研究課題/領域番号 |
23K11477
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64020:環境負荷低減技術および保全修復技術関連
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
岡野 邦宏 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (30455927)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | アオコ / Microcystis属 / ゲノムワイドジェノタイピング / MIG-seq法 / ゲノムワイドジェノタイピング法 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、有毒アオコの変動機構の解明を3つのステップで研究を進める。まず、①MIG-seq法を原核生物であるMicrocystis属に適用するために条件検討を行う。次に、②Microcystis属分離株のデータベースを構築するために分離株の収集を行い、MIG-seq法でデータ解析を行う。加えて、③実湖沼におけるMicrocystis属のstrainレベルでの組成とその変動を明らかにするためにMicrocystis属分離株を任意に混合したデモ試料および実湖沼試料をMIG-seq法でデータ解析を行う。
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研究実績の概要 |
Microcystis属は16S rRNA遺伝子などの分子系統マーカーの変異が属内において2%以内であるため、Microcystis aeruginosa 1種とされているが、種内に毒合成をはじめとする様々な表現型が混在しているため、strainレベルで高精度にジェノタイピング(遺伝子型鑑別)することが不可欠である。加えて、有毒アオコ発生のメカニズムを解明するには、ジェノタイピングされたstrainの季節的な変動やその変動の湖沼間での普遍性を明らかにする必要がある。 そこで、本研究では、1) ゲノムワイドジェノタイピング(MIG-seq)法を新たにアオコ形成藻類Microystis属に応用した。Microcystis属でホールゲノム解析が終了しているMicrocystis aeruginosa NIES-843株を中心に8株をモデル生物としてPCR条件の検討を行った結果、すべての株で良好な増幅が確認された。また、MiSeq(イルミナ)によるシーケンスを行い、平均50万リード/株のシーケンスデータを得た。なお、M. aeruginosa NIES-843株については、ホールゲノム配列をリファレンスとしてマッピングを行い、非特異的な増幅ではないことが確認された。 一方で、2) 秋田県八郎湖におけるMicroystis属のstrainレベルによる変動を明らかにするために、八郎湖よりMicrocystis属の分離培養を行った。5月を除く4月から10月までの各月から計44株の単藻培養系を得た。そのうち、少なくとも11株が有毒株であることが分かった。特に8月と9月には22株の単藻培養株が得られ、その有毒株と無毒株の割合は、現地の表層水からDNAを抽出して行ったリアルタイムPCRの結果と一致した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、ホールゲノム解析が終了しているMicrocystis aeruginosa NIES-843株を中心に、NIES-44、102、298、843、1055、1071、1086、PCC7806株の8株をMIG-seq法により配列解析した。特に、M. aeruginosa NIES-843株については、既報のホールゲノム配列をリファレンスとしてマッピングも行った。MIG-seq法の条件検討、特にPCR条件は令和5年度の研究計画であり、概ね順調に進んでいると言える。しかしながら、マッピング解析により、MIG-seq法で得られたシーケンスデータの特性などを明らかにするには至っていない。 一方で、データベースの構築に向けたMicrocystis属のコレクション作成に関しては、44株の単藻培養系を得ることができた。このうち少なくとも11株が有毒株であることが分かっており、順調にデータベースの構築が進んでいる。特に8月と9月には22株の単藻培養株が得られ、その有毒株と無毒株の割合は、現地の表層水からDNAを抽出して行ったリアルタイムPCRの結果と一致しており、本研究の「有毒アオコ発生のメカニズムを解明するには、ジェノタイピングされたstrainの季節的な変動やその変動の湖沼間での普遍性を明らかにする必要がある」を再確認するものであった。令和6年度は、得られた単藻培養株の増殖特性についても調査する。しかしながら、MIG-seq法によるシーケンスの結果、想定よりも遺伝子多様性が低い可能性も考えられる。そこで、令和6年度も引き続き八郎湖よりMicrocystis属の分離培養を行う。採水は、船を用いて複数地点の採水を行い、面的な変化についても解析を行う。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度に引き続き、ゲノムワイドジェノタイピング(MIG-seq)法により得られたデータの解析を行うが、具体的には下記の3つの研究を行う。 ①Microcystis属へのMIG-seq法の適用として、Microcystis aeruginosa NIES-843株を用い、得られたシーケンスをマッピングなどの解析に供して最適条件を検討する。 これまで生物の動態を分子生物学的に解析するためには、各生物種に合わせたマーカー(特異的なプライマーセット)を開発する必要があった。しかしながら、マーカーを開発するためには、多くの労力を要するだけでなく、近縁な種やstrain(株)では作成自体が困難な場合もある。そこで、②MIG-seq法により、予め目的生物のデータベースを作成しておくことで、目的生物が混合した状態で、その組成を推定する手法を新たに開発する。解析に用いるMicrocystis属は令和5年度に八郎湖より分離した単藻培養系を用いる。単藻培養系では他の細菌類のコンタミネーションの影響により、令和5年度に用いた分離培養株のように良好なシーケンス結果が得られない可能性も考えられる。そこで、(独)国立環境研究所微生物系統保存施設(MCC-NIES)に保存されている八郎湖分離株7株も並行して解析するなど柔軟に対応する。 さらに、③デモ・実湖沼試料のMIG-seq解析として、混合試料の中でのMicrocystis属のstrainレベルでの組成を推定する手法を開発するために、Microcystis属分離株を任意で混合したデモ試料を作成し、MIG-seq法によりデータ解析を行う。デモ試料での組成推定が問題ないことを確認した後、実湖沼試料を用いてMicrocystis属のstrainレベルでの変動を解析する。対象湖沼は八郎湖を想定している。
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