実証し、さらにその応用として演奏音の3D映像を用いた演奏評価・支援システムを構築することを目的とする。これにより、バイオリン演奏の熟練度が反映される音響要因の解明を学術的に進めると共に、楽器奏者と指導者に対して、客観的なデータに基づく練習法と指導法の道を切り開く。
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研究実績の概要 |
熟練度の違いにより生じるバイオリンの空間放射特性の違いを熟練度に応じたバイオリン音色の違いとして知覚できるのかを明らかにするために、42チャンネル球形スピーカにより熟練度別の空間放射特性を模擬した。バイオリンの種類に関わらず熟練者が演奏するバイオリン音には、400 Hz前後の下方向への放射指向性、1 kHz前後の正面方向への放射指向性、および3~4 kHz前後の上方向への放射指向性が強く表れることから、演奏者の周囲42ヶ所で録音した演奏音の各周波数におけるパワーバランスを変えることによって模擬的に3段階の熟練度を再現した。 次に、3D映像によるバイオリン演奏の支援を行うために、バイオリンの空間放射特性を可視化する方法について検討した。これまで、放射方向を明確化にするために、周波数ごとに42点の観測方位の中で最も低い音圧レベルを0 dBとして、そこからの差分を3D表示する方式を採用していた。しかし、この方式では演奏音の音圧レベルが低い場合であっても音が放射されているように見えることがあり、聴感上の音の強弱の感覚との齟齬が生じていた。そこで、最小音圧レベルからの差分をとった後に42方位の平均パワーを掛け合わせるという新たな可視化法を提案した。これにより、演奏支援のために放射指向性を可視化することと、聴感上の音の強弱の感覚との整合をとることの両方を実現することができた。 本課題の派生研究として、バイオリン研究のために構築した42チャンネル球状マイクロホンアレイを用いて発声の空間放射特性を調べた。その結果、800 kHz以下の低周波数成分は発声者の前方斜め下方向に放射されることや個人差が3 kHz以上に顕著に表れることが明らかとなった。音の空間分析は、バイオリン音だけでなく、発声の問題に関しても有効なアプローチ法となり得ることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題は、演奏の熟練度によって差が表れる空間放射特性とバイオリンの音色評価の関係性を実証し、空間放射特性とその3D映像を利用したバイオリン演奏の評価・支援システムを構築することを目的としている。 バイオリン演奏の熟練度によって差が表れる空間放射特性とバイオリンの音色評価の関係性の解明は概ね順調に進展している。2023年度は様々な熟練度の空間放射特性を模擬するための42チャネル球形スピーカ用の42チャンネル音源を作成することができた。 3D映像を利用したバイオリン演奏の評価・支援システムの構築についても概ね順調に進展している。2023年度はバイオリン音の空間放射特性の3D映像化のための可視化手法を新たに提案することができた。 派生研究として、本課題のバイオリン研究で構築した42チャンネル球状マイクロホンアレイを用いて発声の空間放射特性を調べた結果、バイオリン音だけでなく発声に対しても空間分析が有効であることを示すことができた。本課題が対象としているバイオリン音だけでなく歌唱における発声法についても熟練度を評価できる可能性が高くなった。
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今後の研究の推進方策 |
バイオリン演奏の熟練度によって差が表れる空間放射特性とバイオリンの音色評価の関係性を解明するために、研究計画に従い、熟練度の異なる空間放射特性を模擬した球形スピーカの音に対する音色評価を行う。具体的には、種々の空間放射特性を持つ球形スピーカ音に対してシェッフェの一対比較法により「色彩感」「奥行き感」「力強さ」「立体感」等の優劣を調べる。先ずは楽器未経験者を対象に実験を行い、空間放射特性(熟練度)による差が知覚に現れない場合には、楽器経験者を対象に実験を行う。 3D映像を利用したバイオリン演奏の評価・支援システムを構築するために、研究計画に従い、バイオリン演奏音の3D映像化と演奏音の点数化を行う。先ずバイオリン各弦の開放弦の音を可視化し、次に音階音に発展させ、最終的に演奏曲の空間放射特性の可視化を行う。点数化に関しては、熟練奏者の空間放射パタンとの差分や類似性に基づいて熟練度の点数化を行う。具体的には、低、中、高周波数域における放射指向性の強さ、および放射方向の時間揺らぎ量に着目して点数化を行う。
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