研究課題/領域番号 |
23K11558
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
藤田 渡 大阪公立大学, 大学院現代システム科学研究科, 教授 (10411844)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | agrarian myth / agrarian change / 充足経済 / タイ / political ecology |
研究開始時の研究の概要 |
タイ政府が行う「優良農民表彰」は、自給自足的「充足経済」(足るを知る経済)に沿う農民の生業・生活を理想とする保守的イデオロギーを具現化する。一方、現実には、農民の経済水準が向上し、現代的な消費生活を送るようになっている。しかし、「優良農民表彰」は、未だに農民から非常な栄誉と敬われている。このズレを、文化の政治として分析する。 資料調査・メデイア分析・聞き取り・現地調査をくみ合わせて、以下のような項目について調査研究を行う:「優良農民表彰」制度と運用の全体像、投影された農民像、受賞事例のタイプ分け、受賞事例のケーススタディ、受賞者・周辺の農民の対応。
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研究実績の概要 |
「優良農民表彰」の個人表彰の各部門につき、これまでの受賞者のプロフィールの記述からどのような点に言及されているのかをカウントしその傾向を整理・分析した。その結果、前国王が提唱した「充足経済」に言及する数・割合が増加していることがわかった。このことの1つの要員として、「充足経済」を柱とする複合的農業経営にかかわるような部門が新設されてきていることが挙げられる。 「優良農民表彰」にかかわる行政機関のなかでの組織や選定のプロセスやルールについて、タイの農業・共同組合省農業振興局の担当者にインタビューを行った。表彰や候補者の選定は農業・共同組合省の命令によって実施されている。法律上の定めはない。部門ごとに担当の局が異なる。そのため、中央でも、当該の局レベルでの選定委員会と全体の選定委員会の2段階を経る。候補者は基本的には自らの意思で応募する。それぞれの局の県・郡レベルでの出先機関が候補者の農民個人と密に相談をしながら応募の準備を進める。県レベル、地域レベルでの選定を経た候補者が中央に送られ、上記の2段階の委員会により選定される。 具体的な事例として、「充足経済」のような自給色の強い農業にかかわる部門である「田・畑・樹園複合」という複合農業の部門の受賞者を多く出しているロイエト県での地方の実務の状況の聞き取りと、受賞者へのインタビューを行った。応募にあたって、地元の農業事務所のスタッフと伴走しながら準備を進めるのだが、かなりのコストがかかること、コミュニテイ・レベルでの浸透・支援が重視されることがわかった。 現場での実務の様子からは、「充足経済」が謳うような複合経営によるリスクの低減、コスト削減は強く意識されてはいるものの、資本主義・市場経済から距離をおくという発想ではなく、むしろ、マーケティングなども含めたビジネスとしての農業、高付加価値化ということも強く意識されていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学務が大幅に増加し、研究に使える時間が少なくなったなか、資料の分析やインタンビューの準備・実施を行うことができた。まだ、現地での調査を始めたばかりなので、論文などのかたちで公表するのは来年度以降のことになるが、調査許可の取得や関係機関とのコネクションの構築も含めて、いまのところは順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、より現場ベースでの調査にシフトしてゆく。 方向性として、以下の2つがある。 1)さらにいくつかの受賞者のケーススタディを行う 2)今回、ロイエト県で訪問した受賞者の地元のコミュニティで短期間滞在するスタイルで参与観察やインタビューを行い、村の人たちの暮らしのなかで、受賞者が与えた影響をより詳細かつ多面的に分析する。
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