研究課題/領域番号 |
23K11468
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64010:環境負荷およびリスク評価管理関連
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研究機関 | 一般財団法人日本環境衛生センターアジア大気汚染研究センター |
研究代表者 |
佐々木 博行 一般財団法人日本環境衛生センターアジア大気汚染研究センター, 情報管理部, 主任研究員 (00969363)
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研究分担者 |
高橋 司 一般財団法人日本環境衛生センターアジア大気汚染研究センター, その他, 客員研究員 (60782688)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | マイクロプラスチック / AMPs / 顕微ラマン分光法 / micro-Raman / アクティブサンプリング / 大気中マイクロプラスチック / 粒子状物質 / 有機・無機トレーサー / 顕微ラマン分光光度計 / 発生源解析 |
研究開始時の研究の概要 |
海洋に排出されるプラスチックごみおよびマイクロプラスチック(MPs)は深刻な社会問題である。近年、大気中のMPs(AMPs)の存在も明らかとなったが、環境中の動態、人の健康や生態系への悪影響など大部分が未解明である。AMPsは粒子状物質(PM)と近しい物性を持つと予想されるが、実態は不明瞭である。 本研究では、予備段階の研究で考案した手法でAMPsを測定し、PMの有機・無機成分を並行測定することで、PMのうちAMPsが占める割合やAMPs・PM双方の動態の類似性などを把握する。本研究の進展により、発生源からの輸送過程などAMPsの動態に対する知見を得、環境・健康リスク評価に貢献できる。
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研究実績の概要 |
本研究のこれまでの実績として、(1)AMPsの測定法の考案と精度向上に向けたブランク試験および添加回収試験の実施、(2)適切なサンプリング地点の選定、(3)PMの並行測定を含む試験的な測定(集中観測)の実施を行った。 (1)については、前段階の研究における手法を軸として捕集、前処理、同定判別を行う手法を考案した。同手法により操作ブランク試験を実施し(N=3)、プラスチックによる汚染は認められなかった。同じく、定性的な添加回収試験を実施し(N=3)、いずれの検体からも添加したものと同じ種類、粒径のマイクロビーズが確認されたことから、一連の操作において試料逸失による影響は軽微と考えられた。 (2)については、当初計画していた山岳域(八海山4合目)に替え、笠堀ダム周辺を新たな地点として選定し、地権者からの同意を得ている。これにより、前段階の研究から測定を継続しているものと併せて、都市属性の川崎、田園または遠隔属性の笠堀ダム、中間的な立ち位置である新潟曽和という異なる属性の3地点による並行測定が可能となった。 (3)については、2023/11/14-12/12を集中観測期間として、(2)の3地点においてAMPsおよびPMの並行測定を実施した。その結果、AMPsの個数濃度は新潟曽和が0.42±0.16 MPs m-3,川崎が0.50±0.26 MPs m-3,笠堀ダムが0.57±0.37 MPs m-3であり,地点や属性ごとに明確な差は現れなかった。一方で試料単位の濃度推移は新潟曽和と川崎、笠堀との間で異なり、気象場や発生源の違いによる影響が示唆されるが、検証には特定の季節に偏ることなくデータを蓄積することが必要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、2023年度(研究初年度)の主な取組として、(1)AMPsの測定法の確立、(2)適切なサンプリング地点の選定、(3)PMの並行測定を含む試験的な測定(集中観測)の実施を予定していた。 (1)については、手法の確立には至っていないものの、操作ブランク試験、定性的な添加回収試験の実施により、汚染や試料逸失の影響が軽微と考えられる手法を考案した。今後は精度向上のため、定量的な添加回収試験の方法を検討・考案し、回収率を求める必要がある。 (2)については、異なる属性の3地点(新潟曽和、川崎、笠堀ダム)をサンプリング地点として選定し、それぞれ地権者からの了解を得ている。また、サンプリングに必要な機材や人員をすべて整備し、現地でのサンプリングを円滑に実施できる体制を整えている。笠堀ダムについては、現地に設置されている気象計のデータについても使用許諾を得ており、本研究の範囲内で自由にアクセス可能である。 (3)については、(2)の3地点における集中観測を滞りなく実施し、AMPsの同定判別までは完了した。国内のAMPsの存在状況を示した報告のうち、高感度・高空間分解能(≧1 μm)を有する顕微ラマン分光法(micro-Raman)によるものはこれまで確認されておらず、本研究が初である。同時に採取したPMの各成分分析は無機成分の一部が未実施で、これらの分析と、気象データ、AMPs/PMの各測定データとの比較検証を今後行うこととしている。 以上を踏まえると、現在までのところ、当初の計画は概ね順調に進められていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2024~2025年度(研究2~3年度)は、当初の研究計画に従い、上記3地点におけるAMPsおよびPMの並行測定を季節ごとの集中観測として実施することとしている。サンプリング、前処理、同定判別および機器分析を滞りなく実施し、収集した測定データ(AMPsおよびPMの有機・無機成分、気象)の解析も併せて行う。PMの粒径区分別に、有機・無機トレーサー成分の濃淡やサンプリング地点の属性、気象場の違い、黄砂などの汚染イベントの有無などがAMPsの大気中濃度とどのように相関するかを確認することにより、AMPsとPMとの類似性について考察することとする。 さらに、定量的な添加回収試験の方法を検討し、回収率を算出することにより、試料逸失のリスクが限定的であることを示し、顕微ラマン分光法を用いた高感度・高空間分解能のAMPs測定手法を確立することに努める。また、前年度からのペンディングとして、2023年度の集中観測におけるPM試料の無機成分の一部について分析が未実施のため、気象データ、AMPs/PMの各測定データとの比較検証と併せて速やかに実施する。
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