研究課題/領域番号 |
23K11417
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63020:放射線影響関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
若杉 光生 金沢大学, 薬学系, 准教授 (80345595)
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研究分担者 |
松永 司 金沢大学, 薬学系, 教授 (60192340)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | ヌクレオチド除去修復 / DNA損傷応答 / 二次的DNA損傷 / ゲノム / シグナル伝達 / 癌 / 老化 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者は生体を構成する大部分の細胞と同様な休止期もしくは休止期様の培養細胞に着目し、ヌクレオチド除去修復(nucleotide excision repair; NER)に依存したDNA損傷応答反応の解析を行っている。その反応はNERの後期過程が不完全な場合に生じ、NERの反応中間体がプロセッシングを受けて生成する二次的なDNA損傷に起因するが、その生成メカニズムや意義は不明瞭である。本研究では、NER反応の中間体に作用するヌクレアーゼの全貌を明らかにし、活性制御のメカニズムやゲノム不安定性に及ぼす影響を解析することにより、NER反応中間体のプロセッシングの生物学的意義の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
ヌクレオチド除去修復(nucleotide excision repair; NER)はゲノム安定性の維持に重要な役割を果たしているが、休止期ではその後期過程が完了しない場合がある。その残存したNERの中間体はプロセッシングを受け、新たに二次的なDNA損傷を生成する。本研究ではNER反応中間体のプロセッシングの生物学的意義の解明を目的とし、以下のような成果を得た。
1.二次的DNA損傷のうち拡張されたssDNA(single-strand DNA)領域の修復系においてRAD18が重要な役割を果たすことを示しました。DNA合成が行われない休止期の細胞においても、RAD18のノックダウンにより拡張されたssDNA領域の修復が遅延し、紫外線感受性が増加することを見出しました。 2.DSBの生成機構に関する解析で、同定したヌクレアーゼの活性欠損型変異体を誘導できる細胞株を作製しました。この変異体の発現は野生型に対しドミナントネガティブ効果を示し、DSBに対する応答反応を低下させることがわかり、これまでの解析結果を裏付けました。 3.NER反応中間体に働くヌクレアーゼの制御機構を解明するため、ヌクレアーゼと相互作用するタンパク質の同定を試みました。Exo1ノックアウト細胞にTurboIDを付加したExo1を再導入し、融合タンパク質の機能性が確認できたので、紫外線照射の有無そして休止期という細胞周期特異性に着目してPull-downの条件の最適化を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
拡張されたssDNA領域の修復にRAD18が重要な役割を果たすことを示し、DSBの生成に検討してきたヌクレアーゼが寄与していることを裏付けるデータも得られた。NER反応中間体に働くヌクレアーゼの活性がどのように制御されているかを明らかにするために、ノックアウト細胞にTurboIDと融合したタンパク質を再導入した細胞を作製し、相互作用タンパク質単離の条件検討を進めており、おおむね予定通りに計画を進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の解析により、NERによってDNA損傷が除去された後に生じたssDNAギャップ中間体がさらに拡大したssDNAの修復にRad18が関与する証拠を得ることができた。TLS型ポリメラーゼの関与を示唆するDataも得られつあるので、今後は突然変異の誘発への影響や遺伝的不安定性に及ぼす影響についても解析を進めていきたい。また、実際にDSBを形成するヌクレアーゼの活性欠損型変異体を用いた解析により、その関与を裏付ける実験結果も得られた。一方で他のヌクレアーゼも関与する可能性が出てきたので、ゲノムワイドなsiRNAライブラリーや質量分析を利用した網羅的な解析を利用する等のアプローチを導入し、より積極的にその機構解明に全力を注ぐ。 また、これまでに複数のヌクレアーゼがNER中間体に作用しており、多様なDNA損傷を誘導する原因となっていることがわかってきたが、それらのヌクレアーゼの活性の制御が重要な課題である。それらの制御機構を明らかにするために、計画通りヌクレアーゼと相互作用するタンパク質を同定し、その有無がヌクレアーゼの活性に与える影響についても解析を進めていく。そして、それらの制御機構を破綻した時の欠影響について、細胞レベルそして個体へと解析を展開していくことにより、NER反応中間体のプロセッシングの生物学的意義の解明を目指す。
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