研究課題/領域番号 |
23K11406
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63010:環境動態解析関連
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
安元 純 琉球大学, 農学部, 助教 (70432870)
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研究分担者 |
安元 剛 北里大学, 海洋生命科学部, 講師 (00448200)
飯島 真理子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究員 (20915483)
新城 竜一 総合地球環境学研究所, 研究部, 教授 (30244289)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 陸域負荷指標 / 蓄積リン / 石灰質堆積物 / 島嶼特有の水循環 / 陸海相互作用 / 蓄積型リン / 許容可能な陸域由来のリン酸塩負荷量 / サンゴの生息環境 |
研究開始時の研究の概要 |
世界規模のサンゴの減少が危惧されて久しいがその対策は進んでいない。これまでの研究で,サンゴ礁島嶼地域においては,陸域から地下水などを経由して海域に流出するリン酸塩が海底の底質に蓄積しサンゴの石灰化を強く阻害していることが分かった。 本研究では,自然再生の重要区域に指定されている石西礁湖などを対象に,1)サンゴ稚ポリプ石灰化機構の分子レベルでの検証,2)サンゴ礁海域における蓄積型リン酸塩の起源推定と動態解析,3)蓄積型リンと陸域由来のリン酸塩負荷量の関係解明の3項目を主に実施する。さらに,4)サンゴの生息に許容可能な陸域由来のリン酸塩負荷量を決定する。
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研究実績の概要 |
これまでの研究成果によりサンゴ礁において陸域由来のリン酸塩が石灰質堆積物に蓄積することが確認された。我々はこの海底に蓄積されたリン酸塩を、新たな陸域負荷指標として定義し、サンゴ礁生態系を評価するための閾値として試行している。石垣島と西表島の間に位置する石西礁湖では、環境省のサンゴ群集モニタリングプロジェクトが進行中である。
海底堆積物の採取は、2021年9月、2022年12月、および2023年9月の3回実施された。石西礁湖の31か所の固定ポイントで堆積物(n=3)を採取し、凍結後に研究室に輸送した。乾燥および篩分け後、粒径0.5-1 mmの堆積物6 gと濾過した海水15 mlを50 mlチューブに加え、30°Cで72時間浸漬させた。遠心分離後、上澄み液を濾過し、リン酸塩濃度を比色法で測定した。堆積物1グラムあたりのPO4-Pの重量を蓄積リン酸塩値として計算した。この蓄積リン酸塩値と、モニタリング調査から得られたサンゴの属特異的密度データ(成体、幼体サンゴ)、白化サンゴの割合、および主要な藻類の被覆率との関係をピアソン相関を用いて検討した。
31か所の固定ポイントにおいて年次変動は顕著ではなかった。竹富島の南西および南東のポイントで高い蓄積リン酸塩が見られた。同様に、黒島の東側のポイントでも毎年高い値が観察された。一方、蓄積リン酸塩値が低いポイントは礁外に見られた。2022年には、蓄積リン酸塩とサンゴの7属の被覆率との間に有意な負の相関が見られた。幼体サンゴでは、3属のサンゴにおいて有意な負の相関が見られ、正の相関は見られなかった。非白化サンゴおよびホンダワラ属との間には有意な正の相関が観察された。黒島の沿岸では、3年間ともに南東で高い蓄積リン酸塩値が一貫して見られた。黒島は畜産業が盛んな島であり、地下水中のリン酸塩濃度も高く、畜産廃棄物などの影響が懸念される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
陸域負荷の指標として試行している海底堆積物に蓄積したリン酸塩とサンゴの白化率との間に負の相関関係が確認された。これは新しい知見で、今後サンゴ礁生態系の保全に向けた取り組みに大きな一歩となるものである。
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今後の研究の推進方策 |
現在、並行して、陸域の3次元水・物質循環シミュレーションモデルを構築してる。本シミュレーションモデルにより推定される各流域における陸域からのリン酸塩負荷量と蓄積リンの閾値から、許容可能な陸域負荷量を推定する手法開発を進める。
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