研究課題/領域番号 |
23K11413
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63010:環境動態解析関連
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研究機関 | 埼玉県環境科学国際センター |
研究代表者 |
市川 有二郎 埼玉県環境科学国際センター, 大気環境担当, 主任 (30774963)
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研究分担者 |
大原 利眞 埼玉県環境科学国際センター, その他部局等, 研究所長 (80313930)
米持 真一 埼玉県環境科学国際センター, 研究推進室, 副室長 (90415373)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | BVOCs / フラックス / 鉛直分布 / 濃度勾配法 / タワー / ドローン / イソプレン / テルペン類 / BVOC / 観測タワー / 不確実性評価 |
研究開始時の研究の概要 |
地球規模の炭素循環や気候変動、地域規模の光化学大気汚染に大きな影響を与えている生物起源揮発性有機化合物(BVOC)の主要放出源である森林生態系からの放出量(放出フラックス)は、森林樹冠の上部まで伸びた1本の観測タワーを用いた大気観測や気象データから推計される。しかし、BVOCの放出には、微気象、樹種、ストレスなど様々な要因が関係しているため、放出フラックスが面的に大きく変動している可能性が高く、1地点の観測結果の代表性に疑問が残る。そこで本研究では、森林上におけるタワー観測とドローンを活用した水平移動観測とを組み合わせ、BVOC放出フラックスの空間代表性(不確実性)の解明に挑戦する。
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研究実績の概要 |
2023年6月から東京農工大学研究林施設フィールドミュージアム(FM)多摩丘陵のフラックスタワー(最上部30m)の4m(地上部)、17m、23m、30m の4高度に加熱脱着捕集管を接続した自作サンプラーを設置し、植物起源揮発性有機化合物(BVOCs)の鉛直分布を把握した。また、異なる2高度間(23mと30m)のBVOC鉛直濃度差と渦拡散係数の積にもとづく濃度勾配法からBVOC放出フラックスを求めた。さらに2023年10月に高度30mの位置で、タワーとドローン(タワーから10mから20m離れた値点、n=6)によるBVOCの並行観測を行った。なお、FM多摩丘陵の主要樹種としてコナラとスギが混在している。 BVOCsの主要な放出成分であるイソプレンの6月から10月までの鉛直分布については、高度17m(キャノピー内部)で最も高濃度であり、高度23mから30mの間で明確な濃度勾配が確認された。主要な放出源については不明だが、高度4m(地上部)でイソプレン濃度の高い時期(6月から9月)があり、低木または地面からも放出されていることが示唆された。当該期間のイソプレン放出フラックスは、国内外の既報の範囲内であった。気温が相対的に低くなる11月から3月はイソプレン濃度が相対的に低くなっており、高度別の濃度差もほとんど見受けらなかった。イソプレンは、植物自身が熱や酸化ストレスから植物自身を守るために放出されるBVOCs成分といわれており、気温の高くなる時期に多く放出されると考えられる。 また、タワーとドローンの観測値については、平均値ベースで約20%の違いであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画の通り、東京農工大学フィールドミュージアム多摩丘陵の演習林内に設置されている観測タワーでの、BVOCs試料の鉛直分布と放出フラックスの観測が実施されている。また、観測タワーとドローンの比較試験を同一高度で実施することができたため、2年目も引き続き研究を継続していく。
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今後の研究の推進方策 |
1年目の観測研究を通じて確認された課題は、イソプレン以外のBVOCs成分の多くてGCMS測定装置の検出下限値を下回っていることが挙げられる。加熱脱着捕集管に使用している捕集剤の検討などを行い、BVOCs多成分分析が行えるようにする予定である。また、フラックスタワーの高度4m(地上部)でイソプレン濃度が高くなる原因についても、可能な範囲で探索する。 観測タワーでのBVOCs観測は毎月実施した結果、夏季にBVOCsの放出量が多いことがわかり、通年でのBVOCs放出実態が把握された。2年目は分析方法に改良も加え、放出量の多い夏季に集中観測を行う予定である。また、1年目ではドローンと観測タワーでの統合観測は1日しか出来なかったため、データ数を増やし、より信頼性の高い面的評価が行えるように努める。
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