研究課題/領域番号 |
23K11508
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64040:自然共生システム関連
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研究機関 | 奈良佐保短期大学 |
研究代表者 |
前迫 ゆり 奈良佐保短期大学, その他部局等, 教授 (90208546)
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研究分担者 |
渡部 俊太郎 鹿児島大学, 理工学域理学系, 助教 (00782335)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 照葉樹林 / 過密度シカ個体群 / 生物多様性 / 哺乳類相 / 外来植物の侵入 / レジームシフト / 植生動態 / ニホンジカ |
研究開始時の研究の概要 |
1980年代より全国的にシカの個体群増大と分布拡大が加速し、気候変動がもたらす極端気 象と相まって森林生態系が跳躍的に変化する、「生態系レジームシフト」が生じている。研究対象の照葉樹林は、長期間にわたって文化的シンボルのニホンジカとせめぎあい、生物多様性の劣化と照葉樹林崩壊に直面している。本研究は「過密度シカ個体群」、「ギャップ形成」、「外来種拡散」といったレジームシフト誘発要因による生物多様性の損失と再生プロセスを解析し、生物多様性保全に向けた森林生態系の順応的管理の具体的方策を提案する。照葉樹林全域の植生動態を解析し、生物多様性保全の決定要因を抽出する。
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研究実績の概要 |
科研費の研究目的である長期的・局所的過密度シカ生息域照葉樹林の植生動態とレジームシフトの関係を解析するため、2023年度は春日山原始林の70カ所において植生調査を行うとともに、実験柵内外の植生調査などを実施した。また、長年、自動撮影装置を設置して、シカの出現頻度の変動、シカ以外の小動物(哺乳類)の挙動なども継続的に調査を行っている。植生解析はまだ結果がでていない。自動撮影装置においても、シカの挙動と外来哺乳類(アライグマ)、在来哺乳類(リス、ノウサギ、キツネ、アナグマなど)の長期的変更をみている。 これまでの調査によって、林床植生はこれまでの研究で明らかにしている通り、生物多様性の劣化および森林更新の阻害といった現状がみられる。その一方、着生ランについては、生育良好(ナラガレによって林冠に光があたり、着生ランの開花と生育が促進されたような状況が観察できている。また、園芸種であるが、10年以上前に侵入したのではないかと考えられる着生ランもイチイガシで確認された。ひきつづき地上部、林床部の両方から照葉樹林の生物多様性を解析していく必要がある。 論文としては、シカ糞の分析を飛火野と春日山原始林の両方で実施し、春日山原始林で生息するシカの食性解析を行った(高槻麻布大学との共同研究)。現在、論文投稿中である。2年目には植生調査をひきつづき行い、植生解析(NMDS 非計量多次元尺度法)を行う予定である。また実験柵内外で光環境とシカとの関係も検証中である。 照葉樹林における生物多様性の変動と標高との関係性についても興味深い知見が得られたことから、論文投稿の準備を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先の研究概要にも記載したように、当初の目的に沿ってフィールド調査を進めている。植生調査ポイントはすべてGISに落とし込んでいるので、2024年度のデータを照葉樹林(200ha)全体にわたって取得する。また、シカおよびそのほかの哺乳類相についても自動撮影装置をひきつづき設置して長期的調査データをとっているところである。 シカ柵実験区においては、開空度も測定し、柵内外との比較についても検討中である。以上、当初想定していたフィールド研究を、ほぼ予定通り実施している。 標高と生物多様性の関係、シカの食性についての論文はそれぞれ投稿準備しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は2年目の研究期間にあたる。野外調査を2年目も実施するともに、レジームシフトの要因として、開空度による生物多様性への影響についても定量評価したいと考えている。当初の研究予定と大幅な修正はなく、きめ細かく植生データをとり、シカの影響のみならず、立地要因、光環境などの解析を行う。
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