研究課題/領域番号 |
23K11441
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63030:化学物質影響関連
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研究機関 | 森ノ宮医療大学 |
研究代表者 |
山本 浩一 森ノ宮医療大学, 医療技術学部, 教授 (40362694)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 分子標的薬 / 倦怠感 / 疲労感 / 睡眠障害 / 食欲不振 / ピエゾスリープ / がん治療 / ヒスタミン神経系 / オレキシン神経系 / 睡眠 |
研究開始時の研究の概要 |
悪性腫瘍の治療中に発症する『がん治療関連倦怠感』は致死的では決してないが、生活の質が影響されるほどの苦痛を感じると、「がん治療」そのものを拒否するまでにもなってくる。 申請者がこれまで研究してきた知見を総合すると、この『がん治療関連倦怠感』は『ヒスタミン神経系と神経ペプチドの調節異常に基づく「睡眠リズム障害」が起因している』と考えられるため、睡眠リズム障害を改善すると倦怠感が低減できると考えた。そこで、睡眠-覚醒状態の解析と自律神経行動実験を組み合わせて『がん治療関連倦怠感』の可視化し、発症標的としてヒスタミン神経系やオレキシン神経系の役割解明を探り、画期的な予防法を確立していく。
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研究実績の概要 |
抗悪性腫瘍剤の中でも特に分子標的薬による悪性腫瘍の治療で患者は悪心、疲労感、食欲不振、睡眠障害が複雑に絡みあう症状『がん治療関連倦怠感』を経験する。この症状は致死的ではなく、「少しくらいしんどくても…」と軽く考えられることがあるが、生活の質が影響されるほどの苦痛を患者が感じると、「がん治療」そのものを拒否することに繋がる。この症状は過去の課題代表者の研究成果より、『抗悪性腫瘍薬による食欲不振は「嘔吐とは全く異なるメカニズムで発症すること」と「睡眠リズム障害が関与する病態であること」』を突き止めた。この研究成果を基礎として、リズム障害を改善すると『がん治療関連倦怠感』を低減できると着想した。そこで、まずは睡眠-覚醒状態の解析と自律神経行動実験系を組み合わせて『がん治療関連倦怠感』の可視化・自動判定技術の開発を行った。通常、睡眠-覚醒状態の判定には頭部に刺入した電極による脳波計測を必要とするが、侵襲による影響だけでなく、外部からの電気ノイズ除去が必要となり、結果を得ることが難しい。近年、マウスの呼吸を圧センサーでモニターして睡眠-覚醒を判定するピエゾスリープが開発された。そこで、令和5年度は本科研費資金を使用して、マウス用のピエゾスリープ睡眠・覚醒判定システムを購入し、分子標的薬投与後の摂餌行動と睡眠-覚醒状態の計測を同時に行う実験技術を確立させることに専念した。今回使用した分子標的薬は臨床でも疲労感が非常に現れやすく問題となっているTyrosine Kinase 阻害剤のPazopanibとした。その結果、本来マウスの活動期となる暗期に摂餌行動の減少が生じるが、その時間帯に伴って睡眠時間が増加していることが判明した。このことは、課題代表者の着想を裏付ける結果であるとともに、今後画期的な予防法の確立への足がかりになるものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題の達成目標は①睡眠状態と自律神経活動を組み合わせた「がん治療関連倦怠感」の可視化・自動判定の開発、②「がん治療関連倦怠感」発症における炎症性サイトカイン・ヒスタミン・オレキシンの役割解明、③ヒスタミンH3/H4受容体、オレキシン受容体リガンドによるがん治療関連倦怠感予防の検討としていた。倦怠感を感じると自発行動低下、食欲不振、意欲低下が見られるため、抗悪性腫瘍薬投与後のマウスの①自発行動量、②摂餌量・カオリン摂取量、③睡眠・覚醒時間の計測を行った。種々の実験を行った結果、マウスのがん治療関連倦怠感の重症度を客観算定するための指標になりうるデータを取得することができた。このことは、「悪心・嘔吐」だけではなく「食欲不振・倦怠感・睡眠障害」を含めた「がん治療関連倦怠感」の定量的に可視化評価し、これまでには考えられていなかったオレキシン-ヒスタミン神経系を標的とする治療・予防法確立への端緒を切り開くことができたと考えている。1年という短い期間で上記の結果が得られたことは、当初の予定より大幅に進展できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
『がん治療関連倦怠感』を感じていると不動となるが、この不動が睡眠をしている状況であることが令和5年度の研究成果より判明した。このことから、抗悪性腫瘍剤のなかでも特に分子標的薬による『がん治療関連倦怠感』の発症機序として、覚醒維持の低下を想定している。 ところで、オレキシン作動薬やヒスタミンH3受容体逆作動薬は睡眠障害の改善(覚醒の維持)に寄与するため、ナルコレプシーなど睡眠障害の治療薬として海外では用いられている。今後、覚醒維持に関わるヒスタミン神経系やオレキシン神経系の活動増加に関わる薬剤が『がん治療関連倦怠感』の治療薬として応用可能であるか否か行動薬理学的手法、分子生物学的手法を用いて詳細な検討を行っていく予定である。
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