研究課題/領域番号 |
23K11410
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63010:環境動態解析関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
猪俣 敏 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球システム領域, 主席研究員 (80270586)
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研究分担者 |
関本 奏子 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科(八景キャンパス), 准教授 (40583399)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 極低揮発性有機化合物 / 新粒子生成 / 含多酸素有機化合物 / 自動酸化メカニズム / 1nm-走査式移動度粒径分析計 / 衝突誘起解離法 / Orbitrap / エアロゾル-放射-雲相互作用 / 1 nm-走査型移動度粒径測定装置 / 衝突励起解離機能を有する高質量分解能質量分析計 |
研究開始時の研究の概要 |
大気中での有機化合物の光酸化過程で生成する極低揮発性有機化合物(ELVOCs)は、新粒子生成における初期の成長に関与し、雲凝結核の数に影響することが知られている。本研究では、新粒子生成過程における初期成長過程の粒子中の成分分析を行ってELVOCsの特定を試みる。1 nm-走査型移動度粒径測定装置を用いた核モード(粒径10 nm以下)の粒子のみの捕集を行い、衝突励起解離機能を有する高質量分解能質量分析計を用いて、核モードに存在するELVOCsの分子量、官能基情報を取得して、ELVOCsの特定を行い、ELVOCs生成機構を正確に推察する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、新粒子の初期の成長に関与する極低揮発性有機化合物(ELVOCs)を特定するため、核モードと呼ばれる粒径(10 nm程度以下)の粒子のみを捕集して質量分析を行い、核モードに含まれる分子の分子量と分子に含まれる官能基情報について衝突誘起解離法(CID)を用いて把握することである。 本年度はモノテルペン類のオゾン反応系について実験を行った。モノテルペン類としては、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、サビネンの大気中の存在比が多い4種類について行った。実験は1 m3のテフロンバッグの中でそれぞれの反応速度に合わせたモノテルペン類とオゾンの量を導入し、ゆっくりと新粒子生成を起こした。生成した二次粒子をTSI社の1nm-走査式移動度粒径分析計(SMPS)を用いて、1.4~10 nmを1分間で掃引するのを繰り返し、装置の出口のポンプで吸引している部分にフィルターを挿入して、粒径計測後の粒子をフィルターに捕集した。フィルターホルダーも減圧に耐えられるものを準備した。フィルターに捕集した試料はアセトニトリルで抽出、濃縮を行って、質量分析用の試料として準備した。 質量分析は、Thermo Fisher Scientific社のOrbitrapを用いて行った。ポジティブイオン化、ネガティブイオン化で分析を行い、β-ピネンの試料の分析の結果、数十のモノマー、ダイマーと考えられる物質の検出に成功した。想定していたHOO基を多く含むような化合物はこれまでの解析では見つかっておらず、モノマーだとジカルボン酸が見つかっていて、他はダイマーのものが多かった。 生成する粒子の粒径を見ていると、モノマーのものは5~6 nm以下のサイズで、ダイマーがそれ以上のサイズで、ダイマーのほうが量としてはモノマーに比べ多く捕集されていたので、整合する結果と思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既存のフィルターホルダーを用いてサンプリングしてみたところ、フィルターホルダーが減圧に対応していなかったためにリークがあり、核モードの粒子の捕集がうまくいかないことがわかった。減圧にも対応できるフィルターホルダーを見つけ使用したことで、核モードの粒子の捕集に成功した。本年度計画していたα-ピネン、β-ピネン、リモネン、サビネンの4種のモノテルペン類のオゾン反応で生成する新粒子の核モードの分析試料作りは成功した。しかし、適切なフィルターホルダーの探索・購入に時間がかかったため、分析試料の質量分析は、解析を含め、十分に行えたのはβ-ピネンのみで、他のサンプルに関しては十分な質量分析・解析ができなかった。しかし、二年目の最初でその遅れは取り戻せるため、おおむね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
二年目当初に一年目の試料のα-ピネン、リモネン、サビネンの質量分析・解析を行う。その後、申請時の計画通り、人為起源の炭化水素(トルエンとナフタレンを計画)からの新粒子生成の核モードに含まれる化合物の特定を行う。そして、三年目に実大気試料に、核モードに含まれる化合物の特定を行い、反応実験と観測との整合性を確認する。
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