研究課題/領域番号 |
23K11528
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64060:環境政策および環境配慮型社会関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
永井 恵 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (00734352)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | プラネタリーヘルス / カーボンフットプリント / 透析療法 / 慢性腎臓病 / Green Nephrology |
研究開始時の研究の概要 |
医療行為による環境負荷の算定は、産業連関表などを用いた間接的な方法によるものである。本研究では、慢性腎臓病の治療、特に大量の資源消費がある透析療法に焦点を当て、実際の臨床現場での調査を行って、直接データを取得し、正確なインベントリの樹立を目指す。この方法で得られる環境負荷測定は、他の治療法などにも応用可能と考えられる。また、医療行為に関する政策決定の主因子である経済コストに加えて、環境負荷量という評価軸を導入し、持続可能な医療に対する研究や議論を推進するきっかけになると考えられる。
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研究実績の概要 |
慢性腎臓病の治療に用いられる透析療法は、大量のプラスチック・水・電力を消費し、多くの医療ゴミが排出されるため、環境負荷は甚大であると考えらていれる。一方、「環境に配慮した持続可能な慢性腎不全の治療は何か?」という問いに答えるための適切な環境アセスメント方法は確立されていない。医療行為による環境負荷の算定は、産業連関表などを用いた間接的な方法によるものと、実際の臨床現場での調査を行って、データを取得し、インベントリを樹立した上で算定する直接的な方法がある。本研究は、慢性腎臓病の治療、特に大量の資源消費がある透析療法にも焦点を当て、環境負荷を算出し、持続可能な慢性腎臓病の治療法を探索することを本研究の目的として令和5年度は以下の3つのプロジェクトを進めた。 1) 透析療法および薬剤の環境負荷調査とインベントリ樹立:一般産業と同じ原単位を適応できる「電気・水」「患者移動」の他に、透析医療に特有の「医療機器」=透析装置・透析膜・血液回路・透析液・針を生産元へのインタビュー・現地調査を通して収集する。 2) 透析患者コホートの形成:主に申請者の勤務する病院において、透析患者コホートを形成し、登録後1年間の診療情報を調査する。各患者の治療に用いられた「医療機器」においては、透析装置・透析膜および透析液量を担当医への質問票で情報収集し、「薬剤」においては、降圧薬・抗凝固薬・造血剤・ビタミン剤・免疫抑制剤についてレセプトデータと電子カルテより商品名、投与量の情報を抽出する。 3) 医療者に対するGreen Survey:医療ゴミ廃棄は、各施設で一般ゴミと異なり埋め立ての前に滅菌のプロセスを必要とする。また、一般的なごみのリサイクル、節電や節水が医療現場でどの程度普及しているかのデータは存在しない。透析を実施する現場での医療資源の節約、ゴミの分別、水の利用法に関する情報を調査する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) 透析療法および薬剤の環境負荷調査とインベントリ樹立:透析医療に特有の「医療機器」のうち、透析液の製造会社(1社)への現地調査およびインタビューを実施した。 2) 透析患者コホートの形成:勤務病院において透析膜や透析液の処方、使用薬剤についての調査を進めている。令和5年度で該当する血液透析患者は60名、腹膜透析患者は15名であった。その他、新規導入される透析患者、あるいは過去に導入され他院へ転院した患者を含めたコホートの形成準備をしている。 3) 医療者に対する環境意識調査(Green Survey):学会の委員会を通じて全国にアンケートを配布し、255の透析施設(回収率29%)から結果を解析して報告した(A survey of environmental sustainability in Japanese dialysis facilities. Clin Exp Nephrol. in press)。災害に対する対応は多くの施設で行なわれていたが、平時の環境保護対策については十分に意識されていないことが明かとなった。
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今後の研究の推進方策 |
1) 透析療法および薬剤の環境負荷調査とインベントリ樹立:透析液に関しては、1箇所のみの調査では、一般的な透析液に関するインベントリを作成するには不十分であるため、国内外の製造会社をさらに調査する必要がある。透析膜や薬剤の工場について、実地調査協力を依頼しているが、国内で理解の得られる企業や施設が未だ見いだせていない。今後はさらに実地調査なしでインタビューのみの方法でインベントリ樹立が可能かを検討する。 2) 透析患者コホートの形成:勤務施設単独の症例数は、統計解析および結果の一般化に不十分である。今後、学会活動などを通して多施設での患者コホートの形成を検討し、情報収集の協力を求める方針である。 3) 医療者に対するGreen Survey:令和5年度に実施した環境意識調査は、日本国内では初めての試みであり、かつ世界的にも4カ国目と新規性が高い反面、定量的な解析に耐えうる詳細な調査が出来なかった。Green Surveyを経時的に実施することで、日本の透析医療の現場で環境意識がどのように変化するかを明らかにするため、令和6年度以降もGreen Surveyを実施する。 令和6年度以降は以下の海外の調査や共同研究の準備および実施を予定する。 4) 透析療法の環境負荷算定の外的妥当性検証・海外との比較(令和7~8年度):欧州には環境意識が高く、節電や節水を意識した血液透析の技術開発を目指す、大手の企業がある。日本国内で樹立された透析医療インベントリや算定された環境負荷に関する外的妥当性の検証のため、海外企業の現地調査およびインタビューを行う。
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