研究課題/領域番号 |
23K11420
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63020:放射線影響関連
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
徳山 由佳 佐賀大学, 総合分析実験センター, 教務職員 (30398135)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | DNA損傷 / 低線量放射線 / TEM |
研究開始時の研究の概要 |
私たちは日常的に放射線にさらされているにも関わらず、放射線に対し忌避感を抱くのは、それが「見えないもの」の代表であり、簡単に被ばく量がわからないからである。特に、低線量被ばく時による生物影響は、その実影響や生物学的機構が未だ明らかではないため、被ばく線量の上限値に対して度々議論が起こる要因となっている。だからこそ、低線量放射線による生物影響の見える化は、「被ばくによって何が起きるか?」という放射線生物学において社会的疑問に応えられる重要な視点である。本研究では、長年存在が指摘されている放射線に特徴的な損傷を透過型電子顕微鏡により見える化し、低線量被ばくによる生物影響を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、放射線によるDNA損傷を見える化し、低線量被ばくによる生物影響を明らかにすることを目的としている。具体的には、生物影響の根本原因である放射線特異的なクラスターDNA損傷構造を、電子顕微鏡による直接観察にて可視化し、低線量被ばくでの損傷形態を明らかにする。 初年度は、基本サンプルとしてプラスミドDNA(pUC19、2868bp)を用いて、放射線実験のコントロールとして一番良く使われるガンマ線の照射条件をアガロースゲル電気泳動法で確認している。プラスミドDNAは、損傷の程度によってsuper-coil状、環状、線状タイプに形態を変化させることが知られており、形態変化の様子は、アガロースゲル電気泳動法によって確認が容易である。放射線によるDNA損傷の形成は溶媒条件によっても変化するため、ガンマ線照射量の違いによるプラスミドDNAの損傷状態の確認と損傷量の定量を行い、電子顕微鏡によって損傷状態が観察できる照射条件を確認した。また、各線量において照射後のプラスミドDNAの損傷数を電子顕微鏡観察による損傷数の個数カウントとの相関関係について確認を進めている。本グループによる過去の研究では染色体DNAを対象に電子顕微鏡サンプルの作製を行っており、サンプル作製方法を応用してプラスミドDNAに対する観察条件の確立を進めている。現状の段階はDNA上に1つだけ損傷が生じた直接損傷と呼ばれる損傷に対する確認実験である。研究の最終ターゲットは、損傷が局所的に多数存在するクラスターDNA損傷であるため、今後の課題としてクラスターDNA損傷を観察する条件の確立を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
各種サンプル準備などが整った段階で、サンプル調整に必須の親水化処理装置の故障、測定用装置である電子顕微鏡の不具合が続き、研究が一時停滞してしまった。学内に代替設備がなく、近隣にもすぐに対応可能なところがなかったため、実際の観察をあまり行うことが出来なかった。現在、新規装置購入の調整以外にも、代替手段を確保するべく、親水化処理装置なしでサンプル調整が可能な電子顕微鏡用液中サンプル観察ツールの使用など、設備に依存せず安定してサンプル調整が行える方法についても検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、主に2点を中心に進める予定である。1つ目として、測定機器および試料作製機器トラブルのため実験が停滞してしまっている基本条件の確認実験を進める。既知の線量依存的なDNA損傷数の変化量と電子顕微鏡観察において確認できた実数とが相関関係を持つことを確認する事は、本研究の有用性を担保する重要な部分であり、状況の確定を最優先させる。電気泳動による形態変化量と、電子顕微鏡観察によるプラスミドDNAの個数カウントが、本来であれば正の相関を持つはずである。しかし、低線量被ばくの場合、電気泳動法で観察されるのは損傷がないsuper-coil状のみであり、被ばくにより損傷を受けた環状や線状の形態は、極めて量が少なく電気泳動法の検出限界を下回るため、ほとんど検出出来ないとされている。電気泳動法で変化を確認出来ない線量域に対して、電子顕微鏡観察で変化が確認できることが分かれば、本研究の有用性を担保できると考える。また、仮に変化が確認できなければ、電気泳動法の結果が正しいことを支持する一つの要因となる。また、相関が得られなかったの時や今後の機器トラブル対策として別法についてもあわせて検証を進め、最適な損傷の可視化法を確立する。2つ目としてクラスターDNA損傷があるサンプル観察方法についても並行して検討を進める予定である。なお、今後の研究推進にあたっては共同研究も検討し、全体のペースアップをはかることも考える。
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