研究課題/領域番号 |
23K11403
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63010:環境動態解析関連
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
万田 敦昌 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (00343343)
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研究分担者 |
Zhao Ning (趙寧) 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(大気海洋相互作用研究センター), 研究員 (10823130)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 豪雨 / 水蒸気輸送 / 蒸発量 / 集中豪雨 / 海面水温 / 蒸発 / 気候変化 / 梅雨前線帯 |
研究開始時の研究の概要 |
九州地方は近年毎年のように豪雨に見舞われ, その原因究明が急務となっている。九州における極端に強い対流に伴う豪雨において, 熱帯から流入する水蒸気量の増加よりも日本近海の昇温に伴う蒸発の強化の方が重要となる場合があることが示唆されている。海面からの蒸発量は海面水温に強く規定されることを踏まえ, 本研究では, ① 海水温変化が蒸発量の長期変化傾向に及ぼす影響, ②蒸発量の変化が水蒸気輸送に及ぼす影響, ③ 水蒸気輸送の変化が降水システムに及ぼす影響, ④ 将来変化の評価の4つのテーマを調査することで「近年急速に温暖化している日本近海が九州地方の豪雨に及ぼす影響の解明」という目的を達成する。
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研究実績の概要 |
最近更新された海面熱フラックスデータ (J-OFURO3)を用いて,海面における蒸発量の長期変化傾向を調査した。本研究で重要となる日本近海 (西太平洋,東シナ海,南シナ海,日本海)では,以下の特徴があることが明らかとなった。冬季は日本海を中心とした比較的高緯度の海域で蒸発は強化される傾向にある。春季は亜熱帯から亜寒帯まで広い範囲で蒸発強化の傾向にある。特に黒潮周辺での蒸発強化が顕著である。夏季は亜熱帯域で蒸発が強化される。秋季の蒸発は減少傾向にある。 現地観測結果と大気客観解析データを併用することで,東シナ海上で発生した豪雨に関する水蒸気輸送過程を調査した。調査対象とした豪雨発生の際には,海面付近の低高度を輸送される太平洋高気圧外縁に沿ったほぼ飽和した気流と,高度2km程度の高度において南シナ海から西太平洋に渡る広い領域を起源にもつ湿潤気流の存在が重要であることが明らかとなった。後者の高度2km程度における湿潤気流は,豪雨発生の数時間前から豪雨発生域の上空を湿潤化させることで,豪雨の維持に重要な役割をしていることが明らかとなった。 東シナ海の梅雨明け後の海面水温上昇が,2021年8月中旬に九州地方で発生した大雨へ及ぼす影響を調査することを目的として,領域気象モデルを用いた再現実験と7月上旬の海面水温を気候量に置き換えた感度実験の2種類の数値シミュレーションを行った。再現実験では感度実験よりも九州地方を通過した複数の気象擾乱(メソ低気圧等)がより発達する傾向が見られ,九州地方における3日間平均降水量は感度実験より約20%増加した。海面水温上昇によって降水域の風上側で不安定性が強化されるとは限らず,低気圧強化に伴う水蒸気輸送量の増加が降水強化の主因となるケースが存在することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に沿って衛星観測データを用いて蒸発量の長期変化傾向の解析を実施した。研究実績の概要では分量の制約から記さなかったが,2種類の大気再解析データに関しても同様の解析を実施し,さらに蒸発量変化の要因分析も完了している。水蒸気輸送過程についても計画に沿った形で実施し,豪雨発生時の水蒸気の起源について明らかにすることができた。今回行った水蒸気輸送過程の解析では独自に数値シミュレーションを行わず,現地観測結果を同化した客観解析データを使用した点のみ研究計画と異なるが,このことによってむしろ解析に使用したデータの信頼性は向上した。海面水温上昇が豪雨に及ぼす影響を調べる数値シミュレーションも計画に沿って実施し,水温上昇が梅雨期に特徴的なメソ低気圧などの気象擾乱を介して降水を強化する過程を詳細に調べた。
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今後の研究の推進方策 |
アメダスの全国展開がほぼ完了するとともに, 衛星による海面水温観測の現業運用が始まった1980年以降で顕著な降水量を記録した事例を選択し, 分担者と共同で各事例について領域気象モデルを用いた豪雨発生時の水循環のシミュレーションを行う。また,豪雨発生前後の梅雨前線帯周辺の大気環境場および黄海・東シナ海周辺の詳細な海洋構造をデータ解析・シミュレーションおよびデータ同化を用いて調査する。このシミュレーション結果に関して水収支解析を行うことで, 豪雨発生時の水循環を調査する。シミュレーションにおける降水量の再現性が良好な事例を抽出し,降水・蒸発過程を考慮した後方流跡線解析を行い, 豪雨の原因となった水蒸気の起源を明らかにする。また,水蒸気の輸送経路と気象擾乱の関係を調査する。さらに,日本周辺の各海域における蒸発が大気境界層の水蒸気変化に及ぼす寄与率を算出し,各海域における重要性を評価する。 領域気象モデルによる豪雨のシミュレーションを行い, 水蒸気分布の時空間変化が豪雨をもたらす降水システムに及ぼす影響を明らかにする。雲・降水分布,気温・気圧・風速場の時空間分布の変化を明らかにするとともに, 静的エネルギー収支解析, 水蒸気収支解析, 後方流跡線解析を行うことで, 水蒸気分布の変化にともなう降水量や降水システムの変化とその要因を解明する。
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