研究課題/領域番号 |
23K11408
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63010:環境動態解析関連
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
松本 淳 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (70402394)
|
研究分担者 |
加藤 俊吾 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 准教授 (20381452)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
|
キーワード | 揮発性有機化合物 / 植物由来 / 放出特性 / 温度依存性 / 光量依存性 / オゾン反応性 / 日変化 / 未測定成分 / 自然発生源 / 植物 / 大気化学反応 |
研究開始時の研究の概要 |
光化学オキシダントなどの大気汚染問題において、人為発生源の効果的な対策には、自然発生源の把握が前提となる。揮発性有機化合物VOCsは、樹木から放出される生物起源VOCs(BVOCs)が注目されるが、多様な成分の濃度と反応特性を個別成分分析により網羅するのは困難である。代表者はオゾン反応性RO3としてBVOCsを包括測定する汎用的な装置を構築してきた。本研究では、枝エンクロージャーBEと組み合わせて植物放出BVOCsの挙動把握事例を蓄積し、未測定成分の挙動を解明して大気化学的な知見を得ることで、将来の効果的な大気汚染対策につながる第一歩を踏み出すことを目指す。
|
研究実績の概要 |
本研究では、実際の樹木の BVOCs 放出挙動 (温度や光量への依存性、日変化、樹種による違い等) をオゾン反応性 RO3 として把握し、近い将来に森林でのBVOCs 挙動を検証することを目指す。そのために、(A) 汎用BE/RO3 による実地でのコナラ放出 BVOCs 測定事例の長期的な蓄積、(B) 多様な樹種に関する汎用 BE/RO3 測定事例の蓄積、(C) 汎用 BE/RO3 測定に基づく未測定成分の放出特性把握と森林大気 RO3 挙動の検証、の各項目を実施する。今年度は、(A)として屋上に設置したコナラ苗に枝エンクロージャーBEを適用して得た植物放出試料の RO3 測定事例を、夏季を中心に46日間にわたって蓄積し、BVOCs 放出特性の解析を進めた。特に、顕著な好天日に実施したキャニスター捕集/GC法による個別VOC成分濃度測定結果を得た2日分を詳細に解析した結果、RO3 実測値の日変化は G93 モデルと定性的に整合し、植物放出 BVOCs の温度・光量依存性を妥当に反映した。また、RO3測定値、個別RO3の総和、その差(個別未測定成分の寄与)、の三つとも「日中に高く朝夕に低い」日変化を示した。今回、同じ日の日中に複数回のキャニスター捕集を実施した2日分につき、RO3連続測定結果に基づいて、(C)のうち未測定成分の放出の日変化を初めて検証できた。また、(A) については秋や冬の測定も試みたが、温度が低く葉が少なかったため、放出特性量の温度依存性等について有意な結果を得られなかった。(B)として、夏季にケヤキ苗の測定も試みたが、苗が小さく葉が少なかったためか、放出特性量の温度依存性等について有意な結果を得られなかった。汎用BE/RO3 による放出測定はその性能上、高温の夏季に葉が繁茂した個体を測定するには有効だが、それ以外への適用は難しい、という現状を確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に実施予定としていた、「(A) 汎用BE/RO3 による実地でのコナラ放出 BVOCs 測定事例の長期的な蓄積」としての「夏と秋と冬のコナラ苗の測定」、および「(B) 多様な樹種に関する汎用 BE/RO3 測定事例の蓄積」としての「夏のケヤキ苗の測定」、は、計画通りに実施できたことから、「おおむね順調に進展している」と言える。初年度においてすでに、(C)のうち未測定成分の放出の日変化パターンの検証を試みた点は、当初計画以上である。しかし同時に、屋上に苗を設置し気温などを自然任せにする現行の方法では、当日早朝までに状況を判断したうえで日中複数回のキャニスター捕集を実施する(決め打ちする)必要があるなどのために、未測定成分の日変化パターンを効果的・意図的・積極的に蓄積するのが難しいことが、測定事例の蓄積を通してわかってきた。また、(A)での秋と冬のコナラ苗および(B)でのケヤキ苗の測定では、十分なVOCs放出量を得られず、汎用RO3計では温度依存性などを有意に捕捉できなかった点も、留意する必要がある。以上のことから、標記区分の進捗状況とした。なお、効果的な日変化パターン事例蓄積のためにも、高温期に限定せずに測定を実施するためにも、温度や光量を自然任せのみにせず積極的に制御した状況下での試料準備も併用することを、今後は視野に入れる必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
今回、キャニスター捕集による個別成分分析を同じ日の日中に複数回実施することで、未測定成分の日変化について検証することに、初めて成功した。次年度以降も、こうしたRO3放出測定と日変化の検証を通した未測定成分の詳細把握を進める。ただし、RO3測定に基づくBVOCs 放出の温度・光量に対する依存性の検証を進めるにあたり、現行の方法(森林環境にある建物の屋上に設置した苗からの試料捕集)では、夏季の好天日といった限定的な日を除いて、RO3の有意な温度依存性や日変化パターンを得られていない。今後は、効果的な日変化パターン事例蓄積のためにも、高温期に限定せずに測定を実施するためにも、温度や光量の積極的制御下での試料採取を試みる室内実験も併用していく必要がある。そのうえで、(A)(B)として各種の苗について測定事例の蓄積を実施し、研究期間終了までに(C)未測定成分の放出の日変化の把握を含めた森林大気 RO3 挙動の検証、を進めていく。
|