研究課題/領域番号 |
23K11500
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64030:環境材料およびリサイクル技術関連
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
小井土 賢二 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (60611762)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 木質バイオマス混合 / ガス化炉 / 灰溶融性 / クリンカ / 熱力学平衡計算 / 熱重量・示差熱分析 / 相平衡 / カルシウム・カリウム炭酸塩 / 木質バイオマス / ガス化熱電併給 / クリンカー / 深層学習 / 軟化温度推定 |
研究開始時の研究の概要 |
脱炭素社会の実現と地域経済の活性化のために、分散電源である木質ガス化熱電併給の普及が期待される。これまでスギのガス化では炉内でミネラル成分が融けて固化物(クリンカー)が発生して配管閉塞の要因とされてきた。先行研究では様々な添加剤による抑制策が検討されたがコスト削減が課題であった。そこで、スギ材に対しバイオマス種を適切に混合してクリンカーを抑制することを考えたが、灰の溶融試験の実施には時間とコストがかかってしまうことが課題だった。そこで灰の組成などの特徴からAIによる深層学習を行うことで灰の軟化点を予測することで、適切な燃料の判別につなげ、国内のガス化熱電併給の導入促進のための足がかりとする。
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研究実績の概要 |
2023年度は、課題Ⅰと課題Ⅱを実施した。課題Ⅰでは、さまざまな材を対象にして灰溶融試験を行った。その中で、特にマツ科材であるアカマツ、クロマツ、カラマツ、トドマツ、ストローブマツに注目することとした。これらの材を粉砕し、550℃で灰化した灰試料を用いて実施された灰溶融試験の結果、アカマツとクロマツが高い溶融温度を示した。このため、この2つの樹種に注目し、スギ材粉末との混合比率を変えて灰化した灰試料を用いて実験が行われ、最適な混合比率が明らかとなった。 さらに、灰の溶融前後の現象を解明するために熱重量・示差熱分析(TG-DTA)を実施した。スギ灰のTG-DTA分析では、200~400℃で有機物が酸化・分解し、760℃付近で灰が軟化・溶融し、950℃付近で灰中のCaCO3が脱炭酸分解することが明らかになった。一方、スギ/アカマツ混合灰では、適切な混合条件において760℃付近の軟化・溶融が観測されなかったため、アカマツの混合による軟化・溶融の抑制効果が示唆された。 その後、アカマツの混合による灰の軟化・溶融の抑制効果の原因を解明するために、多成分系熱力学平衡計算を行った結果、スギ材とアカマツ材の混合によって灰中の無機成分の比率が変化し、溶融点が上昇することが示された。つまり、スギ単独では主にKとCaが炭酸塩となり760℃付近から液相を形成することが明らかになったが、スギ材に対してアカマツ材を適切に混合することによって、Ca-Mg-Si系、またはCa-Si系の固溶体が形成して溶融点が1300℃まで高まることが明らかになった。この結果から、スギ材にアカマツ材を混合することで、クリンカの生成が抑制される可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は2024年度に実施を予定していた課題Ⅱを、一年前倒して2023年度に実施することができた。このため、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究として、課題Ⅲを実施しながら並行して課題Ⅰ、Ⅱで実施した各種バイオマスの灰溶融特性について研究を行いデータの収集に努める。課題Ⅲでは、AIによる深層学習を用いた軟化点・溶融点の予測システムの構築を行うが、その際に、2023年度に得られたバイオマス灰や混合灰のミネラル成分組成と軟化点・溶融点のセットを数十組ほど用いて、AIに深層学習させ、予測精度の検証を行う。必要に応じて学習データや、灰の色などの特徴についての学習項目を変更することで予測精度の向上を図る。また、AIによる予測結果に対し要因分析を行うことによって、灰の軟化点・溶融点の上下に強い影響を与えるミネラル成分や特徴を特定する。
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