研究課題/領域番号 |
23K11547
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64060:環境政策および環境配慮型社会関連
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
大西 修平 東海大学, 海洋学部, 教授 (00262337)
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研究分担者 |
関 いずみ 東海大学, 人文学部, 教授 (20554413)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 水産資源の自主管理 / 水産資源 / コモンズ / 自主管理 / 社会的ジレンマ / collective action |
研究開始時の研究の概要 |
陸に近い沿岸におけるコモンズの自主管理は漁業者の地域ルールへの理解と協力が前提になる。地域ルールは風土に培われた経験則を強みとするが、過去に経験のない自然環境下では、コモンズ濫用に対する抑止効果は低下する。急速な海の変化による地域ルールの機能不全は、漁業者間の協力を弱体化させることから、コモンズの崩壊が危惧される。早急のルール改訂にあわせて漁業者の協力行動の育成が必要である。とくに幅広い環境条件に対応できる科学的な育成技術が求められる。協力の誘発のためのインセンティブの計画的利用は、環境政策の合理的な選択肢である。協力の育成技術開発のためには、漁業者の行動のデータ化とモデル構築が必要である。
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研究実績の概要 |
本課題は、近年の海の自然環境の急速な変化に起因する、水産資源の自主管理地域ルールの機能不全の改善に関する分析を主目的とする。自主管理ルール運用において、漁業者の協力行動の育成とともに、運用効果の強化のために必要となる最適なインセンティブの供与条件を明らかにする。当該年度は、漁業の集団行動における協力・非協力の定量的扱いについて追加情報を収集するとともに、多様な形態のインセンティブモデルのプロトタイプを手掛けた。2000年以降の研究事例については(1)進化ゲーム理論をもとにした社会的圧力の制御により協力行動を促進する方法、(2)プール制漁業における参加者の技術の異質性と、集団の社会的階層の特徴に注目した協力行動の分析の成果が、今後のモデル構築の要となる。(2)では、ブール制ルールは収入を均一化する一方、漁業者間の地位や尊敬の仕組みを顕在化する効果を持ち、競争による組織内の利害対立の摩擦を緩和しながら、望ましい協力関係を育む効果を持つことが示されていた。(1)(2)は直接的な金銭供与によらないインセンティブによる協力構築を土台にしているが、特に(2)は低コストで協力関係を育成できるモデルにつながる。一方で金銭供与が前提のインセンティブの直接利用による技術には、競争原理導入型プール制漁業という着想が一部にみられるが、獲得できた情報量は不十分であった。フィールド調査としては、深海エビ漁業を対象に、静岡の由比サクラエビ漁業者にインタビューを行った。その結果、プール制の継続は漁業者間の協力に加えて、世代間の技術継承を条件とする漁獲競争が不可欠であることが分かった。聴き取りを通じて、操業時間が限られるサクラエビ漁業では、協力関係の進展は技術競争のあとに実現するという意外な実例を知ることになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フィールド研究と理論モデル導出にむけた情報獲得活動のバランスに配慮している。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度のヒアリング活動を継続するとともに、深海エビ漁業以外の操業形態・地域についても対象を拡大する。協力行動の育成に関する情報は漁業協同組合に集約されているので、全国の組合に取材の対象を広げる。水産業普及指導員(国家資格、有資格者は主に県職員)を対象に、漁業コミュニティ内での協力の継承や育成の実態を調査する。
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