研究課題/領域番号 |
23K11377
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分62030:学習支援システム関連
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研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
森本 正志 愛知工業大学, 情報科学部, 教授 (60632198)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 指文字 / 倣い学習 / 形状分類 / 動作分類 / 間違い箇所検出 / フィードバック / 学習支援 / Webアプリケーション / 手話 / 動作認識 / 理由説明 / 障害者福祉 |
研究開始時の研究の概要 |
聴覚障害者と豊かなコミュニケーションを行うためには、健聴者も手話を利用できることが望ましい。しかし手話の自主学習では、手話の身体動作を正しく模倣できているかどうかを自分で確認することが難しい。
そこで本研究は手話の一種である指文字を対象として、模倣した指文字の正しさをカメラ映像から複数認識技術で最適判定する指文字認識選択手法と、模倣が間違っている場合にはその箇所と理由説明を行う倣い学習支援手法を開発する。
また、実際に繰り返し学習できる自主学習支援システムを作成・評価することで、手話に不慣れな多くの健聴者が簡単・効果的に自主学習する機会を提供可能とする。
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研究実績の概要 |
本研究は効果的な手話自主学習機能を実現するための手法開発を目的とする。手話自主学習は身体動作を模倣する倣い学習であり、その正しさを判定する認識手法と間違った模倣時の間違い箇所検出や理由説明を可能とする倣い学習支援手法が必要となる。研究期間中は「指文字」を対象言語としている。 まず、従来研究におけるモーションセンサを用いた静止指文字認識手法を改良し、Google MediaPipeライブラリに基づくWebカメラを用いた認識手法を開発した。掌や指の形状を特徴量として検出し、その組み合わせルールに基づく形状分類により認識を行う。8000枚強の画像に対し平均正解率は90%となり有効性を示す一方で、一部の静止指文字における課題も判明している。 次に本手法をベースとして、動きを伴う指文字に対する認識手法を開発した。掌や指先の移動ベクトルをWebカメラ映像から取得し、動作開始時の手指形状および動作分類により認識を行う。平均正解率は40%となり、特に動作分類に関する改良の必要性が判明した。 また、間違った模倣時の間違い箇所検出に基づく学習支援手法を開発した。指文字を間違えた場合、掌の向き・指の折れ曲がりにおける間違い箇所を推定し、その情報を利用者にフィードバックすることで正しい模倣を促す。被験者10名による10種の指文字学習評価実験において、正解までの平均所要時間が90秒から76秒に短縮された。今後の課題は間違い箇所検出の拡張・インタフェース改良が挙げられる。 これらの手法に基づき、静止指文字の学習支援Webアプリケーションを開発した。また、利用者の習熟度に応じた出題機能やゲーム機能開発、モバイル対応を行った。被験者10名の評価実験により、利用反復性や学習可能性に関して高い評価が得られた。研究進捗に応じた機能追加・習得度測定機能実装、ユーザビリティ向上が今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画である、1.構造化に基づく指文字認識、2.間違い箇所検出に基づく倣い学習支援、3.学習支援アプリ作成、に関して、それぞれ開発・評価を実施した。1は研究着手の順序を入れ替えることでおおむね順調に、2は1の影響でやや遅れて、逆に3は当初の計画以上に進展しており、総体としてはおおむね順調である。 1に関しては、手指形状からの構造化について従来研究の知見に基づき開発を進め、高い平均正解率を得る静止指文字認識手法開発に至っている。一方、構造化が困難な一部指文字に対しては手指パターン全体に基づく認識手法を開発する予定であったが、実施に至っていない。これは深層学習適用を前提とするために、大量のデータ撮影が必要となるからである。そこで、2年目実施予定であった動きを伴う指文字認識手法を先行着手した。並行してデータ撮影を進めた結果、深層学習手法開発への準備は整っている。 2に関しても1と同様に、構造化に基づく学習支援手法の開発は実施できている。一方でパターン全体に基づく認識における間違い箇所検出・理由説明の手法検討は、認識手法開発と並行して実施予定のため未着手となっており、最も遅れが生じている。 3に関しては、当初はPCアプリケーションを先行して開発する予定であったが、利用者の導入障壁を勘案して最初からWebアプリケーションとしての開発を進めた。利用者の習熟度に応じた指文字問題出題機能・Webカメラを用いた正誤判定機能・学習結果評価機能に加え、カメラを用いずに学習可能とするゲーム機能やモバイルデバイス対応を行い、評価実験により学習支援アプリとしての有効性を確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は引き続き研究計画に則り、これまでの評価内容をベースに、まず1.手指パターン全体に基づく認識手法検討を開始する。具体的には、これまでの手法により得られた手指の構造情報を入力とする方法と、手指の領域画像そのものを入力として用いる方法の2つを想定する。また、まずは畳み込みニューラルネットワーク(CNN)による深層学習方法を想定し、これらによる認識手法開発および性能比較を行う。これまでに準備できた撮影データを用いて開発・評価を開始するとともに、随時データ撮影・登録を行うことでデータ拡充を進め、深層学習手法における性能向上を図る。また、動きを伴う指文字認識手法に関しては、動作分類手法の改良に取り組むことで性能向上を図る。 2.間違い箇所検出に基づく倣い学習支援手法に関しては、間違い箇所検出の拡張・インタフェース改良を行う。そして上記認識手法の結果が得られたところで、XAI手法による判断根拠(ヒートマップ)を算出し、正解指文字と間違い指文字におけるヒートマップとの比較を行うことで、間違い箇所指摘が可能となるか検討を進める。 3.学習支援Webアプリケーションに関しては、動きを伴う指文字認識機能の組み込みから着手し、習得度測定機能実装およびユーザビリティ向上に取り組む。 総体としては2の研究項目を推進するために、まず1の早期成果創出を図る。
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