研究課題/領域番号 |
23K11351
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分62030:学習支援システム関連
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
布引 雅之 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (50244687)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | 技能伝承 / きさげ / 熟練度の見える化 / 加工力振幅スペクトル / モーションキャプチャ / 強化学習 / 技能伝承支援システム / 加工力波形解析 / Fuzzy-ART |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は工具刃先を研削加工面に押しつけて微少量ずつ削り、より高精度に仕上げる「きさげ」作業を対象として技能伝承支援システムの構築を目指す。きさげ面性状ときさげ中の加工力波形や身体各部の動きを関連づけることできさげ技能の定量化を行う。また技能伝承を強化学習の一つと捉え、学習中に遭遇する状況をFuzzy-ART(適応共鳴理論)で分類する手法を確立し、任意の状態(身体の動かし方)においてどの方向に行動を修正すれば良いかという技能向上のコツの獲得を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、きさげ中に各作業者がどれほど巧みに工具刃先を制御できているのかをその場で定量的に提示し、作業者に自身の熟練度を実感させることを目標とし、きさげ時に工作物に加わる加工力、作業者の身体各部の動作ならびに作成されたきさげ痕の形状を計測し、加工力波形ならびに身体各部の動きときさげ痕形状を関連づけることで技能向上のコツを獲得することを目指している。また、技能向上プロセスは、報酬信号を最大化するためにどのように行動すべきかを学習する「強化学習」プロセスと類似していると考えており、転移学習のように学習過程から一般化できる知識を抽出できるならば、技能向上のコツも獲得できるようになると考えた。そこで、強化学習における行動と状態に相当する非熟練者の技能やきさげ面の性状を「見える化(定量化)」する必要がある。本年度は、学習者が現場おいて口頭で伝承されているきさげ技能やコツを「見える化」することを試みた。本研究に協力頂いた企業の作業現場では、きさげが上手くなるためには、まず①刃先を回転させるように滑らかにきさげ動作を行うことと、次に②工具を動かす正確性を上げることが技能向上のコツであり、それによって③良好なきさげ痕が形成できるようになるとされていた。本研究では①きさげ動作がについてはきさげ時の加工力波形をフーリエ変換し、きさげのテンポとして定量化できることを確認した。②きさげ動作の正確性を定量化するために工具刃先の軌跡ならびに身体各部の軌跡を解析してきさげ痕の形状と関連深い物理量を複数個抽出した。③きさげ痕の良否を評価するために、きさげの侵入側のきさげ痕テーパと離脱側のきさげ痕テーパによって定量化できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね、順調に進んでいる。ただし、きさげ痕形状を測定している粗さ計の出力装置が故障し、実験を進めるために新たに粗さ計を購入する必要が生じたので、設備備品費の執行は計画通りとはならなかったものの、必要な計測は現有機器で問題なく実行できた。特に、当初はモーションキャプチャにおいて死角を無くすことを目的にもう1台購入する予定であったが、カメラの設置位置など実験環境を工夫することで死角を無くすことができたため、実験に支障は生じなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度も、昨年度のデータ収集に協力して頂いたきさげ技能者に依頼してデータを測定し、測定データを増やし、きさげ技能の見える化を進める予定である。特に昨年新入社員であった方のデータを継続的に測定することで、技能向上過程の見える化を試みる。 また、強化学習結果から知識を一般化して抽出する一つの方法として「似た状況においては似た行動をすれば良い」という考えのもとに強化学習中に遭遇する状況をFuzzy-ART(適応共鳴理論) を用いてクラスタリングするプログラムをC言語を用いて作成する。ただし、対象とする問題を「迷路探索を行う強化学習」とする。これは、迷路探索での最適解の探索は、技能伝承における最適な動作パターンの探索と対応し、最適解への最短ルートの発見は、最適な技能習得法の発見と対応していると考えたためである。技能伝承では、人によって最適動作が異なるため、教師あり学習ではなく強化学習がモデルとしてふさわしいと考えた。作業者の体格はそれぞれ異なるものの、基本的構造が同じで関節の可動域も有限、かつきさげに必要な動作も有限であるため、迷路の形状と大きさはエージェンにとって既知であるものの、迷路の構造やスタートやゴールが異なる迷路を設定する。一つの迷路の踏破における学習結果から、構造の異なる別の迷路の踏破に利用できる規則の抽出を試みる。
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