研究課題/領域番号 |
23K11453
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63040:環境影響評価関連
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
新垣 雄光 琉球大学, 理学部, 教授 (80343375)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 大気エアロゾル / 自由鉄 / フェロトーシス / 模擬肺液 / 光化学反応 / 越境汚染 |
研究開始時の研究の概要 |
近年,医学分野において鉄の酸化還元反応が注目されている。新しい細胞死機構である鉄依存性細胞死(フェロトーシス,又はフェロプトーシス,Ferroptosis)は,「制御された細胞死」の一つで,鉄に依存する過酸化脂質の蓄積によるものとされている。しかし,Fe2+の供給源および生成についての知見は不十分のままである。Fe2+の供給源となる大気エアロゾルや体内においても皮膚を透過する太陽光によって引き起こされる光化学反応によるFe2+生成を探求することは,生体内におけるフェロトーシスを理解する上で必要不可欠の情報である。
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研究実績の概要 |
生体内において、Fe2+が触媒となって引き起こされるフェロトーシス(鉄依存性細胞死)が複数の疾患の原因となることが近年分かってきた。ただし、鉄の供給源は未だ不明なままである。そこで、本研究では、大気エアロゾル中の鉄分がフェロトーシスを引き起こす鉄の供給源になり得るのか、琉球大学の屋上で採取した大気エアロゾル中の鉄の全量とリン酸緩衝溶液で作成した模擬肺液へ溶出する鉄量から考察を試みた。 大気エアロゾルのサンプルは、2020年12月15日から2021年11月30日までの期間に琉球大学理系複合棟の屋上でハイボリュームエアーサンプラーを使用して採取されたエアロゾルから各季節4サンプルずつ、計16サンプルを選定した。サンプルフィルタを1/8サイズにカットしたものに対して、全鉄は濃硝酸を加えて加熱することで抽出し、模擬肺液可溶性鉄は調整した模擬肺液と共に攪拌して抽出、ろ過後、それぞれの濃度をICP-MSで測定した。 濃硝酸に溶けだしたFe(全鉄)は最大数百ナノグラム毎立法メートル、最小で数十ナノグラム毎立法メートルであり、平均濃度は約百ナノグラム毎立法メートルであった。季節ごとの平均値を比べると、春季が最高濃度で、最低の夏季の5.6倍だった。模擬肺液に溶けだしたFeは酸分解で求めた全鉄の平均数%程度で、最大でも10%以下、最低数%と比較的狭い範囲だった。全鉄と同様に、春季の平均濃度が最高で、夏季の4.9倍であった。全鉄と模擬肺液可溶性鉄のサンプルごとの濃度変化を比べると、春季が高く夏季が低い傾向は同じである一方で、全鉄では低い傾向であった冬季・秋季において、模擬肺液可溶性鉄は比較的高い傾向を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度に計画した実験が概ね実施できたため。研究初年度は、琉球大学において採取済の大気エアロゾル試料(令和2年9月~4年9月)および今後採取する大気エアロゾルから模擬肺液(Surrogate Lung Fluid)に溶けだす鉄分をICP-MSを用いて分析し,溶出量および溶出割合を明らかにすることを目的に研究を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目は、Charrier and Anastasio(2015)が用いたSurrogate Lung Fluid、主にリン酸緩衝溶液でpH =7.2-7.4に調整された生理食塩水を用いて、Feの溶出率や光照射実験を実施する予定である。 模擬肺液に溶けだす鉄分から光化学的に生成するFe2+を申請者が改良したFerrozine-HPLC分析法を用いて探求する。その際,光強度(通常の太陽光強度や1/10太陽光強度など)や波長依存性(313 nm, 334 nm, 366 nm, 405 nmなど)について探求する。単色光の実験結果より量子収率を求める予定である。
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