研究課題/領域番号 |
23K11455
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63040:環境影響評価関連
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研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
中根 一朗 神奈川工科大学, 工学部, 教授 (30221451)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 花粉の飛散と再飛散 / 花粉被曝 / 都市型気候 / 数値シミュレーション / 混相流 / 環境分析 / 花粉の飛散と被曝 |
研究開始時の研究の概要 |
都市部では屋根・屋上が軒を接しており、我々は既報告の結果から、この屋根・屋上からの花粉の再飛散が都市部の花粉被曝に影響を与えていると判断している。そこで、花粉被曝に与えるこの影響を明確にするため、都市領域をモデル化して数値シミュレーションを行う。特にこの数値シミュレーションにおいては、屋根・屋上からの花粉再飛散を考慮する新たなモデルを組み入れる。なお、このシミュレーション手法の評価・修正のため、計測(フィールドワーク)も実施する。そして評価・修正の後に、この数値シミュレーションにより都市部局所の花粉飛散量と被曝量を予測するとともに、都市化の進展が花粉被曝に与える影響を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究では,都市中心部における屋根・屋上からの花粉再飛散の影響を,定量的に明確にすることが目的である.従って,その研究手法としては,広範な領域での検討が可能な数値シミュレーションが最適であると判断される.ただし,そこで問題となるのが数値シミュレーションの予測精度である.そこで,まず,研究代表者勤務校の渡り廊下の屋根に模擬花粉をまき,この模擬花粉の飛散量とその時の風速を計測した上で,同じ条件での数値シミュレーションを行い,計測結果によって数値シミュレーション手法を評価した.その結果,両者は定性的に良く一致しており,数値シミュレーションにより,屋根・屋上からの花粉再飛散の影響を検討することの妥当性が確認された. なお,そもそもこれまでの報告では,花粉が屋根・屋上から再飛散するかどうかすら明確ではなかったが,この計測により,屋根・屋上からの花粉再飛散が実際に発生すること,そして,それが数値シミュレーションにより予測可能であることが確認された. 次に,上記により良好な結果が得られたことから,東京・渋谷駅周囲の270m四方をモデル化し,6m/sの風が30秒間吹く場合の数値シミュレーションを行った.その結果,屋根・屋上からの花粉の再飛散が有る場合には,無い場合に比べて,地上高20m付近における花粉飛散量が特に多く,最大値では4倍程度にもなっている.加えて,10m以下の高度においても2倍程度の花粉飛散量となっていること等も分かった. ただし前記した通り,これは6m/sの風が30秒間吹き続けた場合の270m四方における結果であり,実際の風は断続的に吹き,風が止むと花粉が落下する.従って,より広い領域を考えると,我々の主たる生活圏であるより低層な領域にも花粉再飛散の影響の及んでいることが予測される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
数値シミュレーションの進捗状況は概ね予定通りであるが,数値シミュレーション結果を保証する風洞実験が遅れている.当初予定では,数値シミュレーションの対象としている東京・渋谷駅周辺をモデル化したジオラマ模型を作製して,この模型を用いた風洞実験を実施することで定性的に数値シミュレーション結果を評価・保証する予定であった.ところが,風洞建屋の耐震不足が発覚し,風洞建屋の解体,新規建設となったため,昨年度は全く風洞実験が出来なかった.従って,風洞実験に遅れが生じている.
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今後の研究の推進方策 |
現在,引き続き,東京・渋谷駅周辺の数値シミュレーションを進めているが,昨年度までとは異なり,より精緻な国土地理院の3D都市モデル(PLATEAU)を用いて,より広範囲(2km四方)の領域を対象とした計算モデルを作成している.なお,より広範囲な領域としたのは,前記した通り,再飛散した花粉が我々の生活圏である低層域に落下するまでには,十分な時間,つまり十分な飛散距離が必要なためである.また,過去の研究により得ている花粉の転動・滑動モデルを,屋根・屋上での花粉移動の境界条件として組み入れることとしている. 加えて,やはり前記した通り,数値シミュレーション結果を定性的に保証するための風洞実験も進めており,昨年度の東京・渋谷駅周辺の数値シミュレーションにおいて,屋根・屋上からの再飛散の影響の大きかった領域のジオラマ模型を作製中である,今後,この模型が完成次第,この模型を用いた風洞実験(可視化計測)を実施し,この計測結果と数値シミュレーション結果を比較することで,定性的ではあるが,数値シミュレーション結果を客観的に評価・保証する予定である. なお,この風洞実験により数値シミュレーション結果が保証された場合には,東京・渋谷駅周辺以外の他の都市部を対象とした数値シミュレーションを実施し,さらに,その結果を風洞実験により定性的に評価・保証する予定である. また,少なくとも昨年度までの結果を用いて,2024年11月の日本花粉学会第65回大会で講演発表の予定である.
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