研究課題/領域番号 |
23K11308
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分62010:生命、健康および医療情報学関連
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
石本 志高 秋田県立大学, システム科学技術学部, 教授 (30391858)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | コンピュータシミュレーション / 細胞・組織・器官 / 生体情報 / データ解析 / 発生・分化 |
研究開始時の研究の概要 |
生体組織の力学情報及び動力学現象の解明は、再生医療や病理メカニズムの観点から重要である。近年、細胞レベルの力学が、細胞集団の分化・成長に重要な役割を果たすことが示唆された。他方、器官の形態形成現象を解明、再現、予言するには、器官の形態形成過程を記述する方程式系を見出すことが必要である。 本研究の目的は、高精度4D細胞形状トラッキング解析法を開発し、トラッキングに基づいた力推定法を開発し、力学パラメータの推定法を確立して学習型数理モデルの構築を行い、生体組織の動的現象を解明、再現、予言することである。具体的にはマウスやハエ上皮組織を用いて行い方程式系を見出し分化・成長メカニズムの解明をめざす。
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研究実績の概要 |
本研究は、細胞形状を高精度で定量化する4D細胞形状トラッキング解析法を開発し、4D細胞形状トラッキングに基づいた力推定法を開発し、それを発現する力学パラメータについての推定法を確立して学習型数理モデルの構築を行い、生体組織の動的現象を解明、再現、予言することを目的とする。 当該年度は上記トラッキング法の開発、力学推定法の開発、学習型数理モデル実装の準備を行い、生体組織の動的現象の一部解明に寄与した。 具体的には、2つの異なる生体組織に関するライブイメージングデータを取得、解析し、1種の生体組織に関して時系列形状情報の形態学的および生物学的解明を行い、学術論文誌1編にまとめて出版した。細胞形状の変化がその後の細胞分裂、器官・組織の3次元形態変化に深くかかわることを示し、よりロバストな3次元組織形成の新規な在り方を示したといえる。他方、ショウジョウバエの個眼組織といった複数種類の細胞に分化していく生体組織では、微細なトポロジー変化が頻繁におこり、ライブイメージングデータの解像度に関する制限も加わって、既存の学習モデルによる援用では形状抽出自体に困難があることを確認し、これらに関する処方箋を考案した。また微小なトポロジー変化を頻繁に伴う組織では三細胞頂点が頻繁に入れ替わり、細胞境界移動がやや不規則に連なる。これらの状況に対応可能な形で4D細胞形状トラッキング解析法をアップデートし、一部トラッキングに成功した。力学推定法に関しては協力研究者と議論を進め、実装可能な計算機システムの構築を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヘルシンキ大学の新見修氏(協力研究者)らとともに、キイロショウジョウバエ蛹期の翅器官形態形成中の3次元形成の様子を共焦点顕微鏡によるライブイメージングでデータ取得し、顕微鏡画像から、湾曲した細胞境界を含む細胞形状情報を抽出し、各細胞が突起状のものを単層上皮組織間に伸ばしている様を生物学的および形態学的に解析した。その結果から細胞形状の変化がその後の細胞分裂、器官・組織の3次元形態変化に深くかかわることを示し、よりロバストな3次元組織形成の新規な在り方を示した。また、我々が開発中の応力推定法によって分裂細胞の力学的前兆マーカーを見出した. 金沢大学の佐藤純氏らから、キイロショウジョウバエ蛹期の個眼形態形成中の共焦点顕微鏡ライブイメージングデータを提供していただき、顕微鏡画像から、湾曲した細胞境界を含む細胞形状情報を抽出した。細胞境界の抽出に、既存の機械学習モデル(EpySeg)に新規データを学習させて適用し若干の精度向上をみたが、そのままの形で開発中の4D細胞形状トラッキングプログラムの適用とはいかず、初期画像処理法を改良した。また、プログラム自身の改良を行い、トラッキングの混線エラーの低減に成功した。 応力推定法の一般化に関してPhilippe Marcq氏(協力研究者)、石原秀至氏(東京大)らと議論を進め、プログラム実装の準備を整えた。また、機械学習用計算機システムを整備した これらの研究成果を学術論文および複数の研究会にて発表し,関連研究者らと議論を重ねた.
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今後の研究の推進方策 |
細胞形状抽出に用いられている学習モデルの刷新を行い初期画像処理の精度向上をはかる。昨年度に改善したトラッキングアルゴリズムは2種組織に適用可能であるが、より広範な運動にも適用できるよう学習モデルを導入してよりロバストなトラッキング解析法に昇華する。また、多くの組織は3D形状を保ちつつ変形するため、現状では2次元に限定しているトラッキングを3次元版としてアップデートする。同時に機械学習と組み合わせた力学推定法の計算機実装を行い、推定精度の検証を行うとともに、シミュレーションモデルパラメータとのデータ同化を通じて力学情報の動態解析を行う。これらを、形態変化する組織を表現する力学パラメータの一般化および方程式系探索に供するものとする。 具体的にはハエ上皮組織のデータ化および解析をさらに進める過程で力学推定まで行い、マウス嗅上皮組織についても、円筒状細胞を含む特異なパターニングにも適用可能な解析法およびそのシミュレーションモデルの開発も視野に入れる。
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