研究課題/領域番号 |
23K11472
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64020:環境負荷低減技術および保全修復技術関連
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
後藤 猛 秋田大学, 本部, 理事 (10215494)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 分子インプリント / 金属アクア錯体 / トリチウム水 / 接着性ペプチド / トリチウム汚染水 / 金属アクア錯イオン |
研究開始時の研究の概要 |
福島第一原発では東日本大震災により燃料棒が溶融し,大量の放射性物質が冷却水や建屋流入の地下水に溶け出したために膨大な量の汚染水が発生した。多核種浄化装置(ALPS)によって大半の放射性物質が除去されているが,トリチウム水だけは除去することができずに発電所敷地内のタンクに保管され,その量は年々増加し続けている。本研究は,著者らが開発したペプチドと多孔性シリカ粒子を用いた分子インプリント技術を応用して金属アクア錯陽イオンの吸着担体を調製し,トリチウム水が配位した金属アクア錯陽イオンの担体吸着を通じて,ALPS処理水からトリチウム水を除去するための基礎検討を行う。
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研究実績の概要 |
福島第一原発で発生する大量の放射能汚染水から多核種浄化装置 (ALPS) によってほとんどの放射性物質は除去されているが, トリチウム水だけは分離されず残存している。著者らは,接着性配列と金属認識配列から成るペプチドを用い,標的分子の鋳型をシリカ細孔内キャビティに形成させる分子インプリント技術を開発したが,本研究は,この分子インプリント技術における金属認識配列に酸性アミノ酸を用い,配位水交換反応によって生じるトリチウム水配位コバルト錯イオンを分子インプリントしたシリカ担体 (Co-iPSP) を調製し, 模擬ALPS処理水からのトリチウム水除去について検討するものである。 先ず,金属認識配列を検討して水に易溶なテトラアスパラギン酸配列を見出し,この金属認識配列と接着性配列から成るペプチドを用いてCo-iPSPを調製した。また,日本アイソトープセンターより入手したトリチウム水から模擬ALPS処理水を調製し,この水溶液中でCo-iPSPを調製したところ,酸による脱離洗浄工程において,コバルトの脱離と共にトリチウム放射能の脱離が検出された。これより,トリチウム水はコバルトアクア錯イオンに濃縮されてCo-iPSPに吸着することが示唆された。 次に,Co-iPSPを模擬ALPS処理水に添加し,上清の放射能を液体シンチレーションカウンターにより測定した。その結果,上清の放射能に減少が認められ,減少率はCo-iPSP添加量に応じて増加してCo-iPSP 0.25 g/mL で約13%に達した。なお,コバルト配位水中のトリチウム水濃縮倍率は3,380倍であり, 配位水交換平衡定数は0.426 L/mmol と求められた。また, Co-iPSPのコバルト吸着量からコバルトアクア錯イオンの吸着平衡定数は1,250 L/mmol と求められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね計画通りに研究が進んでいる。しかし,Coアクア錯イオンの分子インプリント吸着担体Co-iPSPに対するコバルト吸着量が想定よりも低く,その結果,十分なトリチウム水除去率に達していない。また,調製したCo-iPSPの再利用性を調べたところ,酸処理による再生操作後にコバルト吸着容量が大きく低下することが分かった。これらの原因として,シリカ粒子に吸着させたペプチドの脱離や分子インプリント空孔の変形などが考えられるが,まだ原因究明には至っていない。したがって,ペプチド配列の再検討も含めて,Co-iPSPの調製条件および再生条件の再検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
金属認識配列に6残基のヒスチジンを用いた以前の研究において,この配列の中間部位に接着性のDOPAを配置したペプチドを使用した際には再利用性の大きな低下は認められなかった。したがって,今回のアスパラギン酸を金属認識配列に用いる場合にも,この配列の中間にDOPAを挿入したペプチドを用いてCo-iPSPの調製を試み,Co-iPSPの安定性の向上を通じてCo吸着容量の増加およびトリチウム水除去率の向上を図る。また,著者らはこれまでMo-Sci社の多孔性シリカ粒子を用いてきたが,他社製品についても物理的強度や繰り返し使用に対する耐久性等を調べ,より適した多孔性シリカ粒子を選定する。 一方,コバルトアクア錯イオンにおけるトリチウム水の交換反応およびコバルトアクア錯イオンのCo-iPSPの吸着平衡反応をモデル化し,Co-iPSPによるトリチウム水除去メカニズムを数値解析により明らかにする。
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