研究課題/領域番号 |
23K11385
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分62040:エンタテインメントおよびゲーム情報学関連
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
水口 充 京都産業大学, 情報理工学部, 教授 (60415859)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 情動制御 / 温冷覚呈示 / エンタテインメント |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では温冷覚呈示による情動制御に関する研究を行う。身体的な変化の知覚が情動となるというソマティック説、あるいは中核的関係主題は身体的反応を通じて評価されるとする身体的評価説に基づけば、温冷覚の呈示により体験者の興奮状態や安静状態を引き起こし、コンテンツ本体と連動することで様々な情動の誘発を支援できると予想する。そこで、温冷覚呈示デバイスの作成、コンテンツとの連携方法の模索、有効性と制約の検証を行う。
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研究実績の概要 |
ビデオゲームにおけるエンタテインメント性に対する振動機能の寄与について研究成果をまとめエンタテインメントコンピューティングシンポジウム2023の特選セッション(査読あり)に投稿し採録された。この研究成果は、本研究課題が対象としている温冷覚呈示とは異なる刺激を扱ったものであるが本研究課題の根幹となる表象、すなわち外界からの刺激によって想起される心的内容が情動に影響を及ぼすことを論じたものであり、本研究課題の理論的背景を整理した意義がある。本論文は査読結果を踏まえて修正を加え情報処理学会論文誌特集号に投稿中である。 本年度に主に実施する計画であった温冷感呈示デバイスの作成について、ゲームコントローラ型のデバイスを制作した。市販のペルチェコントローラを使用し、PCのソフトウェアからリアルタイムに温度制御可能な温度提示デバイスを作成し、市販のゲームパッドと組み合わせることで実使用に耐えるものとした。 温冷感呈示デバイスと連動するコンテンツについては、実験用ゲームとしていわゆるイライラ棒ゲームを作成し、コース中のセクションごとの難易度や、残り時間に応じて呈示温度を変化させるようにした。併せて技術検証のために、ビデオゲーム映像をカメラで認識しゲーム内世界の気温に応じて呈示温度を変化させるデモを実装した。このデバイスおよびコンテンツについてインタラクション2024シンポジウムにてデモ発表し、プレミアム発表(PC委員による評点が高い発表)として認定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
温冷覚呈示デバイスについて、当初の計画で予定していたゲームコントローラを作成した。比較的安価(一式で5万円程度)で自作ソフトウェアからリアルタイムに温度制御可能な市販のペルチェコントローラを採用した。また、市販のゲームコントローラに外付けする構造とすることで、予定していたよりも高性能で実用に十分耐えうるものとすることができた。 コンテンツについては、当初の計画通り独自開発のゲームを作成した。効果が表れやすそうな題材を検討し、焦ることを主に扱うゲーム内容とした。並行して、市販ゲームの画面をカメラで撮影・認識し状況に合わせて温冷覚呈示するデモを実装した。これらの開発を通じて温度制御のノウハウを蓄積することができた。また作成したゲームのゲームバランスの調整やプレイログの記録機能等、定量的な実験に使用するための準備を行った。 有効性の検証については、別途ホラー要素のあるゲームを開発し冷感呈示を行った際に緊張感が増す可能性を定性的に調査した。定量的評価については実験の準備は整っているが未着手である。 別途、本研究の背景となったエンタテインメント性と表象について定量的な実験結果に基づき考察をまとめ発表することができた。 以上まとめると、温冷覚呈示デバイスおよびコンテンツ作成については当初計画より進めることができ、有効性の検証はやや遅れている。一方で、本研究の基礎となる議論を整理できた。このように全体としては概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、温冷覚呈示デバイスの開発、コンテンツ作成、有効性の検証の3項目を進める。 温冷感呈示デバイスに関しては、目標とする数度程度の温度変化であれば十分に高速かつ安定して制御できるものが作成できたので、当初計画していたペルチェ素子以外の方式のデバイスの試作は除外し、必要性が生じたら再検討したい。一方で、指先への温冷覚呈示は持ち方や指先の感覚などの個人差や、室温などの外的要因の影響が大きいといった問題点が明らかになった。そこでこれらの影響が少ないと予想される首掛け型の温冷覚呈示デバイスを試作する。また、ゲームコントローラ型デバイスについて温度提示部位などの改良を検討する。 コンテンツについては、前年度開発したゲームは焦りを扱った内容であるが、これ以外の様々な内容と温冷覚呈示の関係を検討したい。例えば興奮感や恐怖感などを想定している。 有効性の検証については、前年度作成したゲームを使って定量的な実験を行う。これまでの予備実験では温冷覚呈示の効果について差異が出にくいことが予想される。アンケートやインタビューに加えて、プレイ中の反応、ゲームのプレイログ、心拍などの生理的反応などを総合的に評価する予定である。
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